叶わなかった恋は「高級栗ケーキ理論」でやっつけよう

発売を心待ちにしていたキルフェボンの和栗のケーキを食べたら、とてもまずかった。

ここはフルーツや野菜をふんだんに使ったタルトが売りで、見た目も美しく、味も素晴らしい。ワクワクしてメニューを開く。
「栗とカシスのハーモニーと、ザクザクのジャンドゥーヤの食感をお楽しみください」とあって、とってもそそられる。
高いだろうなあと予感していたが案の定、一切れ1,700円。
うーん、ケーキに2,000円弱は妥当なのだろうか。栗のケーキは他にもある。こちらは700円とリーズナブルだ。貧乏性が疼く。でも、栗がちょぴっとしか乗ってない。私は栗に目がないのだ。

エイヤ、と1,700円の方を頼んだ。テラテラと輝く栗がたっぷり乗っていて、いかにもおいしそう。フォークを突き立てる。うまく刺さらずケーキが崩れそうだ。
そして待望の一口。

まずい。
最近食べてきたケーキの中で圧倒的にまずい。

なんだこれは？まず生地に挟まれたチョコの存在感がデカすぎる。
これがザクザクしたジャンドゥーヤ？ただの板チョコだろが。食感が悪すぎる。そしてカシス、オマエはちょっと来い。
ハーモニー、奏でる気ないだろ。
味が立ちすぎていて、高級栗の繊細な味と全く調和していない。でしゃばりすぎだ。東京フィルハーモニー交響楽団に乱入したジャイアンかオマエは。

これなら、数百円のケーキの方がずっとずっとおいしかった。このケーキを食べるために、朝ランしてカロリー消費したのに・・・残飯処理に夫を呼び出そうかしら・・・。
などと泣きながら栗をほおばっていると、唐突に高校時代の失恋を思い出した。同じ高校のAくんとは一時期いい感じで、こっそり携帯メールを交換する仲だったのだが、どうしてか音信不通になってしまった。
当時はたいそうウブだったので、急な心変わりが悲しくって、彼を忘れられず半年は引きずったのを覚えている。
そこで恋愛するタイミングを失い、受験期に突入した私は、高校生活の最後まで彼氏ができなかった。もうね、当時の私をひっぱたきたい。さっさと切り替えて次に行けと。
Aくんもこの高級ケーキみたいなもんかもしれなかったのだ。
それなのにウダウダ引きずってるから、友達が彼氏と受験勉強するのを恨めしげに眺める、灰色の高校時代を送るハメになったんだからね。

落とせなかったあの人と高級栗ケーキの可能性

人が最も執着するのは、「手に入りそうで入らなかったもの」であろう。
モテコンサルのお客様でも、好きな人を落とそうとしたが恋破れ、執着が断てずに苦しむケースはわりとある。Aくんを逃した私もそうだったが、なまじ一度はチャンスがあっただけに、悔しさもひとしおなんですよね。
その悔しい気持ちが相手を壮大に美化して、「あの人はすばらしかったはずだ」と妄執に囚われてしまう。現在進行形で、元カレ元カノ・落とせなかったあの人が忘れられない人も、けっこういるんじゃないでしょうか。

しかしそういう人はよく考えてほしい。一般的に、好きな人と付き合えても別れることはザラにありますよね。つまり「憧れのあの人」がそこまで素晴らしい確率は高くない。高級栗ケーキと同じで、食べたらポンコツな可能性もかなりあるはずだ。
だが人間関係は答え合わせができない。よって人は「意外とダメだった」可能性には気付けずに恋を引きずってしまう。

だがあえて断言しよう。
思いが届かなかった相手を美化して引きずるのは無駄の極みである。
よく「好きな人を忘れるにはどうしたらいいですか？」と質問されるが、さっさと次に行けとしか言うことがない。
忘れられない・・・と嘆く人は、手に入らなかった存在を美化して執着し、ウジウジ考えているから忘れられないのである。
そんなんじゃ、高校時代の私のように非モテ街道まっしぐらになるぞ。

高級栗ケーキ理論で前を向こう

いかにも美味しそうに見える高級ケーキでも、食べてみたら口に合わないケースもあることは、私が身銭を切って証明した。
落とせなかった相手の味は確かめられないけど、「私には手が届かなかった最高においしい憧れのケーキ」のように美化してはいけない。
忘れるために、都合よく考えればいいのだ。
「まあ付き合ってみたら合わなかったかもしれないしな」とかね。
とはいえ、童話「すっぱい葡萄」のように「あんなやつはクソだったに決まっている」と相手をことさら卑下する必要はない。
ただ、引きずって時間をムダにしないために、「食べたら私には合わなかったかもしれないな」という高級栗ケーキ理論を大いに活用して、サクッと気持ちを切り替えて、新たな恋のチャンスを勝ち取ってほしいと思う。

そんなことを考えながら、お会計したらドリンク込み2,400円。
高い買い物ね、でも重要な気づきと脂質とカロリーを得た。帰ったら筋トレしよっと。