見出し画像

痔瘻根治術(じろうこんちじゅつ)を受けた話【治療〜完治編】

【発症~手術編】の続きです。

ガーゼを詰める理由
ある程度膿も出したし、傷を早く治すなら開けた穴をすぐ閉じたらいいのでは?と思いますが、痔瘻によって出来た管状の穴を体の外側に絞っていくことが目的なので、穴はあえて開けたままの状態にしなければなりません。
ただ放置したままでいると、体の自己治癒能力によって体の外側から穴が閉じていくので、それを防ぐためガーゼを詰めることが必要不可欠でした。

ガーゼを詰める体勢
医師から穴にガーゼを詰められる時は、診察台に仰向けの状態になり、ピンセットを使ってグイグイと入れ込まれます。
対して自分自身でガーゼ詰める時は、私の場合は床に腰を下ろし、股を広げてその間に鏡を立て置き、鏡越しに穴の位置を確認しながらガーゼを詰める、という方法で行いました。
看護師の話によると、床と平行に鏡を置き、鏡の真上にしゃがみ座りをしながらガーゼを詰める人もいるそうで、穴を開けた位置によって方法は異なるとのことでした。

ガーゼを詰める道具と実際の詰め方について
医師が処置するようにピンセットでガーゼを詰めていければいいのですが、自分の体に垂直かつ鏡越しにピンセットを突き立てることはさすがに怖くて出来ませんでした。
やり方が不明瞭なので看護師に聞いてみると、爪楊枝の頭に少しだけガーゼを引っ掛けて穴に押し入れ、ある程度の深さまでガーゼの詰め込たら爪楊枝だけを引き抜き、あとの残りのガーゼは細かく折りたたむように少しずつ穴に入れ込んでいく、とのことでした。
(またしても説明力が不足しています。ご容赦ください…)
使用する道具はアメピンをまっすぐに伸ばしたものやその他の長細いものなら何でも構わないとのことでしたが、いろいろと試した結果、ガーゼを引っ掛けやすく使い捨て出来るという面で爪楊枝を使うことにしました。

ガーゼを取り替えることについて
ガーゼについて長々と書いてきましたが、私にとって日々のガーゼの取り換えこそが手術以上に苦痛を伴う作業でした。
まず、ガーゼを詰める時の体勢ですが、手術直後はどのように座れば詰めやすいのかが分からず、腹筋と背筋に異様に力が入り、詰め終わった後は胴がだるくなっていました。
次に実際にガーゼを詰める作業ですが、絶望感を覚えるくらい穴にガーゼが入らず、痛みを伴い、穴に詰めれられたと思いきやガーゼが途中で抜け落ちる、といったことを1回の作業で何度も繰り返していました。
開始当初は、ガーゼを引っ掛けた爪楊枝をどの角度で差し込めばいいのか、またどの深さまで詰め込めばいいのか分からず、穴自体も生傷状態でしたので結構な頻度で出血し、腰の下に敷いていたタオルをよく血塗れにしていました。
最後にガーゼを詰める量ですが、3センチ×15センチ程度の長さの短冊状のガーゼ1本を取り換える毎に詰めてほしい、と医師から指示がありました。
ただ何をどう頑張っても1本全てを入れることが出来ず、半分程度入れたところでハサミでガーゼを切断し、余った端を無理矢理穴へ押し込む、という作業に終始していました。
最長で10センチ強のガーゼを詰めることが出来たものの、最後の最後まで自分の手で1本全てを入れることは出来ませんでした。

実は結構優秀だった
ガーゼを取り替えた初日、ガーゼをどう入れればいいのか分からないなりに、血塗れになりながらも5センチ程度のガーゼを入れることが出来ました。
その様子と経過を診せに執刀医の医院で診察を待っていると、看護師から「自分で取り替えられていて、しかもある程度の長さを入れられていてすごい!」と褒められたのは意外でした。
話を聞いていくと、自分でガーゼを取り替えるのは必須事項であるものの、患者の中には全く出来ない方もいて、ゴム紐が取れるまで毎朝通院する人もいらっしゃるとのことでした。
取り替えは自分でしなくてもいいんだ!とも思いましたが、毎日通院するほど暇でもないので、結局自分でやらなきゃ駄目なんだ、と再認識させられました。

排泄時に抜け落ちるガーゼ
毎回苦心して取り換えているガーゼですが、排泄時にティッシュペーパーで排泄部位を拭くとほぼ毎回抜け落ちました。
自宅なら後ほど新たに詰め直せますが、外出先では詰め替えることが出来ず、穴に何も入っていない状態のままになります。
「穴を開けっ放しの状態で何時間も過ごすのは衛生面に良くないのでは?」と医師に聞いたところ、
“穴にガーゼを詰めるのは穴自体を塞がないようにするためであって、半日くらいなら特に問題はない。抗生物質と止血剤を服用しているので、穴のあたりを強く押したりしない限り、衛生面的には何の問題はない。”
とのことでした。
そうは言うものの、穴に何も詰めないまま半日以上過ごすこともあり、本当に大丈夫だろうか?と思いながら過ごしていました。

薬について
術後はガーゼの取り替えが肝となっていましたが、その他にも服薬等の指示がありました。
*痛み止め:局部麻酔は手術から3日後以降に切れてくるとのことで、それ以降は痛み止めの薬を適宜使用するよう指示がありました。
ソランタール、ロキソプロフェン(頓服)などゴム紐が取れるまで服用しました。
痛みが強い時に一番よく効いたのはアルピニー坐剤(座薬)でした。
*抗生物質:体に穴が開きっぱなしの状態なので必ず服用するように指示がありました。
ビブラマイシン、レボフロキサシン、セフポドキシムプロキセチルなど。
*止血剤:術後2週間以降は顕著な出血はなかったものの、こちらもゴム紐が取れるまで服用しました。
カルバゾクロムスルホン、トラネキサムなど。
*胃薬:抗生物質で胃が荒れるのを防ぐため服用しました。
レパミピド、ビオフェルミンなど。
*注入軟膏:傷口の炎症等を抑えるため肛門から薬を入れました。
ボラザG軟膏など。
*便秘薬:ゴム紐が入っている間、排便時にいきむことは禁止されたので、便通をよくするため服用しました。
酸化マグネシウムなど。
*傷の保護クリーム:外側の傷口やその周辺の皮膚の保護をするため塗るように指示がありました。
親水クリームニッコーと薄荷油を混ぜ合わせたクリームなど。
日数経過とともに薬の数は減っていきましたが、ゴム紐が取れるまでは数種類の薬を服用しました。

ゴム紐と脱脂綿の違和感について
ゴム紐はしっかりと張られた状態で縛り留められているので、動く度にモゾモゾする違和感が常にありました。
そもそも体の外側にゴム紐の縛り留めた部分が飛び出ているので、肛門周辺の皮膚とゴム紐があたり、擦れる状態になっています。
そこでゴム紐を包み込むように脱脂綿を当てることにより、皮膚との摩擦を防いでいました。
(穴から出てくる膿や出血等の体液を吸い取る役割もありました。)
ただ摩擦は防ぐものの、脱脂綿をおしりに挟み込むかたちになっているので、違和感は更に増しました。
前述にもありますが生理用ナプキンも使用しているので、下着の中は常に違和感があり、その全ての状態に慣れるまでかなりの時間がかかりました。

痛みについて
術後1週間から2週間目は、ゴム紐で縛り留めている箇所が痛み止めを使用していても痛くて辛い時があり、服用できる痛み止めは常に持ち歩いていました。
開けた穴の位置が肛門と膣の間にあり、着座時に穴が座面へ当たることは殆どなかったものの、上体の姿勢や角度によっては痛い時がありました。
また、日数が経過しゴム紐が緩くなって絞り直しをした日は肉にゴム紐が食い込むので、多少なりと痛むこともありました。

通院について
術後1週間はなるべく日の間隔を空けずに執刀医の元へ通院しました。
それ以降は主治医の元へ週に一度通院し、経過ごとに不定期で執刀医の元に通院していました。
二人の医師の医院へ通院することは面倒なこともありましたが、それぞれの診断に基づいて治療方針が決められていたので心強く思いました。

入浴について
幸い術後の経過も良く、1週間後には疣痔は完治し入浴許可も出て、ぬるめのお湯なら浸かることが可能になりました。
体に穴が開いているのにお湯に浸かっても穴に水は入らないのか?と思いましたが、少々水が入っても抗生物質を服用しているので影響はないとのことでした。

治りが早くなる方法
手術から3週間後頃、経過も良好なので
“お湯に浸かっている時にゴム紐をゆっくり手前に引っ張るように”
と主治医から指示がありました。
手順としては
“ゆったりと深呼吸をしながら、体とゴム紐が垂直になる角度に真っ直ぐゆっくり引っ張り、少し痛いかなと感じるところで5秒間止めて、その後ゆっくりとゴム紐を緩めていき元に戻す。”
が1セットで、1回の入浴で5セットするように、とのことでした。
手前に引くことを続けるとゴム紐が早く抜けるようになり、やるのとやらないのとではゴムが取れるまで1ヶ月程度差が出るとのことでした。
診察時にレクチャーは受けたものの、実際に自分で行う時にはどこまで引っ張ればいいのか分からず痛みが出るのも怖かったので、ゴム紐が少し伸びる程度だけ引っ張り続けました。
その程度の作業でも診察毎にゴム紐を絞り縮めてもらえるようになりました。

ゴム紐に沿わせる
手術から1ヶ月以上が経過し、ガーゼの取り替えが慣れてきていたにも関わらず、ある時から穴にガーゼが入り辛くなってきました。
入れ方が下手になってきたのかな、と思いきや、ゴム紐を絞っていくうちに、管状の穴が短く・狭くなっていました。
看護師から「穴自体にガーゼを詰める感じではなく、ゴム紐に沿わせるようにガーゼを入れていくと詰めていきやすい。」との話を聞き実践してみると、ガーゼは入れやすいものの詰め込みにくさはあまり変わりませんでした。
しかしながら、詰めにくくなっていることは穴が短くなっている証拠なんだ、と実感出来ました。

軽症
手術を行う前、完治までには早くても半年から1年くらいの日数がかかる、と執刀医から説明を受けていました。
それから1ヶ月後、快方への兆しが出てきた際に「本当に1年もかかるのか」と執刀医に尋ねたところ、年内には目途が立ちそうとのことでした。
私の場合、短い管状の穴が1本だけでしたが、重度の症状になると穴が何本も複雑に開いている場合があり、ゴム紐を同時に何本も入れて治療することもあるそうなので、それに比べると断然軽症だったため早く治るという見立てが出来た、とのことでした。
執刀医の話によると、日数を短めに見積もって治療をしていても経過によっては長くなることもあるので、完治まで期待を持たせ過ぎないように長めに話をする、ということでした。
「1年は長いなあ」と思っていただけに、その話を聞いて少し安堵しました。

およそ3割
手術から2ヶ月後頃、主治医から「そろそろゴム紐が取れる」と診断されました。
前述通り、ゴム紐を縛り続けていくと縛っている箇所の肉が狭まっていき、そのままゴム紐が体から抜けるとのことですが、“体から抜ける”ということが俄に信じ難く「最後は抜けるというよりゴムを切って取り去るのでは?」「不意に触って多少肉を引き千切るのでは?」などと不安に思っていました。
その不安要素を主治医に聞いてみると「ゴム紐を引っ張りすぎると肉が千切れたりするが、そこまで引くことはなかなか出来ない。」「抜ける時は痛みもなくするっと自然と抜けるので、人によってはいつ抜けたか分からない人もいる。排便時にそのままトイレにゴム紐を流してしまう人もいて、抜けたゴム紐を確保する人は3割程度ほど。」とのことで、気づけばゴム紐が無くなっている人の方が多いという説明でした。
ゴム紐がどのような形状になっているのか見てみたいと思っていたので、排便時は注意深く観察し、ゴム紐を見逃さないようにしました。

ゴム紐が取れた時について
2020年10月22日、排便時にトイレットペーパーで拭いていたら、プツッ、という音がしたような?とペーパーを見てみると、小さな輪のある縛り留められたゴム紐が引っ付いていました。
僅かに出血していたので、どうやら少しだけ肉を引き千切ったようですが、最大限絞り切っていたところから引き抜いた感じでしたので、痛みは全くありませんでした。
あまりにも突然で何の苦もなく取れたので、自分の体から抜けたものとして信じ難く、現実味がありませんでした。
その後、今までゴム紐があったところには何もついていないのを確認して“ようやく取れたんだ”と確信しました。

ゴム紐が取れても
2020年10月下旬に主治医から、11月下旬に執刀医から痔瘻の完治の診断を受けました。
ただ、ゴム紐が取れてからも肛門付近の体表に穴の跡が少し残り、その部分に便が詰まりやすくなっているので、傷の保護に使用していたクリームを該当箇所に綿棒で塗布しつつ汚れを取っていくよう指示がありました。
最終的に穴の跡がある程度平らになるまで継続することとなりました。
また、傷は塞がっているものの該当箇所は薄皮の状態なので、排便がスムーズにいくよう酸化マグネシウム(便秘薬)を服用し、排便をコントロール出来るよう努めてほしいとのことでした。

最後に
この文章を書いている2021年8月現在、執刀医の術後1年の検診でも経過良好とのことで、1年の区切りを良い状態で迎えることが出来てほっとしています。
しかしながら手術前の状態には戻っていないので、回復のための投薬等は継続中です。
今は痛みがない状態なので、今後は自分自身の状態をしっかりと見つめていければ、と思っています。
とりとめのない内容となりましたが、最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?