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きれいな共産党という芝居は喜劇か悲劇か

加藤文宏


はじめに

 いま、共産党の周辺を取材している。
 これまでに共産党二世として角田さん(仮名)を紹介してきたが、他の方からも聞き取りを行ってきた。諸事情があり公開しなかった過去の取材記録を読み直してみても、このままでよいわけがないと感じる。しかも、新たな危なっかしい動きがある。
 党への献金や募金を苦痛に思う家族がいるのは知られているかもしれない。このうえ、党員の子や孫を「仲間に向かえよう」と地区組織で呼びかけられ、子弟を党員にした人が讃えられているという。子弟らが党員になるのを望むなら何ら問題ないが、強いられたと感じるなら人権問題であり、共産党が問題視してきた宗教二世同様の被害者を生み出すことになる。
 これらとともに、当記事では「トランスジェンダーになりたい少女たち SNS・学校・医療が煽る流行の悲劇」(アビゲイル・シュライアー著)をめぐる、版元と書店への脅迫問題についても触れたいと思う。

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共産党も金と人がなくては成り立たない

 共産党は政党交付金を受け取っていない。
 仙人のように霞を食って党を運営できるはずもなく、同党は機関紙のしんぶん赤旗を売り、献金や募金を通じて資金を確保している。だが、1980年代に355万部を誇ったしんぶん赤旗が、10年後に100万部を割り、現在は20万部弱ほどしか読まれていない。約28万人とされる党員のうち3割がしんぶん赤旗を読んでいないのだ。
 本年3月にNHKは共産党の支持率が2.3%だったと報じた。このうち熱烈な支持者の割合はさらに少なく、党員でさえしんぶん赤旗を読まなくなっているのだから購読者数が増える要因は何ひとつないと言ってよいだろう。
 売上が減れば、組織の末端がはっぱをかけられるのは世の常だ。
 共産党は、2028年までに党勢を130%拡大させる目標を設定した。
 この目標がどのようなものか、中央委員会総会がまとめた「『130%の党』をつくるための全党の支部・グループへの手紙」から引用しよう。

第28回党大会で決めた党建設の目標――党員拡大と「しんぶん赤旗」読者拡大で、第28回党大会比130%の党をつくる、青年・学生と労働者、30代~50代などの世代で党勢を倍加し、民青同盟を倍加するという目標を、必ず達成することを決定し、この大事業を全党に呼びかけることにしました。

「130%の党」とは、全党的に36万人の党員、130万人の「しんぶん赤旗」読者をめざす大事業です。同時に、この仕事を、すべての支部・グループで担うならば、来年1月の党大会までに、平均して、1支部あたり、現勢で、2カ月に1人の党員、1人の日刊紙読者、3人の日曜版読者を増やせば実現できます。これが過大な目標でしょうか。「高い山」のように見えますが、すべての支部と党員のみなさんがたちあがるなら、決してできない目標ではないのではないでしょうか。

 まず、地域組織の最小単位で2カ月に1人の党員を増やすのは中央委員会総会が言うほど簡単ではない。
 また、しんぶん赤旗の読者を増やそうにも一般の日刊紙さえ部数を減らして回復が見込めない時代だ。しかも、共産党議員による自治体職員に対する強引な購読勧誘が問題視されて、2018年には神奈川県藤沢市議会と茅ケ崎市議会で市庁舎内での勧誘・配達・集金を行わないよう求める陳情が採択された。その後、勧誘禁止に賛同する動きが全国に広がっている。
 党員たちは、実現が困難なノルマを押し付けられたと言える。
 このため党員の子や孫を「仲間に向かえよう」と呼びかける活動が、地方ではじまっているとする証言が複数ある。仲間に向かえるとは、党員にするという意味だ。
 呼びかけがあったのは、党中央、都道府県組織、地区、支部と連なる共産党の組織のうち地区組織だという。ある地区組織で子弟を党員にした人が讃えられ、これに続けと呼びかけられた。子弟らが党員になるのを望むなら何ら問題ないが、強いられたと感じるなら宗教二世問題同様の被害者を生み出す。
 さらに「募金キャンペーン」問題がある。

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