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コロナ禍カレンダー2020.1-2021.5 ver2.0.1

著者: X、ハラオカヒサ

はじめに

1.
コロナ禍カレンダー 2020年1月から2021年5月(ver2.0.1)を掲載します。

2.
この期間を俯瞰する[1年半の変転]と題した考察をカレンダーのあとに掲載します。2019年後半発端として、2020年1月から2021年5月まで初期中期後期に分類しました。日数を均等に区分けしたものでも、新型コロナ肺炎を疫学・医学的観点から段階分けしたものでもありません。社会・世相の変化によって1年半を3つに区分しました。

3.
コロナ禍カレンダーの読み方、 使い方にルールはありません。コロナ禍カレンダーは新型コロナ肺炎にまつわる重要なできごと、話題になったできごと、世相をあらわすできごとを中心に構成されています。記憶と照らし合わせながら、ご自身の経験や当時の感情をカレンダーに上書きしてみてははいかがでしょうか。

4.
コロナ禍カレンダーは逐次バージョンアップしヒラオカヒサのTwitterアカウントと当ブログで公開します。

コロナ禍カレンダー

表示が読みにくい場合は画像をクリックまたはタップして拡大してください。
カレンダーは2021年5月 2020年1月〜2021年4月 2021年5月 (2021年5月が冒頭と最後、2回掲載しています)の順に並んでいます。

権利について
コロナ禍カレンダーは情報の選び方や体系的な構成に創作性があり著作物性があるデータベースです。署名なしで公開しますが、私とX氏は権利を放棄するものではありません。
ただしカレンダー、カレンダー上にできごとを表示すること、出来事の名称・総称などは著作権で保護される範囲になく、この点について権利を主張しません。
使用している画像はあくまで個人用として拝借しているものがあります。コロナ禍カレンダーのご利用にあたっては、個人用の範疇を超えて使用できない画像が含まれていることをご理解ください。
カレンダーに改変を加えたものを使用する場合、使用にまつわる責任は改変者が負うものとします。カレンダーを再公開する場合、公開にまつわる責任は再公開者が追うものとします。

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1年半の変転

発端:

新型コロナ肺炎 COVID-19/SARS-CoV-2をめぐるできごとの発端はいつなのか。遡って調べると、未だ正体不明であったものの2019年11月の中国湖北省武漢で肺炎が流行しているとする報道や、同月イタリアで原因不明の肺炎が流行しているとする報道と、同12月1日に中国で新型コロナウイルスの最初の感染が確認されたとする報道に行き着く。その後ウイルスの遺伝子解析が行われ10月上旬にヒトへの感染がはじまったと推定されている。

2019年補完

気をつけなければならないのは、上掲の図に含まれ陰謀論の根拠にもされているいくつかのできごとだ。今後事実が明らかにされる可能性はあるが、現段階では前述した経緯が発端のほぼすべてだ。COVID-19/SARS-CoV-2以外の新しく登場したコロナウイルスは新型コロナウイルス、引き起こされる肺炎は新型コロナ肺炎であるため混同しないようにしたい。

年間200件を超える新型コロナ肺炎のパンデミックを想定した演習・思考実験とは、COVID-19/SARS-CoV-2ではなく単に新しく登場した未知のコロナウイルスを想定したものだ。コロナウイルスは地味な研究分野とされていたと聞くが、スペイン風邪、SARS、MERSといったパンデミックから新たな流行が現実味を持って懸念されていたのかもしれない。

この時期、日本国内はどのような状況だったのか。

2019年11月から2020年初頭の報道で武漢の海鮮市場の野味(食用野生動物)販売店から感染が広がったと報じられたことから、日本国内での受け止められかたは2003年に広東省でSARASが蔓延した事情と同一視され、不清浄な野生動物と野生動物を食べる食習慣が災いした日本と無関係なできごとと一般に認識された。

またヒトからヒトへの感染ではなく野生動物からヒトへの感染ルートに限られるとする報道とともに、海鮮市場野味販売店から生じる印象でヒト・ヒト感染しないと考える人は国内に多かった。

2019年後半は全世界のコロナ禍を考えるときとうぜん「禍」の範囲に含まれるが、日本国内では感染者の報告がなかったこともあり「コロナ禍」と呼ぶのはふさわしくないように思われる。Xとハラオカヒサは、日本のコロナ禍を次の[初期]からと定義して、当記事を掲載する2021年5月までを「一年半」としている。

初期:

2020年1月から第1回目の緊急事態宣言の発令から4月いっぱいあたりを、今回は[初期]と位置付けたいと思う。

2020年1月に入り中国での蔓延状況について国内の報道が増えた。1月14日にWHOが新型コロナウイルスを確認した直後の1月15日に国内で初めて感染が確認され、またヒト・ヒト感染の可能性を排除できないとされた。

発端]に分類した2019年から2020年1月上半期の国内での関心度は低く、1月15日に国内で感染者が確認されても武漢からの帰国者だったことから国内は総じて他人事だった。関心がいっきに高まったのはマスクが店頭かに消えはじめた1月20日以降だった。日本国内のコロナ禍はマスク不足からはじまったと言ってよい。

ただし日本国内の気分は(2019年12月29日に密出国で逃亡した)カルロス・ゴーンに1月30日逮捕状が出された報道で持ちきりになるくらいの新型コロナ肺炎への関心度だった。大事件だったゴーンの逃亡とゴーンそのものの話題は、2月に入るとどうでもよいこととして忘れ去られていったのだから2月3日のダイヤモンドプリンセス号入港をきっかけとした危機感の広がりがとても急速だったと言える。

話を1月に戻す。

1月19日春節。中国国内のみならず海外へ人の大移動がはじまった。春節直前から正体不明の肺炎を警戒していた人は日本国内にいたが、春節が拡散・蔓延のきっかけになったとする批判は1月20日以降2月にかけて盛り上がっている。やはり国内での新型コロナ肺炎への関心はマスクの品不足と歩調を合わせて身近になり拡大している。

ではなぜマスク不足は都市部を中心に1月20日から発生したのか。

春節直前に中国国内(香港含む)で深刻なマスク不足が発生していて、日本の知人や日本在住の中国人、中華系の人々を頼ってマスクを送ってもらう人が相当数いた。このためドラッグストアによっては大量展示をしたり、販売個数制限など開始する動きが1月第3週頃から(一部地域で)あった。なお例年2月頃から本格化する花粉症用にマスクの陳列数が増えていたのもある。

なおコロナ禍初期にブームとなったウレタンマスクPITTAのプロモーションキャンペーンが特設店舗などで2020年1月26日からはじまっている。とうぜん新型コロナ肺炎と関係なく以前から計画されていた花粉用訴求であり、当時はウレタンマスクの効果に疑問符はついていなかった。

1月20日から春節で来日した中国人観光客によるマスクのまとめ買いが発生している。また20日以降、国内から中国の中国人、在留邦人にマスクを送る人が増え郵便局が処理量超過に陥った。日本国内で処理が増えただけでなく、送り先でも通関手続きや配送が大混乱した。通常数日で届くマスクが、中国、香港、東南アジアなどへ1週間から数週間を要した。

このように防疫にマスクが有効で必要であるとする情報はあったが新型コロナ肺炎の正体はわからない点が多く、3密回避と手洗いの情報が出揃うのは3月から4月初頭まで待たなければならなかった。この間に2月3日ダイヤモンドプリンセス号の停泊、3月29日志村けん氏の死亡と国民の危機意識と緊張感を高めるできごとがあった。

ダイヤモンドプリンセス号をめぐる報道と志村けん氏の死は、日本人にとって新型コロナ肺炎について後々まで影響する印象を決定づけた。印象はやがて3密回避や手洗い、高齢者保護など防疫に好材料になったが、外国人、特定の業態、従業員、感染者、高齢者、特定の社会・経済階層への怨嗟につながることもあった。

1月20日以降日々深刻さを増したマスクやトイレットペーパー不足の原因として買い占め行動があった。品薄は3月末から4月にかけてピークに達し、秋以降に解消されるまで買い占めと転売が横行した。開店前の早朝からドラッグストアに並ぶ高齢者を中心にした人々の姿は日常生活で目撃されただけでなく、報道されることもしばしばだった。

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こうした一部高齢者の行動とその報道は、DP号の有閑高齢者の姿とともに若年層が高齢者への苛立ちを募らせる要因になった。

ドラッグストアの開店時刻前に高齢者を中心に行列している様子は珍しくなかった。1箱数十枚入りマスクや、1パック数ロール入りのトイレットペーパーを連日買いまわるなど明らかな買い占めに、平日の早朝から行列できない人々は手をこまねくほかなかった。そのうち市場から商品が消え去り、転売品が驚くほど高価格で売られる事態になった。

この時期、新型コロナ肺炎は老人が感染して重症化し死ぬ病気として認識されていた。若年層は感染しても症状が出ないか風邪程度の軽症で済むとされ、なかには若年層は感染しないと思い込む人たちがいた。若年層は感染しない、しても軽症で済むと思われたことで一斉休校の要請は批判を浴びた。

無関心状態から、外国人が持ち込む伝染病という印象へ。

中国人の行動やクルーズ船客の階層や船員へのヘイトから、緊張感と恐怖による国内の気分一致。

帰国邦人の隔離先に手を挙げたホテル三日月への賞賛と同時に、政治党派性に基づく批判の芽生え。

マスク配布決定以降の、コロナ禍を政権批判にからめる動きの活発化。高齢者によって若年層が割りを食っているとする意見。他県ナンバー騒動による分断。

これらが2020年上半期および国内におけるコロナ禍初期の目まぐるしくダイナミックに変化した気分、風潮の流れと言える。一致した危機感から分断に進んだ[初期]の動向が、以後分断の定着と分断を利用する者の登場という日本のコロナ禍の行く末を決めたと言える。

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補足

クルーズ船騒動はDP号だけではなかった。2019年1月29日に長崎港入港、2月20日にドック入りしたイタリア籍の「コスタ・アトランチカ」から感染者が出た件は忘れがちだが、感染が判明した4月19日はDP号入港から2ヶ月が経過し国内で感染者が増加していた時期であったため日本人とウイルスを持ち込む外国人、ウイルスを地域に持ち込む他地域の人といった分断、ヘイトに拍車をかけたのは間違いない。

次の2021年のツイートに他意はないが、2020年春節まで続いたインバウンド、外国人、中国人、地域、侵入され汚されるという意識をよく表しているので引用する。

長崎クルーズ


中期:

4月5日に緊急事態宣言が発令され5月24日いっぱいで解除された。中期は5月からワクチン開発の目処がたちはじめ供与契約がむすばれた7月、8月、第3波の予兆がはじまる前の9月までとする。

マスク配布批判、GWの他県ナンバー騒動、5月3日の平田オリザ発言は人々の苛立ちと不満を可視化させ中期以降の様々な分断と対立の方向を決定づけたできごとと言える。

第1回目の緊急事態宣言で自粛はおおむね成功し、第1波の抑え込みに成功したのはほぼ間違いない。このときの抑制や我慢は次回以降の宣言下での反発からすると多くの人の納得のうえに成り立っているように思えるが、既に特定の業界・業種とこれらを利用する人たちにとって耐え難いものになっていて、平田オリザによる[演劇は製造業と違う]とする発言への怒りの着火は爆発的だった。

製造業の場合は、景気が回復してきたら増産してたくさん作ってたくさん売ればいいですよね。でも私たちはそうはいかないんです。客席には数が限られてますから。製造業の場合は、景気が良くなったらたくさんものを作って売ればある程度損失は回復できる。でも私たちはそうはいかない。

━━ NHK「文化を守るために寛容さを」劇作家 平田オリザ 

高齢者と若年層。都会と地方。持てるものと持たざるもの(いわゆる上級国民批判)。これらのうち得をしていると思われる側に属している(とされる)平田オリザなど文化人と、その他の人々の意識と現実の乖離・分断を象徴するできごとだったと言える。さらに平田の政治的立場も反発を強くする原因となった。

こうした反発や分断がありながら4月20日に閣議決定され(5月から6月に振り込まれた)た10万円給付と5月29日に実施されたブルーインパルスの飛行は(事前にそれぞれ意見の衝突はあったものの)国内の苛立った空気の緩和に寄与した。この時期「経済を回す」という言葉の使用が10万円の使い途の報告とともにTwitterなどSNSに増加している。また医療現場の厳しさは2020年後半以降と比較するとまだ軽かったとはいえ、ブルーインパルスの飛行で一時的でも笑顔が戻った医療関係者は少なくなかった。また一般からも医療関係者への感謝の言葉がSNSに流れた。

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このことからもわかるように、5月末くらいまで分断による溝はさほど大きくなく、金銭面での希望や象徴的な明るいできごとによってある程度は解消可能だった。

しかし「経済を回す」の意味と用法はやがて変化する。抑制や我慢に燃料を注いで着火させた平田オリザの件を萌芽とすると、東京都知事選で「コロナはただの風邪」をキャッチフレーズとして投下し扇動に使用した国民主権党の平塚正幸は様々な不平不満を反自粛に結びつけたと言える。こうして「経済を回す」は、9月22日の堀江貴文による餃子店マスク騒動などを経て抜け駆け的であっても営利活動をする、欲望のまま消費活動(おもに飲食遊興)をすることのお為ごかしとして使われるようになる。

マスパセを名乗るノーマスク男がトラブルを起こし始めるのもこの時期だった。

ワクチンをめぐり政府と開発メーカーで契約が進められ接種へ向けて水面化で準備がはじまっているが、国内の意識はPCR検査とPCR検査を利用して経済を回そうとする人たちの言動と話題にかき消された。

給付10万円の恩恵感が薄れ、経済的疲弊が進み、政府から見捨てられたと感じる人が少なくない数で登場し(再給付金がない、その他援助が薄い)、経済を回す」をお為ごかしとして使う人々が増え、不安と不満から生じた分断の溝は容易に消え去らないほど深いものになっていった。

海外では新型コロナ肺炎とワクチン開発への陰謀論が加速していったのもこの期間のことである。

後期:

あくまでも2020年1月から2020年5月までの期間の後期である。

2020年10月半ばから感染者が都市部で増加し続け、11月は高水準で推移し、12月には各地で病床が逼迫している。2021年1月に入り、一都三県で緊急事態宣言が発令され、以後続々と対象が他の地域へ拡大して行く。

こうした状況の中でGO TO政策が進められ、やがて地域の限定を経て停止に至っている。中期で顕著になった「経済を回す」と言いながら抜け駆けと欲望のまま消費活動する人々の存在と、これを批判的に受け止める側の対立がGO TO政策にオーバーラップして話を混乱させている。GO TO政策の経済的評価、疫学的評価に批判が集まるのが本質への問いかけを難しくしている原因である。

これもまた分断の影響であり、分断を政権批判や世情批判へ結びつける人々の問題でもある。

自粛しない人の問題を残したまま2021年1月7日緊急事態宣言が発令された。まん延防止等重点措置とともに、既に実効性を失ったと言ってよいかもしれない。「自分たちは会食やめないのに。若い人のせいにした」「また若い人へのお願いにうんざり」「お願いなんて言ってるけどマナーの悪さは若者に限ったものじゃない」(スポニチ)などと報道されただけでなく、こうした声はSNSにも登場した。

コロナ禍初期、新型コロナ肺炎は老人が罹り老人が死ぬ病気とされ、若者だけが割りを食っているとする意識が生じた。

2020年3月29日に志村けん氏が死亡したとき幅広い年齢層で追悼の意を表する様子がみられたし、彼こそ高齢者を象徴する存在として扱われ、ウイルスを侮って女性が客席に付き接待を行う飲食店に連夜通っていたことを批判する声へ抵抗感を示す人々も多かった。

志村けん氏は「老害」と別ものとする雰囲気がまずあり、2020年6月になると志村けん氏の死は人々の話題に上らなくなっていき、1月20日以降深刻になったマスクやトイレットペーパー買い占めの張本人と目された高齢者への嫌悪感と批判が強まる一方になった。

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老人がマスクやトイレットペーパーを買い占めるため早朝から店舗に列をなしたが、長引く経済退潮のなか搾取され続けている世代と自認する若年層にとって、これは搾取者=高齢者=老害と恨みと怒りを募らせる決定的なできごとだった。

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(2021年5月28日現在、Twitter検索で[老害 買い占め]をキーワードに検索して[話題のツイート]を上位から並べると以上のようになる。ツイート日は2020年4月10日前後が圧倒的に多い)

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(「老害」という言葉はかなり以前から使われていて、人々の関心度は世の中のトピックスに応じて上下している。マスク、トイレットペーパーの買い占めと品不足が顕著だった2020年2月から5月期に「老害」への関心度は上下動がなく平均的で、その後上下動するものの振れ幅が小さくなった。つまりトピックスに依存せず、「老害」への関心が持続する傾向がある)

当初から新型コロナ肺炎に感染すれば若年層にも重症化例と後遺症が残る例があったが、2021年12月に変異株が報告され1月以降深刻さを増したことで老人だけが死ぬ病気ではないことが知れ渡った。だが人生で損をし続けてきたと自認する若年層から3月から4月にかけて路上飲みに代表される反自粛行動を取るものが現れるなど、これ以上我慢したくない人々が急激に増えた。また平塚正幸は旬が過ぎて影響力が低下したものの「コロナはただの風邪」「コロナは茶番」「コロナは概念」を免罪符として掲げる経済を回したい人たちは後を絶たない。

12月中にワクチン開発国とリアルワールド試験国(イスラエル)等でワクチン接種がはじまり、1月国内の接種が現実的になり、2月に医療関係から接種がはじまるとワクチン不安を煽る報道が相次いだ。ワクチン不安煽りは、4月以降の高齢者接種への動きのなか政権のワクチン政策批判へ方向転換した。

ワクチン接種が現実のものとして国内で意識されるようになったのは2月の医療関係者への接種からで、3月から4月にかけての自粛しない人々の跋扈とオーバーラップしながら、やがて世代の分断、抜け駆け派や欲望のまま消費活動をする人々が生んだ分断は溝を小さくしていったかに感じられる。

だが6月以降現時点(5月)を振り返ってはじめて[後期]に世の中を覆っていた雰囲気、風潮、気分を正確に把握できるだろうから、結論づけるのは避けたいと思う。





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