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パートナーを呪って生きるのはやめよう

「男性はもっと育児家事を」「うちの夫はこんなに酷い」系記事や漫画、楽しいですか?自分の観測範囲では絶滅危惧種に認定されているのですが、一定数の人気があるので日本社会ではまだ大半がそうなのかもしれません。
ただ「育児しない男性」をコンテンツ化してもあんまり面白くないところが残念なところで、現代ではスタンダードである「育児してる男性」を発信して社会をアップデートさせていきたいと思います。
今回は、家族ぐるみで友人のYさんとリモート飲みをしながら日々の生活について語り合った始終をお送りします。

Yさんプロフィール
企画&開発職で2児(娘4歳/息子2歳)の父。夫婦ともフルタイム共働き家庭で、ものづくりと楽器演奏を生き甲斐にしています。趣味はお酒と格闘ゲーム。

私のプロフィール
インハウスデザイナーで2児(娘4歳/息子2歳)の母。生き(ることがギリギリなので)甲斐は今は特にないです。趣味はお酒と楽器演奏。

アセット 4

2人育児のリアル

私: 最後に会ったの1年半くらい前かな。最近どうよ?

Y: 娘4歳と息子2歳まで育ててきた感想だけど、1人と2人は次元が違うね。2人育児、ヤバい。悟空だってフリーザは何とか倒せたけど、同時にセルも相手したら絶対勝ててない。ヤバいのも当然。

私: ごめん、私「ドラゴンボール」観てないから全然分からないんだけど、こっちのが伝わる人がいるかもしれないからそのままにしとくわ。でも2人育児になった途端、経験したことのない最大瞬間風速みたいなのがあって「完全に詰んだー」ってゆう時があるよね。

Y: そう。だから1人目の時は「育児好きやで俺」って思ってたけど、2人目産まれてからは「自分育児向いてないんで」と思い続けてるくらいにしんどい。2人育てながら元気でキラッキラな人、超サイヤ人か何かなんじゃないかな?

私: (スーパーサイヤ人のことか...?) とりあえず体力オバケであることは間違いない。私は1人目のときから「自分育児向いてないんで」と思ってたな。でもよくよく考えたら「育児向いてない」というより、「ワンオペ育児が辛い」なんだよね。それがネジ曲がって「私子ども嫌いかも」までいってしまうことがあるから恐ろしいよ。

Y: わかる。しんどくなるとマイナス思考に染まって子どもや周囲に当たっちゃう。そんな中でも何とか踏みとどまって切り抜けてきたサバイバル術を、備忘録としてまとめておきたいなと思ってさ。

夫婦で同じことをできるようにする

Y: 第二子誕生からはコレができないと詰む、というか負担が偏った方の親が病む。悟空2人とは言わないからせめてベジータでも一緒に連れてこないと即消し炭だよ。

私: (ベジータって緑色のやつ...?) 実際、私も第二子誕生後の夫の育休期間が終わってからワンオペ時間が爆発的に増えて、ストレスで不眠になって中々復職できなかった。マジで病む。

Y: (たぶんそれピッコロ…) ウチもワンオペが一番キツいから、とにかくお互いがワンオペにならないように予定組んでたな。特に歳の差が近い兄弟姉妹のツーキッズワンオペは親を殺しかねないなと思って。

私: 瞬間最大風速が想像以上にヤバいということをお互い知っている状態は、共働きどうこう関係なく必須だと常々感じるよ。

Y: まず一通りやらないとワンオペの辛さすら共有できないからね。あと「夫婦で同じことができるようにする」といっても完全に半々にする必要はなくて、負担の量や育児の質は各家庭で納得するバランスで調整できれば良いと思う。

私: それぞれの置かれた環境や得手不得手があるから、お互い納得しているかどうかが重要だよね。

Y: それを考えるときに、例えば「自分1人で家事育児がすべて回せるか?」と考えてみる。回せないならどこかに負担の偏りがあって、その負担が積もり積もっていつかパートナーを殺すと思った方がいい。

私: なるほどね、そうやって想像してみるのは1つの手だね。私は本当にツーキッズワンオペが苦痛だから2時間が限界かな...それ以上になるなら、ヘルプをあらゆる手段で呼ぶわ。

育児サポート利用は教育費

Y: 自分は当初子どもを人に預けるのはどこか罪悪感があったんだけど、一時保育/ベビーシッターサービスは教育の一環と考えて遠慮せず活用することにしてる。1対1 or 2で他の人の情操教育を受けられる良い機会だと思って、保育料 兼 教育費と捉えれば前向きな投資として他人に預けやすいなと。

私: 私は最初から罪悪感はなくて、むしろ預けた経験のない人から「かわいそう」みたいに言われる方が辛いかな。「ということは、あなたが365日24時間お世話してくれるですね!あざーっす!」と日程調整始めるわ。保育園も然り、親以外の遊びや考え方に触れるのは、子どもにとっても親にとっても良いことだと思ってるよ。

Y: ちなみにウチは多い時で平日のうち3日は18-21時で祖父母やベビーシッターを召喚して凌いでいたよ。

私: 我が家も私が抑うつ状態でツーキッズワンオペが1分たりともできなくなった時期があって、その時は1ヶ月間、平日毎日18-20時半でファミリーサポート(という自治体のサービス)の人に来てもらってた。毎日なんて来てくれるのかな?と思ったけど、あれこれ探してくれて2人体制で日替わりで来てくれてすごく助かった。

Y: ファミサポって2人体制で毎日とかいけるんだ!ちなみにそれ1回おいくら…?ウチは長女が0歳の時に保育園入れなくてシッターさんを週3で頼んでたけど、1人体制で頼めたからシッターさんにノウハウ溜まってすごい良かったんだよね。その代わり民間のとこに頼んでたからそれなりにコストはかかったけど、ファミサポならお安くすみそう。

私: 横浜市のファミサポは、最初の説明会・登録・事前打合せのハードルがとんでもなく高いけど、そこをクリアすれば後はかなり融通が利く印象。基本は1時間800円/1人で、2人目はその半額の400円になるから民間の半額以下くらいかな。でもそれ以上に、私は当時子どもが怖くて怖くて(今でも怖い)、同じ空間に大人がいることがありがたかったな。

コロナ期&休園期間の緊急対応

私: 我が家は保育園は休園まではいかなくて、会社の休業期間と登園自粛期間がうまいことかぶって、自宅保育しながら仕事をする日があまりなかったのだけど、そちらはどう過ごしてたの?

Y: ウチは4-5月がほぼ完全に休園。だから約40日間くらいは仕事しながら100%自宅で育児してた。今考えるとエグいな…悟空でも無理かも。(というか原作で悟空はまともに育児すらしてない) ちなみに休園期間中はのポリシーは「生活習慣を変えずに生き残る」。外出できる日は三密を避けながら必ず公園に行って放牧させて、保育園の生活パターンを守ってた。

私: 生活パターン守ってたのすごいな。

Y: 逆に何も指針がないより守るべきパターンあった方が楽だったかも。金曜夜はカレーするってWebでも話題になった海上自衛隊のルーティン取り入れてて、メニューを何も考えず決められるのは楽だったかな。これは今も続いてる。それと外出時は位置確認しやすい園の帽子を活用したり、プロの知恵を借りて乗り切ったよ。

私: 判断する回数を減らす視点って大事だよね。育児家事って判断の連続で、知らないうちに脳のメモリをかなり食ってる。

Y: 仕事は夫婦共にリモートワークできたから、午前/午後でシフトを組んで仕事と育児を切り替えてた。おかげで在宅勤務の利点やツーキッズワンオペのノウハウはたまったけど、育児にも仕事にも集中できないのは苦痛だったな。

私: よく乗り切った!おめでとう!おつかれさま!「保育しながら仕事する」は、私は全然できなかったので、みんなよくやってんなーと感心したよ。

Y: 6月から登園再開になったけど、正直6月以降も続いていたら恐らくメンタル的にアウトだったと思われ。

私: こちら会社休業で毎日子どもと過ごすだけでもしんどかったよ。子どもも毎日公園で飽きてきて、後半は「保育園行きたい」って言ってた。あと私は料理するのは好きなんだけど、毎日3食作るのはさすがに嫌だったな。

Y: 3食作るの辛かった。コロナ中は何してても次の食事の準備のこと考えてたな。まぁおかげで時短や作り置きのレシピ増えたけども。

私: 育児家事のような毎日の持久戦で「負担」を感じると、頭の中がそればっかりになって「頑張り過ぎだから減らそう」をすっ飛ばして、「それ自体が嫌い」になってくるね。本当はそうじゃないのに。

パートナーを呪って生きるのはやめよう

Y: 2人育児+家事の負担は凄まじくて、これが偏るとパートナーへのヘイトも自ずと高まっていく。そうやって負担が溜まった側(特に女性側)によるヘイトで染まったSNSの投稿や記事が日夜量産されていて、それらを読んで思うのは「無駄なことは止めて、育児しない男性像を必要以上に捏造するのはやめろ」ってことで。

私: 「育児しない男性」のコンテンツ消費は、共感者のヘイトを増大させる点と、そうゆう社会だと思わせてしまう点で害なんだよな。

Y: 禿同。よくわかる。身のまわりでその手の記事レベルで育児しない男性見聞きしたことないよ。もちろんそういう家庭もあるんだろうけど、偏ったサンプルを拡散しても状況は改善しないし、当たり前のように育児してる男性が辟易するだけ。そもそもパートナーは血の繋がらない他人で、いい歳した大人。価値観を大きく変えるには手遅れで、切実に不平不満を訴えても相手が変わらないのであれば、諦めて自分が生き残る道を探そう、と思って。

私: もうね、人を変えるのは無理だし、その労力が本当に無駄。

Y: 自分はあまりにもパートナーへのヘイトを溜め込んで、クソ忙しい時期にメンタル不全から体調を崩したことがあったよ。誰かを呪い続けて生きるくらいなら、呪うためのエネルギーを他のものにぶつけた方がまだ生産的だと思う。

私: そうそう。というか、呪って生き続けるのも辛いよね。

呪いに変わる前に伝えよう

Y: ただ、切実に不平不満を一度は訴えるのは絶対にやった方がいい。自分も妻にそれをされて色々気付けた身で、諦めるのは意思表明してからでも遅くはないと思う。

私: そういう意味では家庭内での話し合いは日常的にやってるな。それを通じて生活を見直したところもあるし、逆に「夫が帰宅時間を連絡しない」のは100回言ってもしないから、もう無理なんだと諦めたよ。

Y: 本気で伝える機会を持たないと「もう無理」ってことすらわかんないよね。

私: 「いつ帰ってくるか分からない人は不在と同義」というのをあの手この手で訴えても意味が伝わらなくて根本的に噛み合ってないんだなと。でも意味は伝わってないけど、私の不満は伝わったらしく、夫が自ら「ノー残業デーの水曜金曜の保育園のお迎えに行く(毎日送りもする)」という提案をしてきてくれて、その運用にしてから私はすごく楽になった。

Y: 思いがけず、相手なりに選べる選択肢の中から解決策の提案があったんだ。それは嬉しい誤算だね。

私: 「退社時間の見積もり」は私にとっては特に大変なことじゃないから「人類として最低限そのくらいしてほしい」くらいの感覚で言っていたんだけど、夫にとっては不可能なことらしく「ノー残業デーにお迎えに行く」ことのが達成しやすかったみたい。できることできないこと、人によって違うからやっぱり話さないと分からないね。

Y: そう考えると「パートナーが育児家事してくれない」系の記事も、相手に向いてないことを求めた結果をそのまま愚痴ってるパターン多そう。インターネットにヘイトぶちまけて共感とPV稼ぐより、パートナーに本気で不満伝えて家庭内平和を得た方がよっぽど建設的だよね。

私: ほんとそれ。ミュートキーワードどんだけ追加すればいいんだよと。まぁ鍵垢でちょっと愚痴るくらいは許してほしいけどね。

アセット 4

パートナーを呪って生きるのはやめて、不満はきちんと伝える、改善できそうなところがあれば生活を組み直す、無理なことはさっさと諦める。当たり前だけど、様々な要因で簡単にはいかないことなのかもしれない。ただ、「ヘイトを煽る人」に利用されて自分の中の怒りが増幅されてるだけなら、今すぐそうゆうコンテンツから離れた方が良い
ヘイトを煽る人はいつの時代もどの分野にもいる。まずはそこから離れて、自分を生きやすくすることで周りも生きやすくなり、徐々に社会全体も変わっていくと私は思う。

追記(2020/08/12): 「「育児してる男性」はわざわざ育児してますアピールしないからね。」という一文を削除しました。記事の内容とはあまり関連がないのと、男性が育児コンテンツを発信したり弱音を吐くことがすることが負の意味として捉えられてしまう可能性があるためです。


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