【22/06/19更新】学食2F次元2022.05インタビュー!【後編】
2022年5月に『学食2F次元』(@愛知県立芸術大学)でひっそり開催されていた展覧会…企画者の小野絢乃さんが参加者の方々にインタビューをしました!
【前編】はこちら
【展覧会情報】
会場:学食2F次元(愛知県立芸術大学 学食二階)
会期:2022年5月23日〜27日
参加者
安達充徳(陶磁4年)
おおのるな(油画4年)
小野絢乃(日本画3年)
倉橋絃(彫刻4年)
トミヤマモニカ(芸術学2年)
中坪小鈴(油画1年)
山本丸楠(デザイン3年)
米谷莞爾(油画2年)
(以下、作家ごとのインタビュー文)
【おおのるな】
小野
おおのさんのドローイング作品たちは昨年度の後期進級展で初めて出品されていましたね。過去作にはない新しい試みのように見えました。
おおの
もともとクレヨンで紙に描くまでのドローイングをしてました。ただクレヨンって丸くてエッジがつきにくいんです。なのでカッターで切り貼りして新たなカタチを探っていったのが始まりです。
小野
絡まった端材が細いピンで展示されていたので、触ったら壊れてしまう神経質さも感じました。
昨年度よりも数がかなり増えていますが、どんなことをきっかけにして制作しているのでしょうか?
おおの
一つ一つのテーマは断片的です。きっかけとしては日常で感じた怒り、社会への疑問、喜びなど、机に向かった時の自分が思っていることを色と形にしています。
小野
感情を標本のように記録しているのですね。
使われている素材は制作する場所にいつもストックされているんですか?「デザインあ」でもらったプレート、という変わった素材が使われたりしていましたね。
おおの
標本、まさにそうです!
素材はですね、アトリエや自宅にストックしています。全てのものにおいてここからなんか生まれるかも?と思えてしまい、ものが捨てられないんです。。。
小野
うわ〜〜わかります。
amazonの箱の底にある一枚のダンボールとか、これに絵描けるんじゃないかと思って毎回捨てられません…。
でもそういった少しくすんだ素材って、精神的に自分に優しいですよね。綺麗なキャンバス君はなんかちょっと緊張します。
おおの
そうそう!板段ボールってホムセンで買えるのに偶然手に入るとレア⭐︎感高くて嬉しさもプラス(笑)。
キャンバスを初めて角材から自作したら2日もかかってしまい、愛着は湧くけど描くのにドキドキしそうです。日本画のパネルとかも工程が色々ありますよね。儀式みたいなイメージがあります。
小野
確かに素材を集めて加工するってゲームっぽいですね。日本画も描き始めるまでの準備工程が長くて、課金したら時間短縮できないかなとか思ったり…。
ちょっと長くなってしまいました!締めます!
ありがとうございました!
おおの
わ!あっという間でした、こちらこそありがとうございました。
【トミヤマモニカ】
小野
昨年、芸術学の学生の展示でトミヤマさんの詩歌集を拝見しました。今回はそれをきっかけに声をかけてみました。
まず始めに気になったのが、詩歌集を《彫刻》と題されていたところです。立体を展示するための台座に置かれていた点も相まって、展覧会の中でも一つ異色な雰囲気を感じました。一枚岩ではない感じというか。
トミヤマ
そうですね。昨年の作品の内容や形態を引き継ぎながら何かやれたらいいなと思ったのが始まりです。今回は展示空間で期待されていそうな役割を演じつつ、その役割を使って何かを問いかけることができないかなと思い、あのような作品になりました。
本に《彫刻》というタイトルをつけたのは、展示空間に本、ひいては何らかの異物を置くというある種の暴力性を孕んだ行為をすることによってホワイトキューブという場所をもう一度考え直したかったからです。
でも後で芸術学の同級生に聞いたら「自分は彫刻とか絵画しか置けないような雰囲気や制度の方が暴力的だと思う」という答えが返ってきて、それもまた然りだなと思いました。
作品を出したことで興味深いコメントが得られたことに手ごたえを感じます。
小野
展示主催者から言われても興醒めかもしれませんが、権力者側が作ろうとしているものに対して俯瞰した視点を持ってもらえるのはかなり嬉しいです。
何者かによる演出がなされて展示になっている以上、偏向的・扇動的になってしまうのが展示の面白い部分でありグロい部分だと思うので。
作品の冒頭でも展覧会の起源について言及されていましたね。そういったことは普段から意識されているのでしょうか?それとも展示のお話を振られてからでしょうか?
トミヤマ
「展示の面白い部分でありグロい部分」というのは本当にそうで、主催者と出品者どちらにも、一方より大きな権力を持つ可能性がある、というところが展覧会の非常に面白いところだと思います。
展覧会の起源というトピックについては常々考えていますね。私自身も将来、展覧会を企画する側になる可能性がかなり高いので。考えざるをえないと言った方が正しいかもしれません。
でも作品冒頭は、観る人に少し揺さぶりをかけるためにちょっと誇張して書いてる部分はあります。暴力性云々の内容については「概ねそう思ってるけど別に100%はそう思ってない」くらいの感じですね。
小野
作品中の短歌からも、現実から一歩退いた視線を感じました。自分もいくつか良いなと思うものがあったのですが、こだわっている部分などありますか?
トミヤマ
そうですね。「一歩引いた視線」というのは永遠のテーマかもしれません。
こだわり...という程ではないのですが、作品として出しても嫌な感じがしない程度には調整しつつ、その中に若さや愚かさも残すことは大切にしています。今しか作れないものを作りたいです。
小野
作品を校正することに過敏になってしまう瞬間は多くありますが、不備や欠落が露呈した時、それを無かったことにしないことは大切だと自分も思います。
研究と表現、両刀的で大変興味深かったです。
これからも陰ながら作品を見させてもらいます。ありがとうございました!
トミヤマ
いえいえ。こちらこそありがとうございました…!
【中坪小鈴】
小野
中坪さんは米谷さんからの推薦でこの展示に参加してもらいました。
キャプションでは制作年が2021年となっていましたね。受験生の時に制作した作品でしょうか?
中坪
はい。通っていた予備校の作品展や、個人的な趣味で制作したものです。
小野
そうなんですね。観察すると絵の具の凹凸や方眼紙のようなマス目など、ミクロなものが広がっていく絵のようにも見えました。
中坪
特に技法らしい技法は使っていませんが、ペンで描くことには拘ってます。
自分のいる地点を上空から俯瞰した時に見えてくる建物や人の集まる場所、照明やネオンなどの情報を抽象的・装飾的に絵へ落とし込んでいます。
グリット(マス目)を用いたのは、この絵の想定としては森なんですけども、その規則性のない緑の色面に擬似的な規則を設けたいと思ったからです。
小野
そう言われてみると《構成1》や《構成2》は衛生写真のようですね。漫然に見える森の色も、線を引いて区画を与えた途端、区画毎の個性みたいなものが見出せました。
米谷さんの作品にも空間へのアプローチがあったので、同室で展示されていたことに今更納得感があります…!
中坪
私はドローイングを何枚も作成してそれを繋げたり削ったりしながら作品を作るのですが、ドローイングの段階ではまだ空間がありません。
これらドローイングの集積を絵画として成り立たせるための媒体が空間だと捉えてます。
絵画が絵画足り得るのは、画面上に何らかの空間が想定されるからだと思うので。
小野
絵画空間って目ではなく脳内の領域で広がっていくものだと自分は感じます。例えるなら折り紙がパタパタと展開されていくように。
中坪さんの作品も画面上から展開されていく情報が豊かでした。
中坪さん、興味深いお話ありがとうございました!
中坪
こちらこそ展示に参加させて頂きありがとうございました。また機会がありましたらよろしくお願いします。
【山本丸楠】
小野
昨年の冬に山本さんから、使用済みで捨ててしまうキャンバスはないかと声をかけられました。それで油絵具が拭ってあるキャンバスを提供したことが今回の作品の発端でしたね。
山本
元々は座る物じゃないものでスツールを作ろうと思ってホームセンターで色々探していました。
それでペンキ缶に目星をつけたところで、座面の部分をどうしようかな〜と考えていたんです。普通に買った布を張ってもおもしろくないので、作家が廃棄してしまう画布を引き取って使ってみようかな…と思ってた頃に小野さんがいたので声をかけてみました。
小野
このスツールは大学の課題で作る予定だったんでしょうか?デザイン専攻の学生が作った椅子がイオンで展示されていたと思いますが、その繋がりとか?
山本
いえ、完全に趣味でした。ホームセンターで売ってる建材だとか工場の部品で家具を作りたいなって所から転じて今回の作品になってます。
昨年の長久手リニモテラスで開催されたマルシェでは、実際にこのスツールに座って休憩したり食事が取れるようになってました。椅子が足りないって話を聞いたので使ってもらいましたね。
小野
マルシェでは大きい塩ビパイプもスツールに改造されていて、そちらもイケてました。
このスツールって座面の部分を張り替えれると思うので、カスタマイズの自由度が高いですよね。今回は自分のキャンバスでしたが、別の可能性もよく見えてきます。
山本
誰のかわからない絵をゴミ庫から拾ってきてあるので、それを使おうかなと思ってます。
もし作家さんからスツールにしてくれって材料提供していただければ、全然作るよって感じです。
自分じゃこういうデザインにはならなかっただろうなっていう所も、このスツールの面白みだと思います。
小野
トミヤマさんが出品されていた詩歌集を読む時座ってもらえたらなと思い、展示室に配置しました。
これは意図していた訳でないのですが、スツールを含め、展示全体で作品同士が相互援助するみたいなシーンが散見されたので良かったです。
お話ありがとうございました。
山本
こちらこそ、ありがとうございました!
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小野
最後に、展覧会名すら決めていない展示でしたが、参加してくれた方々、見にきてくれた方々、そしてこの記事を読んでくれた方々、本当にありがとうございました!
執筆:日本画専攻 小野絢乃
監修:デザイン専攻 黒江ののか
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