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【22/08/24更新】『ホーミーホーム』インタビュー!

2022年6月に密かに開催された展覧会『ホーミーホーム』のインタビュー記事です!


『ホーミーホーム Homi Home』概要

日程:2022年6月21日(火)〜26日(日)
場所:愛知県長久手市 *詳細は非公開
会期中無休、入場無料、予約制

参加作家一覧
AHMEDMANNAN
安達充徳
大上巧真
川獺すあ
木々津鏡
木本大貴
倉橋絃
玉住聖
中西萌
堀聖史
まぶちひなた
みうらりゅうと
三好彼流
村瀬匠
山本奎



インタビュー

ホーミーホーム企画者…みうらりゅうと
聞き手・執筆…小野絢乃
書記、校正…黒江ののか


小野
最初にホーミーホームの情報をキャッチしたのはSNSでした。開催場所の住所が非公開で、専用のインスタアカウントを通じてアポを取ると住所がわかる、という特殊な形式でしたね。
開催に至ったきっかけはなんですか?

みうら
突発的に思いついた展覧会でした。今年(2022年)の一月頃に自分の家が取り壊されるって聞いたのが始まりです。
次のアパートを探すか、実家に戻るかを考えていたんですけど、お風呂に入っている時に「あれ?展示できるんじゃね?」と急に思いつきました。せっかくなので自分のアパートに集めていた作品をコレクション展のような形で公開しようと。

小野
住所非公開という点も、珍しいですよね。

みうら
自分にとっては展示会場でもあり自宅でもあるので、住所を公開してしまうと危ないという考えで非公開にしました。
多数の人が一度に来てしまうのもまずいので、予約制にして誰が来るのかわかるように。
それと意識したのは、こういう展示には女性の方は不安かもしれないと思ったので、告知や宣伝などはしっかりとやって「開かれた安全な場所」であることはアピールしました。


『ホーミーホーム』ハンドアウト


小野
なるほど、それは確かに重要なことだと思います。自分も告知で知っていましたが、いざ現地に行くと「本当にアパートだ…」となりました。
みうらさんのコレクション展でしたが、出品されていた作品がコレクションの全てでしたか?

みうら
いえ、実はまだ出せていないものもあります。京都の展覧会でドローイング売りみたいなのがされていて、それをネットで買ったりしたものなど、二点くらい出してないですね。


家具が消え、作品だけが残った部屋。
撮影:みうらりゅうと


左上 《untitled》川獺すあ
右下 《小象を抱いて寝る》AHMED MANNAN
撮影:みうらりゅうと


小野
自分の身の回りでは他者の作品をここまでたくさん持っている人があまりいなかったので、コレクションの多さに驚きました。他人の作品を持つことは好きですか?

みうら
あんまり意識したことはないですね(笑)。いつのまにか増えてたみたいな。
ほとんどが知り合いや友達の作品なので、割と軽いノリで買ったり交換したりですね。なのでお金のやり取りも少ないです。

小野
自分は年賀状のやりとりみたいだなと思いました。そういう背景を含めて良い展示空間だなと。


インタビュー時の様子。
手前《untitled》木本大貴
裏面にはメッセージが書かれている。
撮影:小野絢乃


みうら
本当にハガキの作品もありますからね。
片面にメッセージ、もう片面に絵が描かれているものとか。こういうのはドイツとかから直で(無梱包の状態で)送られてきますね。

小野
展示室自体も面白かったです。奥のワンルームは白い壁とフローリングで展示室らしい様相でしたが、キッチンやトイレの方まで作品が点在しているのが興味深かったです。
どのように作品を配置して行ったのでしょうか?


お風呂場の戸に設置されている作品
《untitled》川獺すあ
撮影:みうらりゅうと


キッチンに設置されている作品
左 《untitled》木々津鏡
右 《untitled》木本大貴
撮影:みうらりゅうと


みうら
展示作業というよりは、自分が絵を描く時と似た感覚で配置していきました。
最初は家具とかもそのまま残した状態で展示したかったんですけど、引っ越し作業との兼ね合いもあってそれは難しかったです。
ただの展示にはしたくなかったので、キッチンに貼ったりしておもしろくできないかと意識しました。

小野
いたずら心とか遊び心がある展示は自分もかなり好きですね。
もちろん作品も見ますが、インストール(作品を空間に設置すること)がおもしろいと更に嬉しいです。


手前《attention seeker》安達充徳×倉橋絃
壁面左から
《untitled》まぶちひなた
《クイーン♢》村瀬匠
《untitled》大上巧馬
《untitled》玉住聖
撮影:みうらりゅうと


みうら
日本の賃貸はあんまり広さもなくて、壁に穴を開けちゃだめだったりで、規制が結構厳しいですよね。
でも今回自分のアパートが取り壊されることになって、そういう規制がなくなるというレアなシチュエーションになりました。
チャンスなんじゃないかと思って、ゴードン・マッタ=クラーク(米アーティスト)みたいに壁に穴を開けて隣の部屋と自分の部屋を繋げた状態にしようとかも考えました。

小野
ドラえもんの通り抜けフープみたいでウケますね。

みうら
でも大家さんから建物が倒壊するかもしれないからやめてくれって言われて。

小野
一階ならそうですけど、会場は二階だったのでイケそうだと思いますけどね…。残念です。

みうら
壁に漆喰を塗ってフレスコ画とか描いちゃおうとも思ったんですけど、引っ越しもあってそういう制作はできなかったですね。そういう紆余曲折があって、最終的にコレクション展っていう形になりました。
でも賃貸の中でやれる展示として最低限できたかなと思ってます。


バルコニーの柵にも作品が設置されている
《untitled》山本奎
撮影:みうらりゅうと


小野
会場を見て他の展示とは違うなと思った点が一つあります。
愛知県芸の中で起こりうる作品の雰囲気が感じられないなというか、ホーミーホームはそういう雰囲気からある程度抜け出している展示だなと思いました。
地方や都市、海外など様々な土地で別々の作家がつくった物が一箇所に集合していたからですかね。

みうら
そう言ってもらえると嬉しいです。ただそれを意識していた訳ではなくて、必然的にそうなったというか。
県芸の雰囲気っていうのは自分も大学に入学した時から感じていたので、できるだけ学外に足を運びました。そのおかげで知り合えた人たちと今回の展示をしたとも言えますね。


左から
《ヒコザル》玉住聖×みうらりゅうと
《♡×2》村瀬匠
《untitled》中西萌
《東京2020=雨、は、国》みうらりゅうと
撮影:みうらりゅうと


小野
みうらさんは京都などに頻繁に行っているイメージがあります。夜行バスとかで行ってるんですか?

みうら
いえ、京都なら2時間くらいで着いちゃうので、朝バス乗って昼について、その日は友達の家に泊めてもらうみたいな感じです。
その友達の家にぽーんっと置いてあったドローイングが良かったのでお願いして譲ってもらったりとか。

小野
ちょっとわかります。自分の体験をお話させてもらいますと、東京で泊めてくれた友達からスニーカーの解説をずっと聞かされました。でもそれがきっかけで、愛知に帰ってきた後で自分もスニーカーが好きになったりしました。
自分の中になかったものを持ち帰ってくるための旅行・宿泊みたいな。

みうら
そうですね。そういう感覚がホーミーホームに反映されていると思います。

小野
ちょっと話は戻りますが、作品のインストールで印象的だったのが奥のワンルームのタンスです。半開きになったタンスの隙間から絵画作品を見るっていう体験が、他人の住んでいるアパートを覗き見るみたいな展示構造自体と重なっておもしろかったです。
本来なら他人が見ることのできない領域が公開されていて、ドキドキ感がありました。


左上 《フラワー》木々津鏡
右 《火車》堀聖史
タンスの中 《天井浅敷を飛ぶ》みうらりゅうと
撮影:みうらりゅうと


感染症対策も兼ねて換気。風の入る部屋。
《untitled》大上巧馬
撮影:みうらりゅうと


みうら
例えば作品画像や展示風景はネットでも見れると思うんですけど、それでは味わえない部分を現地につくりたいんです。

小野
なるほど。SNS世代特有の価値観かもしれないですね。
ちなみにどれくらい人が来たか聞いても良いですか?

みうら
だいたい30人弱くらいですかね。
学内の方が多かったですけど、卒業生の方とか、受験生の方も来てくれました。

小野
かなり来ていますね。

みうら
そうですね。出展されている作家さんがインスタで宣伝してくれて、それを見て来てくださったらしいです。

小野
ホーミーホーム、とてもおもしろい企画でした。お話聞かせてくださってありがとうございました!

みうら
ありがとうございました!

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