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遺伝力(前編)

「いいなぁ身長高くて。家族みんな高いの?」「うん、お父さんは190cmぐらい、妹も170cm以上あるよ」「うらやましい、うちの父ちゃんは身長高いのに、なんで俺は低いんかなぁ」と、背の高い人がうらやましく思った時期もありました(背が高くなると、洋服を書い直さなければいけないので今は思いません)。毎日牛乳飲んだのに、重いバットでひたすら素振りしていたからいけなかったのか、いや、野球選手は大きいよなぁ、とりあえず鉄棒にぶら下がっていよう(正確には、ホコリをかぶった ぶらさがり健康器)、などと悩める青春時代を過ごしました。

身長、体重、血圧、病気のなりやすさなど、観察可能な生物の特徴を表す量や質を、遺伝学の世界では「形質」と呼びます。その形質の実際のとりうる値のことを「表現型」と呼びます。たとえば、『もしもげさんの形質「身長」の表現型は166cmです』と表します。『もしもげさんの形質「髪の形状」の表現型はくせ毛です』と表します。

みなさんの表現型は、大きく2つの要因で決まります。その人の保有するゲノム情報から決まる「遺伝的要因」と、その人の環境によって決まる「環境要因」です。この場合の環境要因とは「遺伝的要因では決まらない部分」と表した方がわかりやすいかもしれません。「田舎育ちだから空気もきれいで環境が良かったんだ」という環境もあるでしょうし、「毎日、牛乳を飲んでいたから身長が伸びたん」という「牛乳を飲む」という生活習慣も環境要因に含まれます。この表現型を決める要因全体を100%としたとき、遺伝的要因で決まる大きさのことを遺伝力(遺伝率という人もいます)と呼びます。

遺伝学者たちは、これまで多くの形質の遺伝力を調べてきました。身長はもちろん、体重、血圧、糖尿病罹患の有無など、生物の特徴を表すさまざまな形質について、ゲノム情報が取得できる前から遺伝力を調べていました。たとえば身長の遺伝力は80%といわれています(ゲノム研究が進んで諸説あります)。実際にどのように遺伝力を推定したのでしょうか。それは一卵性双子と二卵性双子をたくさん集める「双子研究」によって、多くの形質の遺伝力が調べられてきました。

長くなったので、双子研究から遺伝力を調べる方法については次回に。

(追伸)
身長の遺伝力80%と聞いて「おわた、20%じゃどうしようもない」と思わないでくださいね。環境要因で5cm変わるだけでも大きな違いですよ。少なくともわたしがあと5cm身長高かったら何も悩まないでしょう(いや、欲が出るか)。

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