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さよならの足音(日常とアイドルの話)


「いつか離れていくなら好きにならないで」


この可愛くない言葉は私が男の人に好意を仄めかされた時にいう言葉。
性格は気難しいし容姿も特段良くない。スタイルなんて悪い部類だ。そんなアラサーの独身女にもごく稀に好意を示してくれる人は現れる。
そんな貴重な人に冒頭の言葉を投げかけるとほとんどの場合は一歩引く。
私自身はそんな気持ちで言っているわけではないのだけど、言い換えれば「私と一生を共にできるなら、どうぞ好きになって」とも受け取れるんだろう。あまりにも重すぎる。


私は「別れ」が嫌いだ。
それを好む人はいないだろうが、多分他の人よりもずっといつか来る別れに怯えている。
「永遠」なんてものはないと思っているし、「ずっと一緒」なんて約束は儚い。「別れるくらいなら初めから出会わなくていい」と真面目に思っている。
何故か別れを前提としている自分はだいぶ痛いし面倒臭い女だ。自覚はちゃんとある。



出会いと別れと
2年と少し前、冒頭の言葉に全く引かない男の人に出会った。
私が投げかける誰もわかるはずのない「未来」への不安に一歩も引かず、「この先もずっと好きだから大丈夫」と何の根拠もない言葉を笑顔で繰り返す男の人。彼は私との出会いを「運命」だと言ったし、私でも偶然にしてはできすぎた出会い方だなと思った。

彼がなんと言おうと彼との未来がないのはわかっていたけど、あまりにも彼の言葉が心地よくて、愛されているのは気分が良くて、私は彼と「彼氏と彼女の真似事」をすることにした。
(なんだか不倫っぽく聞こえるけど、独身同士です)


彼はとびきり優しいのに凄く男らしくて、一緒に過ごすのは楽しいし幸せ。
そう感じる日々はそこそこ長く続いたけど、真似事はやっぱり真似事でしかなくて、どうしても本物にはなれない。

このまま続けていくのは心が擦り減って辛い、そう思う日がどんどん多くなり連絡を取ることさえ億劫になって何もかもが嫌だった。彼自身にもいろいろな出来事があって、私と似たようなことを感じていたと思う。
お互い上の空な会話に、定型文のようなLINE、うんざりだった。


元来1人でいることが好きだ。
「一生1人の時間が持てない」or「一生結婚できない」だったら迷うことなく一生結婚できない方を選ぶ。1人でいても寂しいと感じたことがないし、1人で出かけることにも外食をすることにも抵抗がない。だから1人に戻っても全然平気。

そうだったはずなのに何故か別れを選ぶことができない。
心を擦り減らしながら真似事を続けていくこと、自分を好きだと言ってくれる人を失うこと、どちらの選択が正しいのか2年の間にでろでろに甘やかされてしまっていた私にはわからなくなっていた。


「何も今日決めなくてもいい」と毎日のように選択を先延ばしにし、そんな日々にも自分にも嫌気が指していた時、唐突に背中を押してくれたのはBTSの「I'm Fine」だった。

괜찮아 오직 나만이 나의 구원이잖아
大丈夫 ただ僕だけが僕の救いだろ


曲自体にとても惹かれ、歌詞を読んで憑き物が落ちたようにスッキリした。

心を擦り減らす日々から自分を救えるのは自分だけ。1人になっても大丈夫。自分を立ち直らせる方法も、そして案外立ち直りが早いことも、ちゃんと自分でわかっている。


私は別れを選択した。
会うのは最後にしようとした日、雰囲気で察したのか彼の方から別れを告げてくれた。自分の都合だ、自分が悪い、申し訳ないと繰り返す彼は最後まで優しい。
確かに彼の勝手な都合の部分が大きくはあったのだけど、好意を受け入れて、そして心が離れていったのは自分だって同じくせに、「離れていくなら好きにならないでって1番最初に言ったじゃん」と彼を悪者にした私は優しい彼とは正反対に最低だ。

その後それぞれの気持ちを話し合い、この選択しかないねとお互い納得して別れを選んだ。
自分の事を好いてくれた人が離れていくのは何度経験しても辛いけど泣かないと決めていた。最低な自分ではあったけど、最後くらい彼が1番好きだと言ってくれていた笑顔を見せたかったから。
彼とはきっと二度と会うこともなければ、近況を知ることもない。


帰宅しても何もする気が起きずしばらくぼんやりしていたけれど、何か音楽でも聞くかとスマホを手にしてK-POPのプレイリストを再生した。


この道なのか あの道なのか

シャッフル再生の一曲目に選ばれたのはJJ Projectの「내일, 오늘」だった。
うわ、ちょっとこれはまずい…と思った予感は的中で、曲が進むにつれて彼の前では泣かないと決めていた分の涙が出てくる。


いくつ年を重ねようが経験を重ねようが迷う時は迷う。この道は正しいのか、後悔しないか、「選択」はいつだって怖い。
そんな苦悩を歌うこの曲は別れを選択する前の私の心情に似ていて、JBとジニョンの素敵な歌声が突き刺さった。

오늘도 답을 잘 모르는 질문에
끝없이 답을 해 자신이 없는데
이 길일까 저 길일까
내 선택들이 점점 두려워져

今日も答えがよくわからない質問に
答え続ける 自信もないのに
この道なのか あの道なのか
自分の選択に自信が無くなっていく


MVの最後で二人は自分で選んだ別々の道をお互い背を向けて歩いていくけど、ジニョンだけは少し後ろを振り返る。選んだ道への不安なのか、異なる道を選んだことへの後悔なのか。

私は自分で「別れ」を選択した。正しい選択だったと思っている。
これからも恋愛に関することになると痛いし面倒臭い女であることに変わりはないと思うし、「選択」は怖いし不安なのも変わらないと思う。
でも選んだからには信じて振り返らず歩いていきたい。



ちなみに私はこの「내일, 오늘」で一時期世間で多用されていた「エモい」の本当の意味を知る。この曲とMVとダンスは最高にエモい。

ジェボム(JB)とジニョンはGOT7としてデビューする前から練習生として、そしてJJ Projectとして一緒。一見正反対にみえる二人が組み合わさることで生まれるコンテンツは本当に本当に素晴らしい。
Bounceというノリのいい曲でデビューし、GOT7の結成以降活動もなかったJJ Projectが5年ぶりに突然発表した「Verse 2」は衝撃だった。

二人で始まりGOT7として7人になりたくさんの苦悩があったと思う。大手事務所からのデビューで注目度も知名度も人気もあるのに、何故か音源があまり強くなくて音楽番組で一位を取るのに時間がかかった。

そういう部分も含まれているかは定かではないけど、少年期から大人へと成長する際に抱える苦悩みたいな歌詞、北海道で撮られたというロードムービーのようなMV、合わせ鏡のようなダンス、どれを取っても二人の歩んできた「道」が見えるようだった。

私は自分に関することは永遠というものを信じていないくせに、ジェボムとジニョンの絆は永遠だと思っている。ていうか本人が墓も隣だと言っている。墓石メイト最高にエモ。

大好きダンプラと歌のうまさがわかる動画も貼っておく。
この時期のジェボムのビジュアルが好きすぎる…!爆イケ…!


突然始まったJJP懐古厨の語りはこれで終わり。私はGOT7を応援しています!



救いはいつだって
そして내일, 오늘の次に流れた曲はなんとBTSのI'm Fine。私のスマホはとても空気が読めるようで笑ってしまった。
背中を押してくれた曲が、今度は励ましてくれる。

I’m so fine, you so fine
우리들 미래는 기쁨만
가득할 테니 걱정은 접어둔 채
이젠 즐겨 수고했어
we so fine


美味しいものを食べてお酒を飲む、雰囲気のいいカフェでコーヒーを嗜みながら読書をする、友人たちとくだらない話で笑う、お気に入りの映画や猫ちゃんの動画を見る、時間を気にせず睡眠をとる。自分の気分を上げる方法ならいくつも心得ている。


何より今の私には「BTS」がいる。
テレビやスマホの電源をつけて彼らの笑顔やステージでのパフォーマンスを見れば、癒され元気を貰え私も頑張らなければと思う。彼らの音楽に触れれば、心はときめく。私を救うのは私だけど、確実に「推し」という存在も私を救いあげてくれるから。


最強の推しを持つ私もまた、最強だ。


※このnoteを書いているときに契約に関する報道が出ましたが、タイトルや本文はそのことになんら関係はありません。


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