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全部わからなくてもいいじゃない?

スマホの素晴らしいところは、カメラを身近にしたところだ。
「あ、いいな」
と思った瞬間、ポケットから取り出してシャッターを切れる。
迷子が趣味と言ってもいい私にとって、街は未開のおもしろスポットだらけだ。
「お?」
と思うたび、立ち止まってレンズを向ける。

家の近所は古い住宅地らしく、路地が多い。
お相撲さんには、きっと通れないだろうと思える、ほそーい道が残っていたりする。
どこに繋がるんだろう?とワクワクしながら探検し、結果、新たな面白スポットを見つける。

例えばこんなの。

中身は真新しい美容室。
なのに、看板が開店に間に合わなかったのか、子どもの書き初めのような文字が入り口に貼ってある。

他にもこんなの。

イラストのインテリっぽいバナナが可愛い。
どれだけバナナ好きな人がやっているのか、と思う。

これを見て思い出したのだが、やまだ紫さんの漫画にこんなシーンがあった。

娘とバナナを食べる母。
「子どもの頃、バナナが食べたかったのに、贅沢品で食べられなくて、いつも憧れていた」
と子どもに語る。
そのたび、娘には
「お母さん、またその話?」
と言われる。
それでも
「かまうもんか、何度だってしてやるんだ、私はバナナが食べたかったんだ」
と思う。

細部は違うかもしれないが、たぶんこんな感じだった。
おそらく短編集「しんきらり」に収録されている一編だろう。
この「何度だってしてやるんだ」というのが、とても印象的だった。
バナナそのものより、バナナが憧れの果物だった時代を忘れてなるものか、という意思を感じる。
ここの人たちも、きっと「何度だってしてやるんだ」と思っていそう。

さらに、こんなの。

畑に置かれた謎の物体。
市販品では見たことがないので、自作されたのだろうか?
自転車のタイヤを四つ組み合わせた上に天板を載せている。
何に、どう使うものなんだろう?
とても気になる。

けれど、これらのちょっと不思議なものたちは、私に深掘りされることなく、きっとずっとそこにある。
なぜなら、私が極度の方向音痴ゆえ、2度と同じ場所に辿り着けないからだ。

数年後に「お?」と思って、またシャッターを切っている可能性もある。
でも、それくらいでいいのだ。
全部の謎が解明できてしまったら、つまらない。

なんでもそうだけれど、わからない部分が残っているほど、面白い。
変なものが変なまま残っている街だから、面白い。

**連続投稿721日目**

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