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アドベントカレンダー12月17日 お題「沖縄・本土」BY千夏先生

少し前に、ヨーロッパの幻の国「リッスンブール」について、皆で細部を作り込んでいく遊びがTwitterで盛り上がっていた。

ヨーロッパでは、アメリカ人が地理に疎いというのが共通認識らしい。
それを揶揄するために欧州人が「この国、知ってる?」という感じで気楽にデマを投稿した。
それが、どんどん拡散する過程で、悪ノリしたネット民により、地理、歴史、大統領などの詳細が決まっていった。
幻の国家の誕生である。
実際にリッスンブールの存在を信じた人まで出てきたらしい。

ところで、私は学生時代の5年間を北海道で過ごしている。
その時の肌感では、「なまら」「したっけ」を使いこなす生粋のネイティブ北海道人は、青森以南の地理にめちゃくちゃ疎かった。

仮に「盛山県」という架空の県について、複数の人間で盛り上がっているところを北海道人に見せたら、
「ふーん、俺が知らないだけで、内地には『盛山県』というのがあるのだな」
と素直に信じたに違いない。
北海道内のことだけでも広すぎて把握しきれないのに、海の向こうのことなど、知ったことではないのだろう。

しかも、歴史がその独立国家のような広さを後押しする。

 北海道は「外地」ではないものの外地同然であった。「外地」とは、「内地」つまりかつての日本(本州・四国・九州及び島)の法律ではなく、外地法が適用された地域(植民地)ということ。第二次大戦敗戦前では、樺太、朝鮮半島、台湾などが外地指定地だった。しかし北海道は、当時の内地とも前述の外地とも違って、開拓地として成長してきたゆえ、内地の法律も外地の法律も適用を受けず、独自の法律が多い歴史となっている。

 ●使用例:「内地とは違うからさ^」「内地の人は……」

北海道ファンマガジン

なるほど、「ホハレ峠」で有名になった徳山村の人たちの縁者も、岐阜の山奥から北海道に開拓民として移住している。
日本中が食えなかった頃、さらに貧しい土地では、次男、三男は新天地を求めて、ルール無用の大地にわたり、自分の知恵と勇気だけを頼りに生きていくしかなかったのだろう。
北海道が経済的にうまみがあると判断されるまで、試験地域のような扱われ方で「あー、ちみたちは、勝手にやりたまえ」という態度をされてきたのならば、そりゃ「内地」という呼び方にもなるだろう。

住んでしばらくは、内地という響きに慣れなかった。
何となく、距離を置かれているような気がしたのだ。
道内の人たちは総じておおらかで、まったく区別や差別の意図なく使っていたのだろうけれど、じわりと疎外感を感じる言葉であった。

沖縄の人たちも、明らかに本州と自分たちの島を区別し、「本土」と呼ぶことが多い。
沖縄にも離島は点在しており、あきらかに沖縄本島とは文化的にも経済的にも違う存在に見えるのに、そこで言われる「本土」も「沖縄本島」のことではなく、日本国の本州を指す。
ついでに、1972年の『沖縄返還』以前には、沖縄で「本国」と言えば、それはアメリカのことだった。

つい50年前まで、ドルで買い物をし、車が右側を走っていた島だ。
戦時中には、最前線として日本の犠牲を強いられてきた土地である。
沖縄の人たちが、私たちを見て
「あの人たちに、私たちの苦しみはわからない」
「あの人たちは別の人種」
と思う人がいても仕方ないし、日本人なら、それくらい甘んじて引き受けなくてはならないことだと感じている。

だって、まだ沖縄が抱える広大な基地は無くなっていないし、台湾有事の際には、もしかして西表や石垣にもミサイルが降ってくることだってあるかもしれないと、どこかで思いながら、私たちは何もしていない。
できていない。
何をしたらいいのかすらわからない。

今、国会では、防衛費を捻出するための増税が検討され、「専守防衛」の掟も崩れようとしている。
私には、それがいいことなのかどうなのか、よくわからない。

ロシアがいきなりウクライナに攻め込んだセンセーショナルなニュースを受けて、国内の軍拡の機運は高まった。
自分たちの国くらい、自分たちで守れる力は必要だと、これまでより多くの人が思うようになった。
今までだって、いろんな国や地域が、いきなり戦禍に巻き込まれていたのに、それらは、日本国内で大きく取り上げられることはあまりなく、なぜか、コロナで世界が疲弊したタイミングで起きたウクライナ侵攻だけがクローズアップされた。

陰謀論を語るつもりはない。
ただ、かつての日本がどこで誤ったのかを知っているのなら、同じような過ちを犯さないよう、毎日偏らないニュースを見て考えることだけは、続けなければならない、と思う。

**連続投稿319日目**

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