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何度でも声を聞く

当たり前のことだが。
ライターの仕事は、自分がわからないこと、納得してないことは書けない。
嘘になるから。

最近、編集さんがインタビューした音声データを元に、原稿を作る仕事を何度か任せていただいた。

インタビュー音源は、最低3回は聞き直す。
1回目は先入観を持たずに、人柄を想像しながら聞く。
わからないところには、印をつけておく。

2回目は、話している内容がわかるように、わからないことを調べた上で聞く。
その方のプロフィール、社歴、語られているトピックの詳細、専門用語など。
何度も語られたであろう面白い話は、必ずどこかに同じ話が出ているものなので、探すとすぐに見つかる。
(ということは、この話は原稿の核にはなり得ない)

ウェブも雑誌も動画も、現時点で手に入れることができる情報は全部当たる。
YouTubeはできたら、必要箇所だけでも文字起こししておくといいかもしれない。

こうして、省略された細部を補足していく。
細部の欠けが埋まって、全体が見えてきたら、インタビューの音声をもう一度聞く。
調べたことで内容がクリアになるので、1回目に聞いた時よりよくわかる。

内容がわかると、最後に残るのは「不明な思考の軌跡」であろうか。
比喩が伝わりづらくて分からなかったり、同じ経験をしてない人には共感されにくかったりといった部分がそれだ。
そこを推理し想像して、埋めていく。
(たぶん、ここが原稿の核になる)

この人は、前のインタビューではアグレッシブな考え方を披露していたので、きっとこの比喩は"攻め"の意図だろうな。
自信なさげな様子は、おそらく、記憶に自信がないだけで、自分に自信がないわけじゃないんだろうな。

まるでプロファイリングのようでもある。

テキストより、音声の方がその時のインタビュイーの気持ちがリアルに伝わる気がするので、感情をトレースできるまで何度でも聞く。

こうして捉えたその人の感情を、バラして組み直して分かりやすく伝えるために、ストーリー化する。
私の作ったストーリーと、インタビュイーの本当のストーリーが一致していれば、確認していただいた時にOKが出るのだろうし、間違っていたら朱が入る。

ストーリーを創作している時点で多少ウソになりそうなものだが、きちんと動いた感情をトレースができていれば、きっとインタビュイーが読んでも「こんなこと言ってない」とは思わないのだろう。

わからないことを決めつけたりせず、わかるまで聞いたり考えたりするこの姿勢を、子供の頃から訓練として続けてきたら、とても平和な世界が築けそうだ。

**連続投稿770日目**

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