見出し画像

遊覧船

3月も中旬を過ぎると、日本海側でも春めいた日が多くなる。
昨夜、天気予報を見ていた夫が
「久しぶりに遠出しない?」
と言った。

たまには夫孝行しようと思い、付き合うことにする。目的地は敦賀より西の海沿いの町、おおい(旧:大飯)町と高浜町。

名前は知っていても、どこにあるのかぴんと来ないマイナーな地名が並ぶので、読んでくださる皆さんの頭の整理をした方がいいだろう。
まず、琵琶湖がどの辺にあるのか、思い浮かべてほしい。
わからない人は、名古屋と大阪を直線で結ぶ。その線の中央より少し上に、どどんと存在しているのが、日本最大の湖・琵琶湖だ。
わたしが住む敦賀は、その琵琶湖の真北あたりに位置する日本海に面した町である。車で40分も南下すれば、琵琶湖の北端にたどり着ける。案外近い。

その敦賀から、海沿いに西へ向かうと、となりが美浜町、さらに西へ、若狭町、小浜市、おおい町、高浜町と来て、県境を越えると京都府舞鶴市に至る。

夫「そろそろ暖かくなってきたから、海沿いの観光も楽しいかなと思って。北上するとまだ雪もありそうだから、西へ行ってみようかと」
私「ふむ。じゃあ、船に乗りたい!」

双方の希望を叶えることにして、おおい町の「うみんぴあ大飯」というところから、遊覧船に乗ることにした。

港から小さな観光用の船が一時間に一本程度出ている。感染症予防のため、定員が普段の半分に制限されていたが、乗客は全部で9人で、定員の4分の1ほどだった。

遊覧船「わかさ」19トン 最高速度25ノット 定員46名

よって、どこの座席でも座り放題、移動し放題だ。
先頭座席、船の中ほどにある船長さんの隣の席、後尾の屋外座席と3か所をうろうろして、船の内外でも観光を楽しんだ。

とにかくメカメカしていて、かっこいい操舵席

「かっこいいですねえー! こんな船を操縦出来たら楽しいだろうなー、すごいなー」
と船長さんに言い続けていたら、20トン以下の船なら、2級船舶免許で運転できることを教えてくれた。取得するのもそんなに難しくないという。自分のボートで釣りに出るというのも悪くない。いつか小型船舶の免許も取りたいという野望ができた。

さて、今日の観光ルートについて少し説明を。

黄色:大島半島観光ルート ピンク:蘇洞門観光ルート

半年ほど前、小浜市まで電車で遊びに来た時、遊覧船で蘇洞門(そとも)と言われる奇岩がならぶ名勝を観光した。それが地図のピンクのラインだ。今回はおおい町から、大島半島の先端にある大飯原発まで向かい、その少し先の「髻(もとどり)島」でターンして戻ってくる黄色のルートを行く。

どちらのルートも見てのとおり内側にグイっとえぐれた湾内を通る。そのため日本海の荒波の影響を受けず、穏やかで船酔いの危険も少ない。遊覧船観光には最適なルートだ。

大飯原発

大飯原発は、半島の先端の、町から見えない山の影にひっそりとあった。
3.11のあと、日本国内の原発はすべて稼働を停止したが、その後しばらくしてから「新たなチェック項目をクリアする意思を表明し、再稼働を希望する」施設から稼働を再開した。

その「新たなチェック項目」として加わったのが、テロ対策だ。

「そんなの、本当に必要なのかしら?」とずっと思っていたが、ロシア軍によるウクライナの原発攻撃というニュースを見て、他人ごとではないな、と思ったばかりだった。なので、大飯原発のどれがその「テロ対策用の建屋なのか?」と観察したのだが、さっぱりわからなかった。(わからなくて当然。2022年3月12日現在、まだテロ対策建屋は存在していない

髻(もとどり)島で釣りをする人。実はこのあたりは釣りのメッカ
髻(もとどり)島が波に侵食されてできたトンネル
正面の山は久須夜ヶ岳。蘇洞門は、このふもと。左の半島の先端を回り込んだところにある

船は予定通り、髻(もとどり)島で向きを変え港へ戻った。往復約一時間の船旅。風はなく、陽ざしも穏やかで気持ちがよかった。

降りるとき、ずっと気になっていた後尾の「国旗」について、船長さんに訊いてみた。国民の祝日でもないのに、国旗をはためかせているのは、わたくしの田舎では「右翼」一択だったから。恐る恐る質問すると、国籍を明示するためにつけているのだそうだ。

本当は20トン以下の船は国旗をつけなくてもいいのだけれど、お客さんを乗せている以上、何かあっては怖いので国旗を掲げて日本の船であることをアピールしているのだとおっしゃっていた。

海上保安庁より

穏やかな春の旅だったのに「どこかで戦争している人がいる」と思うと、どうしても「そういう出来事」に意識が引っ張られる。

しばらくは、どこで何をしていても、ウクライナのことを考えてしまうのだろうな。

**連続投稿42日目**


最後まで読んでくださって、本当にありがとうございます。 サポートは、お年玉みたいなものだと思ってますので、甘やかさず、年一くらいにしておいてください。精進します。