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路面電車

規則正しい遅寝遅起き生活を貫いている。
いつも今頃の時間から元気になって活動し始める。

松山の市営プールは夜9時閉館。
私は、夕飯後の8時少し前から閉館ギリギリまで泳いで帰ってくることが多い。
そこでようやく目が覚めて、スイッチが入る。

プールまでは、バイクで10分少々。
夜は渋滞もなく、スイスイ進むので気持ちいい。

遅い時間に街を走っていると、乗客のまばらな路面電車が暗い住宅街の間を、窓に灯をともして走っているのに行き合う。
よく探せば隅の席に、千尋とカオナシが座っていそうだ。
古い型の路面電車は、とても風情がある。

この町の若い子は、原付バイクか自転車移動が多いので、路面電車にはお年寄りか観光客しか乗っていない。
昼間はそれに、妊婦さんや赤ちゃんを連れたお母さんも加わる。
レトロな木造車両と、この中だけ異質な人口構成に、なんとなく昭和を感じる。
「動ける男は、みんな戦争に行ってしまった」
おばあさんの疲れた寂しい目が、そう言っている気がする。

信号が変わると、電車は右へ私は直進してプールへ。
妄想は終わり、乗客は令和を生きる人たちに戻った。
これから家に帰って、シャワーで汗を流して、エアコンの効いた部屋で眠る人たちだ。

わずかな間に、体験したことのないノスタルジーまで感じさせてくれる。
路面電車ってなかなかすごい乗り物だと思う。

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