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行き当たりばっ旅 #来島海峡大橋

目覚めたら10時。
私にしては、かなりの早起きだ。
外は晴れて、日差しも暖かそう。
仕事も、急ぎのものは無い。
これは「遠出してきなさい」という神の声だろう。
朝食を済ませ、以前から気になっていた「伊予の国一之宮」である大山祇神社(おおやまづみじんじゃ)に行ってみることにした。
しまなみ海道を通って2時間もあれば、着けそうだ。
問題なく日帰りできるだろう。

は、

サイクリスト憧れのしまなみ海道。
海の上を走るなんて、ワクワクしかない。
バイクを走らせること一時間強、今治市のしまなみ海道入り口インター看板を見つけた。
ほっとしたのもつかの間、次の瞬間、鼻から魂が抜けるくらい驚いた。
「自転車及び、125CC以下の原付、進入禁止」
と書いてある。
進入禁止と言われても、じゃああのテレビでよく見る、海の上を走る自転車旅の人たちは一体どうやって、橋の上に登ったのだ?
まさか橋脚を自転車抱えてよじ登ったわけではあるまいし。

そこで、近くにあったガソリンスタンドで道を聞いてみると、車の入り口から山側へ2キロほど離れたところに、原付、自転車、歩行者専用の入り口があるという。
下図で言うと、グレーの道路がしまなみ海道、
①が自動車の入り口、
②が原付、自転車、歩行者出入口なのだ。

目立つ看板などは一切ない。
わかるかーい!である。
気を取り直して、「糸山公園」と書かれた看板の方向を目指して進むと、自転車2台がギリギリすれ違えるほどの幅の入り口を発見した。
よし、いざゆかん。

海の上にかかる真っ白な吊り橋は、青空を背景にとても美しかった。
今治から尾道に向かうルートで、最初にわたることになるのが、この「来島海峡大橋」である。
写真ではよくわからないと思うが、海面はところどころ渦を巻いている。
瀬戸内は海のくせに、潮の満ち引きで川のような激流が生じており、それが複雑な海底のあちこちにぶつかってぐるぐる渦ができているのだ。
鳴門の大渦潮ほどの規模は無いが、見ていると惹き込まれそうになる。

来島海峡は昔から鳴門海峡、関門海峡と並んで海の難所として有名です。狭い海域に複雑な地形が作る潮の流れは、速く複雑に変化をしており、最大潮流速は10ノット(秒速約5m)にも達します。

来島海峡大橋

落ちたらどうなるのかな、とぞくぞくしながら下をのぞき込めるのも、原付バイクで橋を渡る楽しみだ。

ところが、私の旅は最初の島でいきなり挫折することになった。
橋は続いているのに、バイクが通れる道が無いのである。
どういうことか。
つまり、こういうことだ。
橋は、海上のみ自転車バイク歩行者の通行が許されており、地面があるところはちゃんと地面を行きなさい、という設計になっていたのだ。
さきほど②の入り口から橋の上に出た私は、大島に着いたとたん「はいここからは、島の中のサイクリングロードを走ってくださいね」と橋から降ろされてしまったというわけである。(下図③のポイント)

しまなみ海道というのは、乗ったらそのまま本州まで一気に渡れるものかと思っていた。
全然ちがった。

予定外の出来事に、あわあわしながら長く細い坂道を下っていくと、つきあたりのT字路には「←尾道」の案内が出ていた。
この誘導に従えば、次の橋への入り口は、きっとわかるだろう。
しかし、まさか途中下車があるとは思っていなかったので、ここで考え込んでしまった。

目的地は、二つの島を越えた先だ。
当然、二つの橋をわたることになるが、おそらく、次の橋もわたり切ったところで、また強制途中下車が待っているだろう。
橋の上は、時速30キロ制限がある。
カーナビだよりでここまで来たので、スマホの充電は30%を切っている。
再度検索してみると、到着予定時刻は15時過ぎ。
帰宅する頃にはきっと真っ暗だ。

「だめだ、たとえ神社に到達できても、帰れる気が全くしない」
私はあきらめて、今来た道を引き返すことにしたのだった。

帰宅後見つけたのがこちらの地図。
島内のサイクリングロードと橋への「IN/OUT」がすべて掲載されている。
素晴らしく便利!

しかし、ここで「なんてこった。事前に調べて行けばよかった」と思うかというと、全くそんなことはなく、知らないところに適当に突っ込んで、トラブルで撤退してくるその過程がいつも面白い。
次は何とかなるだろう、と思っている。

同行する人がいる時は、さすがに迷惑かと思うので、あまりやらないようにしているが、1人の時はだいたい行き当たりばったりだ。
予定や計画を立てるのが苦手だというのもあるのだが、先が見えないほうが面白いという、ダメな人の思考が身についてしまっている。

夫は、そんな私を見て
「いつか死ぬぞ」
と言うのだが、これはいったいどういう意図なのか。
人は100%「いつか死ぬ」じゃないか。
一番大事な、いつ死ぬかを決められないのに、それ以外の細かいことを予定を決めてこなしてみたとて、それの何が楽しいのか。
トラブルはいつだって、過ぎれば楽しいのに。

**連続投稿741日目**

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