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尊敬するに値すること

全く面識のない方のThreadsの投稿写真の中に、とても共感するワードがあったので、これを元に今日の記事を書いてみようと思う。

こちらの写真は、どう見ても品川駅の広告ではないだろう。
おそらく、投稿された方が創作した「月曜の朝を鼓舞するワード」が並んでいるのだと思われる。
この中の1つが、私がかつて、小学1年生を見て感じた想いを表している。
「朝ちゃんと起きてるとか、天才なんか?」
がそれである。

もう15年以上前のことだ。

私は、地域の小学校の「読み聞かせボランティア」として、毎週1回授業が始まる前に、自前で絵本を用意して通っていた。
読み聞かせボランティアは、子どもたちが新生活に慣れた頃スタートするのが常だったので、たいてい2学期から始まっていたと思う。
その時、通っていたのは小学校1年生のクラス。
本が好きな子にとっては、絵本では物足りないだろうし、本に触れたことがない子にとっては、少し長いストーリーものだと理解が追いつかない。
なかなか選書に気を使う作業であった。

当時のその小学校では、ボランティアであろうが、PTAの委員会活動であろうが、保護者が学校に行く時には、徒歩、または自転車であるべし、とされていた。
小さな学校で駐車場の数も少ないし、車での登校をOKにしてしまうと、運動会の時など学校の周囲で大渋滞が起きかねない。
ゆえに、子どもの怪我や体調不良などの緊急時以外、車での登校は許されていなかったのだと思われる。

私は当時、仕事らしい仕事はしておらず、怠けた暮らしをしていたので、ちょっとした外出にも車を使うことが多かった。
我が家は学区のはじにあり、徒歩だと30分かかるため、できれば学校まで車で行きたい。
特に、冬の寒い時期には、誘惑に負けそうであった。
しかし、子どものいる場でのルール違反は許されない。
誰が許しても、私が私を許せない。
自分を戒め、非電動のママチャリを漕いで、学校まで通っていたのである。

その日も読み聞かせボランティアがあり、前日から本を用意していたのだが、起きたら雪が積もっていた。
なんてことだ、自転車が使えない。
私は、鼻水も凍りそうな寒さの中、長靴を履いて歩いて学校に向かった。
そして、教室のドアをガラリと開けて、子どもたちの顔を見た瞬間、思ったのである。

「え?!いつも通り?! こんな日にも、朝ちゃんと起きてるなんて、天才なんか? 君たち、ちょっと前まで幼稚園児だったんだよね? 7年前まではまだお母さんのお腹の中にいたんだよね? そのちょっと前は、この世に影も形もなかったんだよね? なのに、このクッソ寒い中、こんなに小さいのに、ちゃんと起きて、文句も言わずに自分で歩いて学校に来るなんて、偉すぎでしょう! すごすぎるよ」

それは本当に、心からのリスペクトと感動で生まれた想いだったのだが、

「こんな寒いのに、ちゃんと学校に来てるなんて、君たちなんて偉いの!」

と涙ぐみながら言う私に、子供たちはきょとんとしていた。

そりゃそうだろう。
学校に行くのが当たり前だと思っている子には、その当たり前を褒められたところで、響くわけがない。

しかし、世の中にはそれができない人もいるのである。
おそらく自由業の人たちの大半はそうだろう。
なんとか普通の人の仮面を被って、学校卒業までこぎつけたものの、大人になったらもっと自分のペースで暮らしたいと思った人たちが、朝起きなくていい仕事についているのだろうと思う。

朝起きて、学校に行く。
それはものすごく尊敬に値する偉業なのだということを、本人たちはもっと自覚してほしい。

そして周りの人たちは、「学校に行けない」ことを、もっと普通の「そりゃそうだよね、あんなすごいこと、毎日できないよね」と思ってくれたらいいのにと思う。
「できるのが普通」なんじゃなくて「できるのが奇跡!」くらいの扱いならば、もう少し肩身を広げて休めるのにね、と思うのだ。

**連続投稿775日目**

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