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子どもは本当に「静かに」溺れる

今日、子どもが溺れて救急車で運ばれる現場にいた。

運ばれたのは、おそらく県外からの海水浴客。男二人、女二人、子ども一人という構成の家族?親族といった感じ。

私は砂浜から20メートルくらい沖にあるテトラポッドで魚を探して泳いでいた。

なんか騒がしいな、と思って顔を上げると砂浜の方で男の人が「れおな(仮名)が沈んでる!」と言って子どもを抱き上げていたところだった。

子どもは小学生の女の子。私が海に入るときには、腕に浮き輪をはめていたのを見た記憶がある。

でも、邪魔で取っちゃったみたいで、その間にちょっと深いところで砂に足を取られてひっくり返ったのだろうか。

あとで救急隊員さんに
「第一発見者は誰ですか?」 
と聞かれて、
その男の人が見つけたときの状況を話していた。
「あおむけに海の底にいて、え?!と思ったんですけど、この子泳げなかったんで、あ!沈んでるんだ、と思って」 

ビーチに人がいない上に波もないので、会話が全部聞こえてしまう。

その人は溺れた子の叔父さんに当たるのだろうか。たぶんまだ20代。

れおなちゃん(仮名)のお母さんは、れおなちゃんを抱き取ると、半狂乱になって名前を呼び続ける! 

「しっかりして!れおな!誰か、れおなを助けて!救急車呼んでください!」 
泣き叫ぶ声がすごくて、人家から何事かと人がわらわら出てきた。

れおなちゃんは、どれくらい沈んでいたのか、大量に水を飲んでしまったらしい。意識はあるし、呼吸もしているけれど、泣き声の合間に気持ち悪そうに「グェッ」とか「がぼっ」とか戻す音が混じる。

たぶん、お母さんのお母さん(れおなちゃんのおばあちゃん)らしき人が、救急車を手配し、電話で応急処置を聞き冷静に対応していたが、よほどれおなちゃんの顔色が悪かったのか、「死なないでー!!」と絶叫するお母さんの声が電話の妨げになったらしく「静かに!」と一喝されていた。

救急が到着し一通りの状況を確認すると、れおなちゃんを運んでいったが、「ドクターヘリに載せるから」と言っていたのが聞こえたので、たぶん敦賀では対応できないのだろう。

一連の事件が起きたのは、由緒ある神社の前のビーチ。でももともと、海水浴場でも何でもない。地元の人たちが泳ぎに来るところ。当然、ライフガードも何もいない。子供一人に大人4人という布陣で起きた事故。

静かーに沈んでいたので、誰も気づかなかったようだ。目を離さないことも当然なんだけど、やっぱりチビにはライジャケを着せて欲しいと思った。少なくともライジャケがあれば沈まない。

私は小学生のころ、鹿児島の錦江湾(桜島のまん前)で泳いでいてちびっこの水難事故に行き合ったことがある。

その時は何度も「迷子のお呼び出しをします」とアナウンスが流れて、それが全部同じ名前だったので覚えてしまったのだけれど、翌朝の新聞にその名前が「海水浴に来て溺死」と出ていた。

錦江湾は桜島の火山灰がモロに溜まっているので常に泥っぽいというか視界が効かない。子どもが沈んでいても誰も気づかない。なんか柔らかいものを踏んだな、くらいで気にしない。恐ろしいことだ。

今回は日本海の透明度に救われたと思う。れおなちゃんの回復を祈るばかりだ。

それにしても、地元のおじいちゃん、こんなときにとんでもないことを言い放った。

「県外から来た奴らが、海水浴場でもないところで、海をなめて事故に遭って、地元の医療資源を使いよる。海水浴場はやってないっていってんだから、来る方が悪い。来るな」

言いたい気持ちは分からんでもない。コロナじわじわ迫ってきてるしね。でもさ、そこは人として第一声は「無事でよかったですね」じゃないの?と思った。

おじいちゃんのストレスの根っこは、ほんとはそこじゃないでしょ?変な八つ当たりばっかしてると、ろくなジジイにならないぞー。

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