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2022.8.16 新日本プロレスSTRONG SPIRITS Presents G1 CLIMAX 32 DAY18 試合雑感

◼️ 第1試合 30分1本勝負 
『G1 CLIMAX 32』Dブロック公式戦
ウィル・オスプレイ vs ジュース・ロビンソン

オスプレイの空中技とジュースのラフが噛み合った好試合でしたね。ヒールターン以後のジュースはいまいちインパクトを残せておらず普通のレスラーにデチューンされてしまった感じも否めないのですが、定まっていないのは方向性だけであり、裏を返せば基本的な荒々しさとヒールムーブはソツなくこなせているのもあって、高望みをしなければ普通に見られる試合ではあるんですよね。そこにオスプレイのリズムとハイフライヤー性が加われば75点は固い試合だなと。場外鉄柵ネックブリーカーをジュースの腕を抱えつつ自らもジャンプすることでダメージを減らしたのは芸コマでした。

コーナーをショートカット(そうとしか形容の仕様が無い)してのサンセットフリップパワーボムが前半戦のハイライトで、これは最近の新日主流のエプロン直置きパワーボムになりましたが、これを見るとバーナードvs井上亘でよく見た直接エプロンに叩きつけるパワーボムが懐かしくなっちゃいますねw

それはそれとして、ヒール・ジュースはナックルよりパイルドライバーと言った原始的かつ喧嘩ファイトらしい技の方が印象に残っており、場外パイルからの直下式パルプフリクションは終わったと思わされてしまいました。良くも悪くも新技であるザ・ロックスライドが浸透しておらず、それがかえってパルプフリクションの価値を担保することになったのは僥倖でしょうか。しかしながらそれが逆にフィニッシャーを出しても勝てない絶対性の弱さになっている部分もあり、本当に難しいですね。ただ、その技にいかせずにすぐさまヒドゥンを抜いて勝利をかっさらったオスプレイのドライブ感は素晴らしく、蓋を開けてみれば良試合だったなと素直に称賛を送りたいです。

◼️ 第2試合 30分1本勝負 
『G1 CLIMAX 32』Dブロック公式戦
鷹木信悟 vs エル・ファンタズモ

ファンタズモのファイトスタイルは膨張力があり、浮ついていながらも拡散と収縮を一気にやるせいか独自の世界観があるんですよね。この試合のファンタズモの無重力感も素晴らしく、三角飛びプランチャにトップロープからのラ・ケブラーダ。セントーンにライオンサルトと、外×外で拡散させた後に、内×内の飛び技二重奏でキュッと締める配分が絶妙でした。

アピールこそキャンセルの憂き目に遭った鷹木ですが、トペをグーパンで迎撃してのアピールは盛り上がりましたね。しかしながら最後はサドンデスからの変形パイルドライバー「CRIII」でファンタズモがまさかの勝利。オスプレイのアシストというのも奇妙ではありますが、対ヘビーの新技初披露込みで納得の試合運びでした。

◼️ 第3試合 30分1本勝負 
『G1 CLIMAX 32』Cブロック公式戦
後藤洋央紀 vs "キング・オブ・ダークネス"EVIL

今日の後藤は反則に対してのスーパーアーマーぶりが凄くて、持ち前の頑強さを受動的ではなく能動的に使えていたのが良かったです。前のザック戦もそうでしたが、見たいのは「耐える」後藤ではなく、このような「攻める」後藤であり、こう言っちゃなんですが負け試合で弱々しさを見せないのって結構大事なことだと思うんですよね。ただでさえ情けないイメージが付き纏いがちで、またEVIL相手で後手に回り過ぎた結果のあれやこれやを見て、攻める比重を増やしてきた工夫が光りました。

しかしながら光が強くなればなるほど闇は濃くなるのが世の常であり、抗えば抗うほどに、そのヒール殺法のバリエーションも指数関数的に増えていきます。最後は隙を見てのディック東郷高速乱入からの金的→無慈悲なEVILで後藤、轟沈!応援していただけに個人的な落胆は大きかったですが、このリーグ戦を通じて醸成してきたベビー要素を敢えて黒く塗り潰すことで、EVILのヒールとしての面目躍如にはなったかなと思いました。ただですね、オスプレイ進出と試合順で、あらかた結果が分かってしまうのはいかがなものかと……。せっかくのG-1ブランドですし、もう少し冒険してもいいんじゃないかなという負け惜しみがちょっとだけありますw

◼️ 第4試合 30分1本勝負 
『G1 CLIMAX 32』Cブロック公式戦
内藤哲也 vs ザック・セイバーJr.

二分足らずの秒殺劇!こうしたシングル戦オンリーだと、どうしても尺の都合上薄くなりがちな試合があるのですが、挑発合戦からの切り返しの応酬をノンストップでやることでギュッと濃縮したのは上手いですね。試合の良し悪しというよりは興行のバランスとして見事といった感じであり、また試合のトーンが前の三試合とはしっかり変えてスタイリッシュかつスピーディーだったのが良かったです。勝負を制したのは内藤で、変則的な首固めで押さえ込んで勝利。ピンフォール勝負で負けたザックは悔しいでしょうね。

や、それにしても試合後のしつこい挑発は内藤のファンか否かで相当印象が変わると思います。僕はわりと内藤は好きなほうではありますが、心証は最悪の一語でしたwブチギレザックはみのるっぽさがあったのと、ああした悔しさや憤りがコミカルに消費されるのはちょっと耐えられないですね。まあそれはそれとして、寝かせに寝かせた内藤vsオスプレイ戦がようやく決まったのは嬉しいです。吉と出るか凶と出るか。いずれにせよ楽しみですね。

◼️ 第5試合 30分1本勝負 
『G1 CLIMAX 32』Bブロック公式戦
石井智宏 vs SANADA

これはSANADAの完敗でしたねえ……。悪い試合ではなく、むしろ今回のSANADAのリーグ戦では屈指の良試合だと思うのですが、石井の土俵に乗り過ぎた気がします。SANADAは本当にムラっけがあり安定しているようで安定感に欠くのですが、器用が故に合わせすぎるのが逆に足を引っ張っている気がします。才能があるが故に目立つ瑕疵で、たとえば打撃で動じない石井に対してのローリングエルボーは対策にはなっていても有効札としては機能しておらず、当然の話、対応してもそれが相手の得意分野である以上、そこで上回るのは無理なんですよね。石井の投げっぱなしドラゴンに対して繰り出した投げっぱなしタイガーは引き摺り出された印象が強く、頭から落とすだけがプロレスでないならば、その文脈には乗るべきではないんですよ。SANADAの思想には共感するだけに、何かしらの「芯」が欲しいものです。それが新たな代名詞技に繋がるのであれば分かりやすいですが、あと一歩。あと一歩なのは間違いないとは思うのですが、その一歩は近いようで遠く、才能があるだけに答えを見つけるのは容易ではないと思います。

◼️ 第6試合 30分1本勝負 
『G1 CLIMAX 32』Bブロック公式戦
タマ・トンガ vs ジェイ・ホワイト

タマちゃんのバレクラを巡るストーリーは以前も書いた通りのゴールデン洋画劇場ばりの大河ドラマであり、物語性なら一番だと思います。それによる後押しと主人公力は熱を帯びさせるのに十分で、単純な熱量なら今大会No.1だったと思いますよ。ほぼロックボトムの裏投げを切り返してのヴェレノは素晴らしいカウンターでしたし、シュプリーム・フロー前の高まり具合は最高だったと思います。

最後は不発に終わったガン・スタンを無理やりねじ込むようにして続けて放って執念の勝利。脈絡が繋がりにくい、かなり強引な一撃ではあったのですが、それが逆にセオリーを読んで外してくるジェイの裏をかいたという意味では非常にリアルな一撃であり、全てを上回ってくる鬼才ジェイに対して躍動感という身体ポテンシャルの一点突破で倒したというのは少年漫画感もあって個人的には納得の勝利でした。

◼️ 第7試合 30分1本勝負 
『G1 CLIMAX 32』Aブロック公式戦
ジョナ vs バッドラック・ファレ

巨漢同士の試合って尊ばれるほどいいものばかりではなく、相手を相当に選ぶものであることが如実に伝わる一戦でした。超重量級同士の試合が今の新日では珍しいという点を差し引いたとしても、それだけで加点するほど甘くはなれなかったですね。この試合で一定の評価が得られるのであれば、その昔に行われたレスナーvs曙はもっと評価されてもいいかもしれません。

ファレをパワーボムで投げようとするシーンは一番期待した部分であり「まあ、無理だろうな……」と現実に帰ったシーンでもあり、巨漢同士の試合ってどれだけつまらなくてもアメージングなシーンが一つでもあればそれだけで100点を取れるほどのピーキーさがあるんですよね。せめて一つだけでも度肝を抜くシーンがあれば……と思ってしまうのは贅沢でしょうかね。最後はジョナが圧殺して勝利。対ファレは色々と難しいですね。

◼️ 第8試合 30分1本勝負 
『G1 CLIMAX 32』Aブロック公式戦
オカダ・カズチカ vs ランス・アーチャー

アーチャーは規格外です。個人的にはモンスターブロックの中の外国人選手の中では一番評価が高く、佇まいやオーラ、空気感だけで他を圧倒しているんですよね。ほとんどアメリカンバッドアスと墓掘人のいいとこ取りというか、ジェネリック・テイカーじゃないかと思わなくもないですが、これだけ空気を掌握できるならメインを任されるのも納得です。

仁王立ちで期待感を極限まで高めてからの奇襲のハイアングルチョークスラムは素晴らしく、旋回式のスクラップバスターもド迫力。鉄柵へのキャノンボールにヤングライオンボディスラム、オールドスクールムーンサルトアタックと、まさに大盤振る舞いであり暴れっぷりが最高でしたね。

対するオカダも早々にレインメーカーを抜き放ち、チョークスラムカウンターのドロップキックという普段の逆再生という変拍子を見せます。しかしながらアーチャーのバズーカ砲のようなドロップキックに、掟破りのレインメーカーは突進式で当たりが強く、完全にオカダのイメージを消しにかかりましたね。ブラックアウトも完璧に決めますが、これはオカダが十字架固めで切り返す小技を見せます。膝裏を崩しての頼みの綱のマネクリは面白い掛け方でしたが、それも通じず。

最後はドロップキックでアーチャーを迎撃すると、再度突っ込んできたアーチャーをカウンターのオカダドライバー。そのままレインメーカーで辛くも勝利をモノにしましたが、インパクトで上回れたとは言えず、かなり苦しい勝ち方になりました。上背を活かして叩きつけるレインメーカーは相手に身長で上回れると技としてはかなり苦しく、首元を横から跳ね飛ばすようになっていましたし、アーチャーも縦回転ではなく足を横に流す感じで崩れていましたね。あれはあれでキツそうではありますが、レインメーカーは後頭部を叩きつけることで総合的に完成するわけで、これが崩れたのが痛かったですね。

とはいえ、レインメーカーの絶対性や神話性を飲み込んだアーチャーの怪物ぶりたるや。ぶっちゃけ無敗でも良かったんじゃないかと思いました。Aブロック永遠の一位は僕の中ではアーチャーで間違いないですし、トリを努めただけで応援していた気持ちが報われた気がしました。もっと見たいですし、難しいかもですが、世界ヘビー巻いて欲しいですね。





濃密なシングル戦の果てに、ようやく四強が出揃いました。順当かつ読み易くはあっただけに意外性を期待しましたが、決まった以上あとは見守るだけですね。残すところあと二日。傷心もありますがこのまま走り抜けていきましょう。ではでは、また明日。

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