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よもやま話番外編。トマトの卵炒め〜西紅柿炒蛋〜

西紅柿炒蛋(シーホンシーチャオダン)またの名を蕃茄炒蛋(ファンチェチャオダン)と呼ばれる中華料理がある。日本語で言うと「トマトの卵炒め」であり、現地だと日本人受けする料理の一つなのだが、不思議と日本国内ではマイナーで、食べたことのない人も多い。国内だとトマトは基本サラダに使われることが多く、生で食べるイメージが強いため、痛めるという発想がなかなか思い浮かばないのだろうか。かくいう僕もTwitterで知ったのが初で、一度作ってからというもの、その味にやみつきになり、暇を見つけてはちょこちょこと作っている。ググれば作り方はいくらでも出てくるが、わりと聞かれることが多いため、今回は自己流の作り方を簡単に記そうと思う。

・材料 2人前

卵(3〜4個)
トマト(2個)
油(大さじ4〜5)
塩(少々)
砂糖(少々)
紹興酒(小さじ2〜大さじ1)

上記の分量は2人分。材料はこれだけである。基本の味付けは塩と紹興酒で、あとは卵とトマトだけ。なのに驚くほど旨味が強く、米に合うのだ。

・準備

1.トマトをくし切りにする。

トマトのヘタを落とし、放射状に8等分する。4等分でも構わないが、僕は米に乗せて丼にすることが多いため一口分の量を減らしたいのと、火が通りやすいというのもあって8等分にすることが多い。トマト1つの卵2つが一人前の分量で、食べる人数に合わせてトマトや卵の数を調整しよう。食感を優先するなら皮は湯剥きしたほうがいいが、皮にはトマトの栄養価の一つであるリコピンが多めに含まれており、また炒める時に皮のめくれが火の通り具合を測る基準にもなるため、僕は皮付きのまま炒めることが多い。まあ、単に湯剥きの手間が面倒臭いだけとも言えるが、ここは個人の好みだろう。

トマトの選び方だが、身が締まっていることが条件で、ヘタが枯れておらず、なるべく青々と伸びきったものを選ぼう。また、買う時は手に取ってお尻を見て、星型に放射状に白く伸びているやつが好ましい。そういう意味ではパックで買わず、バラで買うのが一番である。手にとってみて、皮が傷ついているのは避けるようにしよう。

2.卵を割り入れて溶き卵を作る

大事なことだが、トマトに比べて卵を多くするのがコツである。トマト1つにつき卵は2つ。トマト2個なら卵は3つ、といった具合にだ。基本的にはトマトの数+1が卵の数の目安である。トマトの大きさにもよるが、今回は3人分で、なおかつ選んだトマトが大きかったため、トマト3つにつき卵を5つ使った。

卵を割り入れたら、塩を少々と紹興酒を小さじ2〜大さじ1を入れて卵液を溶く。卵3つなら小さじ2、それ以上なら大さじ1で。紹興酒がなければ日本酒でも構わないが、紹興酒を使うと抜群に風味がよくなる。旨味も増すため、できるなら酒屋でミニボトルの紹興酒を買って使うのが一番である。あとで塩気は調整するので、卵には強めに塩を振りすぎないように。

・調理

3.フライパンに油を引く

油を大さじ4〜5入れ、フライパンを熱する。火加減は強火で。油の量にドン引きするかもしれないが、以前の「チャーハンよもやま話」の時にも書いたように、中華の基本は大量の油である。トマトの卵炒めは油多めで作るほうが失敗がない。

4.卵を入れて炒める

熱したフライパンから煙が立ったら、先ほど溶いた卵を一気に流し込む。写真の通り、縁が一気に泡立つくらいフライパンを熱するのがコツらしいコツだ。

入れたら強火のまま火加減を落とさず、すぐに間髪いれずにフライ返し、もしくは菜箸でかき混ぜながら半熟になるよう炒めよう。そして上記の写真ぐらいに火が通ったら、すぐに用意しておいた別の皿に空ける。きっちりフライパンさえ熱していれば、時間にして十秒足らずである。炒めたら一旦皿に空ける。これがトマトの卵炒めを作る上で一番大事なポイントであり、これを省いてここにトマトを投入してしまえば、トマトの水分が出て綺麗に炒めることができず、確実に失敗してしまう。卵を炒めたら皿に空ける。どれだけ面倒でも、この手順だけは絶対に省略しないで欲しい。

このように、卵が半熟になったら用意した皿に空けて、しばらく置いておく。注意したいのは、余熱で火が通ってしまうため、気持ち早めに皿に空けるのが大切である。

5.トマトを炒める

空いたフライパンにあらためて油を引き、またしても強火で今度はトマトを炒めていく。油の量はフライパンに残った油の量にもよるが、大さじ4〜5が目安である。基本は油は多めで炒めることを忘れずに。トマトをいれたら砂糖をほんの少しだけパラパラとふりかけ、ついでに塩も少々振りいれる。この時に気をつけたいのは、あまり強く塩を振りすぎないことだ。砂糖もそうだが、軽く振りかける程度に留めておく。塩気はあとで調整できるし、塩は基本的には不可逆の存在である。いれすぎると取り返しがつかない。

6.トマトの皮がめくれるまで炒める

写真のように、トマトがクタッとなるまで強火でしっかりと炒めよう。あまり弄るとトマトの形が崩れてしまうため、ひっくり返すのは一度だけ。

アップにするとこんな感じである。これぐらいが炒め終わりの目安である。これ以上炒めるとトマトが崩れてグズグズになってしまうため、トマトの形が残っている状態が望ましい。この状態になったら先ほど炒めておいた卵を投入する準備をしよう。

7.卵を投入する

炒めておいた卵をフライパンに投入して、混ぜ合わせながら、フライパンを煽っていく。

このように、トマトの旨味を卵に吸わせるイメージで、鍋底から返しながら、強火で一気に炒めていこう。

トマトと卵が綺麗に混ざり切って炒め終えたら、仕上げに全体に塩をふりかけて、塩気を調整する。ここはほぼ感覚だが、必要なければかけなくていいし、よくわからなければ控えめにすればいい。足りなければ、食べる時に足せばいいのだ。当たり前のことだが、これは意外と見落としがちなことであり、味付けの失敗は大抵やりすぎてしまうことが原因である。怖ければ無理をせずに引くことを覚えよう。

以上でトマトの卵炒めは完成である。皿に盛って食べるのもいいが、個人的なオススメは丼に盛ることである。トマトの卵炒めは米との相性が抜群であり、トマトと卵の汁気と合わせて口に運べば、その味の深さに驚くだろう。それはまさに旨味の爆弾であり、トマトと卵だけでここまでの味が出せることに感嘆のため息を漏らしてしまう。米はなるべくかために炊いておくと、トマトと卵炒めのポテンシャルを完全に引き出すことができる。ビールとの相性も抜群だ。好みで、仕上げにネギを振りかけるなり、ラー油を足すなり、胡椒をかけるなりすればいい。

最後にトマトの卵炒めを作るためのコツを簡単にまとめておく。

・火加減は終始強火
・油は多め
・卵を炒めたら一旦皿に空ける
・トマトはクタッとするまで炒める

これがポイントである。あとは練習あるのみだが、この手順を守れば思ったより簡単に作れるはずだ。健闘を祈る。

トマトの卵炒め。それは日中友好の架け橋であり、一度作れば老若男女問わず夢中になる最高の料理である。トマトと卵。それさえあれば他にはもう何もいらない。

#レシピ #中華

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