2024.8.3 新日本プロレス G1 CLIMAX 34 大阪・大阪大和大学大和アリーナ DAY9 試合雑感

◼️第5試合 30分1本勝負
『G1 CLIMAX 34』Aブロック公式戦
カラム・ニューマン vs ジェイク・リー

鳴り物入りの参戦のわりにはいまいち勝ち星の伸びてないジェイク。知能犯の計略が徐々に狂っていくのはゾクゾクしますし大河ドラマを感じさせるものの、まだ方向性が不明瞭なのと以前の二代目・マット界の帝王の如き強さを知っていると物足りないのも事実であり、まだ新日では名勝負がないのもあってこれから先が気になりますね。良くも悪くも以前のイメージが根強く、そうした見られ方をしているのがやや足枷になってるのかな、とも。

カラムのスピードに張り合う形でジェイクもスピーディーに応じつつも、カラムの挑発には応じない。と、思いきや即座にブチ切れる荒々しさ。それでいてクールでありスマート。やっぱり悪役としては一級品なだけに相応の「格」を求めてしまう気持ちは分かりますね。

一見するとキャリアや実績の差もあってスカッシュマッチめいた感じになるのかと思いきや、意外と手が合うこの両者。スピードとリズム感がかなり綺麗に噛み合ってるんですよね。あとカラムの方向性というか、キャラクターがジェイクめいてても面白いのでは……と思ってしまいました。こんな感じで戦う相手に自分の未来像を感じることもあるからプロレスは面白いものです。

カラムは一気呵成に攻め立てますが、オスカッターをチョークスラムで切り返すと、続くチョークスラムはフランケンでカラムがカウンター。往復ハイキックを見せるもジャイキリで動きを止めると、最後は問答無用のFBSでジェイク勝利。最後は強引かつややガチャついた印象もありますが、試合のテンポ感やリズムは心地よかったです。

◼️第6試合 30分1本勝負
『G1 CLIMAX 34』Aブロック公式戦
グレート-O-カーン vs “キング・オブ・ダークネス”EVIL

地味に2人とも支配者タイプのキャラなんですよねw公式戦の一試合よりPV含めてじっくりとした支配者対決を見たい気もありますが、G1の戦績では対象的なのもあって、序盤は場外戦含めてEVILが優勢に。型が決まってる男vs型に嵌まらない男の戦いです。Tシャツに隠してのタッチロープでの絞殺刑と、地味にEVILが反則のパターンを増やしているのも面白いですね。

オーカーンも反撃しますが、オモプラッタを噛みつきで返され、腹固めはディック東郷の乱入で返すなど、格闘スタイル相手でもブレないEVILの悪辣さがいいですね。これ、格闘要素のあるプロレスに対する現新日の答えのようでいて僕は好きです。

オーカーンはダブルリストロックから腕ひしぎで一気にタップを狙いますが、レフェリーを止めて再びの介入。スポイラーズチョーカーで絞められてる時の構図が素晴らしいです。マジックキラーを被弾するもギリギリでキックアウト。フィニッシャーのEVILは腕を極めてショルダーアームブリーカーで対抗するオーカーンでしたが三度、ディック東郷の介入が。これを正拳突きとプランチャで始末するも、コーナー金具へ二度に渡ってのホイップ。そしてEVILで万事休すかと思いきや、アイアンクロー式の変形コンプリートショットからエリミネーターの一撃。そしてアイアンクロー式体固めでオーカーンがEVILを撃破!いやあ……EVILの全勝もこうして見ると納得の穴の無さですし、オーカーンのベビーフェイスっぷりも噛み合っていましたね。

◼️第7試合 30分1本勝負
『G1 CLIMAX 34』Aブロック公式戦
内藤 哲也 vs ゲイブ・キッド

内藤にとってのゲイブは最大の難敵かもしれません。支持率急上昇かつ、容赦なき攻撃性と妥協なき現実の申し子ゲイブ。そのデンジャラスかつ荒々しいスタイルは、ある意味ではロスインゴ化した時期の内藤を彷彿とさせるものであると同時に、今のコンディションでゲイブを捌けるのか?という不安もあります。ゲイブにとっては現王者かつ前年度覇者の内藤は大将首に等しく、塗り替えなければいけないアイコンの1人です。また、人気があろうとも本質は残虐なヒールであることを証明できる格好の相手でもありますよね。

内藤はのらりくらり、間を取ろうにもゲイブはすかさず詰めて攻め立てます。狂犬は喰らい付いたら離さないわけですが、苛立つのは人間であり相手は狂犬ですからね。さっそく場外戦へと戦場を移しますが、鉄柵&椅子盛りへのブレーンバスターを内藤が回避すると椅子への叩きつけという荒々しさを見せます。ゲイブも鉄柱攻撃にエプロンバックドロップと攻め手を緩めず。デンジャラスな空気になってきました。

内藤も足払いでコーナーに激突させ、エスペランサを狙えばゲイブも急角度のデンジャラスなバックドロップで猛追。殺人張り手の応酬から最後はゲイブの攻撃を掻い潜ってコリエンド式デスティーノ……と見せかけてのコリエンド式首固めで押さえ込んで勝利。これはいいですね。膝の状態やコンディションでやや厳しくなったデスティーノをカウンター一本に絞ると同時に、晩年になって使い始めた、スイング式DDTの亜種としてのスイング式首固め。そしてコリエンド式デスティーノのハイブリッドであり、DDT系列の別ルートとして開拓したのはやはりセンスの賜物です。ランニング式の押さえ込みって棚橋の電光石火を思い出しますし、今の内藤がカウンターではない能動的押さえ込みに活路を見出すのは非常に感慨深いものがあります。当初はヒヤヒヤしたものの、蓋を開けてみれば光明の見えた一戦となりました。

◼️第8試合 30分1本勝負
『G1 CLIMAX 34』Aブロック公式戦
海野 翔太 vs SANADA

やはりこの2人だとオーソドックスかつ王道的な試合になりますね。王座経験のあるSANADAからすると一番壁としてなりやすい相手であり、また両者ともエースである棚橋の影響を感じるせいか、エースとしての査定試合のような側面もある気がします。やはり比較すると戴冠経験とキャリアによる重厚さに違いがあり、こういう試合が案外海野は大変で、それと同時に得るものが多い試合であるとも思いますね。SANADAがそうした位置になったのも感慨深いものがあります。

海野とSANADAは手が合わないわけではないものの、やや綺麗すぎる感じもあり、特に海野はファイプロでいうところの対角線中央技を立て続けに出すのは、間を取りすぎかつやはりまだテンポの面で違和感はあるものの、昨年の対清宮戦で見せたシャイニングカウンターのSTFを見せてきたのは良かったですね。

海野の押さえ込みの応酬。SANADAのリバーススープレックスを海野がブリッジで返さなかったことが目につきましたが、ここ気になった人もいるんじゃないですかね。変形デスライダーも込みでなんとか崩そうと試みるも、最後はブリッジごと抵抗を押し潰すようなオコーナーブリッジでSANADAの勝利。色んな意味で綺麗すぎる試合でしたね。それでも超せそうで超せないあたり、海野にとってのSANADAの壁は意外と分厚いのかもしれません。

◼️第9試合 30分1本勝負
『G1 CLIMAX 34』Aブロック公式戦
鷹木 信悟 vs ザック・セイバーJr.

やはりこの2人、何度か手を合わせてるのもあって切り返しのパターンが豊富ですね。それでいてほぼ同速に近い速度で動くわけで、非常にハイテンポかつスピーディーな一戦となりました。喩えるならハイスピードの知恵の輪合戦で、特にネックスクリューとアームツイストの仕掛け方は面白く、一筋縄でいかない相手だからこそ、本来の奇襲に近い用途で刺さるのが見ててとてもよかったです。パターンが観客の脳裏に定着して周知が行き届いているからこそ、わかっている手札を意外なタイミングで繰り出してくる。

カウンターは互いに得意とするところながら、ファイトスタイルは真逆の一語であり、打撃なら鷹木、関節技ならザックというフィストorツイストの色分けも見事ですね。そんな中、ザックの卍固め→グラウンド卍固めと腕を狙われ続けた鷹木でしたが、なんとかパンピングボンバーで打開。撃ち合いでは分があるのはやはり鷹木のほうであり、リストを先に捉えておいての知恵の輪のようなメイドインジャパンはいつ見ても見応えがありますよね。切り返しのプロレスの極地であり、互いにカウンターを警戒しつつカウンター狙いで能動的に仕掛けて動いているのが面白いです。何より一切速度を落とさずに動き回ってることなんですよね。これができるスタミナと、時間経過でも落ちずに澱みの一切ない精度。いやはや、素晴らしいですね。

ザックもカウンターでザックドライバーを繰り出すも決まらず。因縁のあるスリーパー、腕ひしぎ、三角絞めと流れるように捕獲し、鷹木危うしか!?と思いきや、そのまま持ち上げて強引にラストオブザドラゴンで叩きつけて鷹木勝利。ひたすらに動き回り、狙い続けたノンストップかつフルスロットルな一戦でした。いや、本当にこの2人の試合にハズレはないですね。とにかく過去の対戦も含めてのアイディアの宝庫であり、今の新日本プロレスのスタイルではこれが最高峰の一つでしょう。文句なしに名勝負です。

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