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2022.8.14 新日本プロレスSTRONG SPIRITS Presents G1 CLIMAX 32 DAY17 試合雑感

◼️ 第6試合 30分1本勝負 
『G1 CLIMAX 32』Dブロック公式戦
YOSHI-HASHI vs デビッド・フィンレー

YOSHI-HASHIにとっては珍しく格下とやる一戦ではありますが、相手は成長著しいフィンレーというのもあって勝敗はともかく試合展開はちょっと読めなかったですね。YOSHI-HASHIの負傷した右肩に動きの中で「圧」をかけていくフィンレーは堂々としており、ベビーでありながらこうしたテクニカルな怖さと陰湿さを出せるのは素晴らしいと思います。YOSHI-HASHIも低空ドロップキックなどでペースチェンジを測りますが、見様見真似ボマイェを会得して以降、主砲である逆水兵とトラースキックを引き立たせる副砲としての意味合いが増してきていますね。YOSHI-HASHIの低空ドロキはどちらかといえば体格で勝る相手への武器というイメージしかなく、今のYOSHI-HASHIの技の中で低空ドロップキックから繋がる技がないのが、若干惜しいなと思う部分であります。

今回はカルマの体勢から押さえ込む秘技「業」で勝利。フィニッシャーの和名が別技、しかも派生である押さえ込みというのは面白く、何よりイメージに合っています。テクニシャンなフィンレー相手の試し切りとしても充分で、ここはYOSHI-HASHIが貫禄を見せましたね。

◼️ 第7試合 30分1本勝負 
『G1 CLIMAX 32』Bブロック公式戦
タイチ vs グレート-O-カーン

注目の初対決。グラウンドに誘うオーカーンに相撲の仕切りを見せるタイチとすれ違いが続きます。結局は組み合いのスモウ・マッチとなりましたが、ここはタイチに文字通りの軍配。しかし勝負は別で、がぶり状態からの押さえ込みであるアマレス技「パンケーキ」ことパンケーキホールドで押さえ込んでオーカーンの勝利となりました。自身のパンケーキの逸話とアマレスの技術であるパンケーキが上手いことシンクロしましたね。今回はネタ方面ではありましたが、この二人の対決は舌戦も込みのシリアス展開が見たいですね。

◼️ 第8試合 30分1本勝負 
『G1 CLIMAX 32』Aブロック公式戦
トム・ローラー vs ジェフ・コブ

至高のレスリング対決。オリンピアンであるジェフ・コブは流石と言ったところで、早い上に圧力がありますよね。まさにトップアスリートであり、それに対して格闘家としての側面をトム・ローラーが出すことで、スープレックスマシーンvs UFCテクニシャンという面白い試合になりました。トム・ローラーはいまいちニーズを掴みにくい選手であり、こうした格闘方面のテクニックには間違いなく需要があるものの、プロレス好きらしい自由奔放さやクラッチによる手拍子の煽りという、昔だとありえない文脈を唐突に差し込むのが魅力でもあって、かえってそれがトム・ローラーの難解さに繋がっているようにも思います。総合格闘技のリングでやるプロレスをプロレスのリングに持ち込んでいるような違和感というか、ここのあたりがスマートに整理されればまた評価も変わるんじゃないですかね。コブのスクールボーイからのロコモーション式のジャーマンに、トム・ローラーのアームロックと試合はよ。シビアになり、最後は膝連打からのカミゴェ。コブの巨体を放り投げるバックドロップ。そこからのNOKTBでトム・ローラーが勝利。トム・ローラーのG-1でのベストマッチかつ、コブの上手さが光った試合でした。

◼️ 第9試合 30分1本勝負 
『G1 CLIMAX 32』Cブロック公式戦
棚橋弘至 vs KENTA

この二人、USを賭けて散々戦った因縁がありますが、その距離感は近いようで遠いですね。KENTAは早々に椅子を持ち出しますが、あのドームでの死闘がすぐさまフラッシュバックするわけで、単純なその行動一つでこの二人には意味が生まれます。

KENTAの攻めはシンプルで、アメリカンなナックルパートとジャパニーズなサッカーボールキックのミックスが素晴らしく、今現在のKENTAのヒールスタイルとして非常にわかりやすいものとなっております。棚橋も髪を掴んでヘッドロックを切り返すなどのダーティーさを見せ、太陽ブローから普段より多めに煽ることで、 空気感の融和を図りましたね。

KENTAのストンピング、その場飛びのフットスタンプ、腹部へのニードロップという連続攻撃も非常にテンポがよく、アメプロに付き纏う打撃の弱さというイメージを払拭できていますね。そこからの二度に渡ってのボディシザースも強烈かつ、これまたシンプルなレッグロックで足を固めて逃れた棚橋も上手いなと。

業を煮やしたKENTAは馬乗りナックルパート。やはりかなり意識的に使っていますが、そこに怨念という文脈を込める辺り、KENTAのプロレスは深みがありますね。棚橋のレフェリービンタ誤爆はややアメリカンによりすぎなきらいもありますが、そこからすかさず松葉杖での殴打というKENTAのヒールぶりはクラシカルなアメリカンスタイルが好きと言いつつ、1.5での意にそぐわぬ死闘に「つれなさ」を見せた棚橋に対しての怒りの返礼な気もします。

そこから怨念が醸成されたタイミングで、きっかけを想起させるようなテーブル設置から一気に不穏さが漂いますが、これはハードに棚橋の顔面にぶつけただけで留まりました。あの1.5のエクストリームは超えられない、今のタイミングであれ以上はないという明確な線引きのようにも思います。棚橋も息を吹き返し、g2sを切り返しての首固めは非常にスピーディーかつ棚橋の思想が垣間見えましたが、ここからの張り手合戦に打ち勝ったKENTAが、引きずり起こして高山ばりの強烈な顔面ニーリフト。そこから完璧なg2sで棚橋に勝利。なんというか、使った技はシンプルでありつつ、前回とは違った部分で落とし所を見つけた感じで、同じアメリカンスタイルが好きでも、細かい部分による好みの違いであったり、KENTAが攻めつつそれに対して一つ一つ答えを見せる棚橋など、前回よりも対話力が高かったようにも思います。それでいて晩秋の二人による意地の試合。いやはや、深みがありましたね。

試合後のマイクではこのG-1を通してやり続けた自伝の宣伝をやりつつも、そこにヒールの伝統芸能である田舎弄りを絡めてやるKENTAには頭が下がりました。バタ臭さの際立つこれらをどう今の日本に落とし込むかについて一番考えているのは何を隠そうKENTAだと思います。そこに昔のKENTAに対する憧憬やニーズも込めつつ、これからのKENTAを見せていく。僕はお世辞抜きで現時点でのKENTAが一番だと思いますし、まだまだ進化の余白があると思いますよ。あのサイン本を手に入れた子供は最高の夏の思い出になったでしょうね。







終盤に差し掛かったというのもあってか、先日に続いて結果の読みやすい試合であったものの、深掘りしていけばそれなりに見応えのある試合でした。さて、いよいよ最後の三連戦。ここからの「熱」はヤバいですよ。ではでは。今日はここまで。

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