2024.3.2 プロレスリング・ノア GREAT VOYAGE 2024 IN NAGOYA 試合雑感
おひさしぶりです。もるがなです。ノアの感想はしばらくぶりですね。本当は拳王陥落や真壁vs藤田についてとか書きたかったのですけど時間がなかなか取れず……。しかしそれをあまり言い訳にしたくもなく、やはり熱が抑え切れず書きたくなったときにガーッと書くのが自分のスタイルに合ってるので、今まで通り気ままにお付き合い頂けると幸いです。ではでは、やっていきましょう。
◼️ Victory Challenge Tag League 公式戦
拳王&大和田侑 vs ドラゴン・ベイン&アルファ・ウルフ
実に分かりやすいタッグマッチらしいタッグマッチでした。ロスゴルペアドーレスは元のスペックの高さもさることながら、新人の大和田相手からするとべらぼうに高い壁であり、実力のある兄弟タッグとしての強さを如何なく発揮していましたね。若干のヒールムーブによって二人の禍々しいマスクデザインも際立っていたというか、捕まる大和田に、脇に控える拳王の爆発とカタルシスへの期待感を高める感じで、実に「見やすい」タッグマッチだったと思います。
大和田はガッツがいいんですよ。ポテンシャルや才能があるとか、そういうの抜きにしての応援したくなる根性があるというか。この試合も徹底して痛めつけられていたのですが、最後の最後まで貪欲にピンフォールを狙う姿勢と、新人だから頑張るけど無理だろうという空気ではなく、それで勝ってもいい!という後押しの空気が場内に蔓延してたのが良かったですね。当たり前の話ですが、プロレスは3カウントを奪うスポーツであり、だからこそ格上相手だろうが3カウント奪えば勝ちになる。そのことを肌感覚で理解していて、とにかくそれを狙いにいったのが素晴らしいです。信じられるプロレスですよ。
最後は一瞬体勢を崩してヒヤリとしたものの、シューティングスターことツイスターベインで大和田玉砕。こないだの劇的な分けを除けば勝ち星はいまだゼロでありながらも、その価値ある一勝を求める気持ちは皆と共有できていて、その瞬間を是非とも見たいですね。
◼️ GHCジュニアヘビー級選手権試合
ダガ vs タダスケ
この試合、自分にとってはかなり評価の厳しい試合でした。ダガはとにかく強く、試合内容を振り返ってもほぼ8割ぐらい攻めており、ただひたすらに強かったです。使う技のバリエーションも豊かであり、隙もなく、また王家の気品のあるサイボーグといったような、本来なら相反するイメージが同居している感じもいいですね。よもやすればチャレンジマッチかスカッシュマッチになりそうな気配すらありましたが、タダスケも奮戦し、ラリアットやグッドルッキングパイルドライバーと追いすがりましたがダガの牙城を崩すには至らず。
しかしながら最後のダガのヒールムーブにかなり引っかかりを覚えたというか、試合内容的にあまりタダスケの勝ち目が見えなかったというのもあってか、反則が必要なほど危なげがあったようには見えず、またタダスケ自体の奮戦ぶりは良かったものの、それをヒールムーブに対する主役格としてタダスケを設定するのはそもそもかなり無理があるようにも思ったんですよね。
僕がnoteであまりNOAHのJr.に触れないのは端的に言ってあまり刺さってないからであり、これはひょっとしたら自分の求める価値観とは違うのかな、とも思い始めています。誤解しないで欲しいのは、選手が悪いわけではなく、役者は申し分ないぐらいに揃っていますし、使えるコマも多く、また試合のクオリティも高いんですよ。ただ、今のNOAH Jr.の流れにはいまいちついていけてないというか……。柱となる中心人物の不在がずっと引っかかっているせいか、何を中心に見ればいいかがいまいち見えてこず、単発でいい試合はありつつも、全体の流れを見ればヘビー級ほどには区画整理されていないような印象を受けます。一言でまとめるならキャッチーではない。まあ自分よりNOAHが好きな人だとまた違った見方があるかもしれません。これは側から見た人間の戯言として聞き流してください。
とはいえ、NOAHのJr.の試合そのものは面白いですし、YO-HEYやダガを始めとして好きな選手もいるので見続けます。これは今の現時点の感想ということで。こういうのをちゃんと記すのも大事ですし、書いておくことでいずれ来るであろう自分の見識のアップデートにも繋がりますからね。
苦言というわけではないのですが、最近のプロレス感想はあまりこうしたネガティブ意見を書かないようにする風潮を感じることがあり、そこには若干の危惧があります。素直に書いていいんですよ。自分の感想は大事ですし、見続けることでそれを覆され、不見識を修正するのもまたプロレスの醍醐味の一つなのですから。
◼️ GREAT VOYAGE
スペシャルシングルマッチ
ジェイク・リー vs 藤田和之
今のNOAHを清宮海斗を主人公にした連載漫画だと捉えるならば、さしずめこの二人は主人公の敵同士の戦いであり、プロレスに限らずこういったシチュエーションは燃えますよね。それでいながら間接的に全日本vs新日本の価値観の戦いとして捉えることも可能であり、そうした意味でもセミファイナルに相応しい重い一戦になったと思います。
ゴング開始から探り合う両者。やはり藤田和之を相手にしたときにクローズアップされるのは、ジェイクはどこまで「やれるのか」であり、今となってはもはやそうした価値観を共有できるファンの数もあまり多くはないのですが、こうした部分はどうしても注目しちゃいますよね。
ジェイクなら大丈夫だろうという信頼はありつつも固唾を飲んで見守ったわけですが、膂力で押す藤田に対し、ジェイクは柔術ベースの下から極める間接技で冷静に対応。攻防を文字起こしすると膨大なテキスト量になるので割愛しますが、その中で都合二度ほどジェイクが極めた場面があり、思わず藤田が悲鳴を漏らすシーンも。こういう言い方はアレなのですが、良くも悪くも藤田は「嘘」がつけないタイプで、だからこそ逆説的に、ああ、これはマジなんだなと思ってしまうためリアリティが増すんですよね(笑)殺気のある攻防もそうなのですが、肌の触れ合う回数が指数関数的に増すと同時に、互いの体表面に吹き出る汗の玉がまたその苛烈さを示していたというか……。リングに戻るときにジェイクの頬にツウー……と汗がひと筋流れていてそれをカメラが抜いたときは「ジェイクは本当に持ってんな!」とつい叫んでしまいましたよ(笑)
いや、本当に……。前半の攻防の見応えは凄すぎたというか……。相手が藤田和之というイレギュラーでありアンタッチャブルな存在だからこそ、すぐに終わってしまってもおかしくないという緊張感。プロレスと格闘技に分け隔てがなかったころの最後の生き残りであるが故に、多少なりともその「範疇」をはみ出してしまうことに納得の余地がある。
あと強さばかりが突出しているため、あまりこの部分をピックアップして語られることってあんまりなかったと思うのですが、藤田和之って表情が抜群にいいんですよ。刃牙流に言えば「顔」ではなく「貌」とでもいいますか。ABEMAは野獣煽りも手伝ってかセンセーショナルに切り取って取り上げることはありつつも、プロレスの「表現力」の分野で藤田和之の表情を語る論調はあまり見かけないなあと。ジェイクが藤田の獰猛さから逃れるたびに藤田の表情に険しさが増し、当初あったような余裕綽々の試してみるかという感じが消えていき、次第にそれは激昂へと変わっていく。これは至って自然に行われていて、それは何よりもリアルである。今までは強さに裏打ちされた副次的なものとしてしか捉えられていなかったそれに、改めてスポットライトが当たった一戦だったとも思います。
これは繰り返しこのnoteでも語っていることなのですが、強さってぶつかってみたときに実際に「強い」ことが大事なのと同様に「強く見られる」ことも大事なんですよね。これが功を奏したのはやはり時間切れが迫りに迫ったクライマックスの場面であり、藤田が徹底的に攻撃の手を緩めなかったせいか、やはり残ったのは藤田強し!の場面だったかなあと。
しかしながらスタミナ配分で考えるなら年齢もあってか流石に厳しかったかな?というのが本音で、前半部分は互いに手詰まりな印象はあったものの、あのまま続けていれば恐らく勝ったのはジェイクかなというのが個人的な見解ですかね。ここはたぶん人によってはかなり異なると思いますし、これが本当の意味での「語れるプロレス」なんですよ。とはいえ、スタミナが切れてバテていたかといえばそうではなく、両の足でしっかり立っていたのは藤田和之であり、何より被弾した攻撃のことを思うとタフネス面ではやはり怪物ですよ、彼は。かなりキツそうではありましたけどね。結果としては時間切れのドロー。決着は次に持ち越しですかね。
そうですね……見終わった今思うのは、当初こそ敵vs敵の先の読めない死闘であり、引き分けじゃなくて決着をちゃんとつけてくれよと願っていましたが、終わった今だと全く別の感情が湧いてきたというか……。ジェイクのNOAH参戦当初は迎撃と査定の両立のような感じで丸藤や杉浦が彼と闘ったわけですが、それと似たような匂いを今回の藤田和之に感じたんですよね。初参戦から丸一年経っての新たな壁とでもいいましょうか。
喩えるなら横暴だった頑固親父が、年月を経て不器用なりにコミュニケーションを取ろうとしていたような、そんな哀愁があったんですよ。気のせいかもしれませんが。藤田和之は強さの象徴でありつつも、名の通ったベテランレスラーでもあるわけで。こういうやり方しか知らず、それに対してちゃんと対応できるのは、コミュ力もあり、スマートな令和の悪役であるジェイクでもあったわけなのですが、その矢印はジェイクだけでなく不器用なりに藤田和之からも向いていたんじゃないかなあと。振り返ればわかりますが、藤田和之は結構技を受けていたんですよ。己が肉体のタフネスさと、鍛えられた身体で鍛えられた箇所の攻撃を受けるという、プロレスラーの原理原則に従っただけといえばそれまでの話ではあるのですが、年齢差もあってか、その姿勢がそのまま闘魂の伝承のようにも感じてしまったなあと。まあ戯言程度に受け取ってくれて構わないです。僕は自分でも意外なほどに藤田和之が大好きで、今回の試合で改めてそのことに気付かされました。
さて、最後に自身のTwitterからの転載になりますが、多少手直しした僕の藤田和之観を置いておきますね。
先ほど好きだと書きましたが、藤田和之には嫌悪感を抱いた時期もありました。それは新日に参戦していたころ、あの悪夢の健介戦以前にIWGPを明け渡しておらず、IWGP"暫定"王者のまま振る舞い続けたことで、そのことだけでなくレスナー戦のドタキャンも含めて、藤田当人というよりは、その背後で藤田を操る大人たちや、藤田をダシにプロレスの強さに関して好き勝手言うファンが大嫌いだったのを覚えています。
しかしながら、そんなファンたちと同様に、自分もまた藤田和之にプロレスラーとしての「強さ」を仮託してたという意味では共犯者のような後ろめたさが常に付き纏っており、それと同時にああした横暴な振る舞いやら扱いをプロレスラーの模範にされては困るという思いもあり、そんな二律背反の中で藤田和之との「距離感」はずっと計りかねていたわけなんですよ。
強さを金科玉条として、自己破壊的に、自家中毒的に、これこそがプロレスなんだと、積み上げてきたプロレスへの信頼が食い潰されていくのを見るのが耐えられず、かといってプロレスの強さは立ち上がることだ、というような糖衣に包まれた言葉で納得する自尊心も持ち合わせておらず、そんな感情をとにかく逆撫でしていたのが、僕にとっての藤田和之という男でした。
しかしながら藤田和之には間違いなくニーズがありましたし、傍若無人かつ傲岸不遜な蹂躙を見せて欲しいというサディスティックな欲望は間違いなくあったわけですよ。今はレスラーとして再生しましたが、いまだにそうしたニーズは根強く残っていると思います。彼のメンターが猪木だったというのも功罪相半ばという感じで、あれ以外にやり方を知らない、語義通りの「獣」だったわけですよね。今回のジェイクの役割も、そうした獣の調教師としての信頼もあった故ではないかなと。
だからこそ、そんな藤田が真摯にプロレスと向き合い、強さも生き様も否定されない形でGHCを戴冠し、レスラー藤田和之として、こうしてジェイクと闘ったことが心に響いたわけですし、入団会見のときの「野獣と呼ばれて辛かった。人間・藤田和之として生きる」という言葉は、藤田に都合よく強さを押し付けてきた身としては非常に重く、胸に刺さりました。
今はもう何の憂いもなく、ときにその不器用さに苦笑することはありつつも、ちゃんと一人の「強い」プロレスラーとして藤田和之を見ることができています。年齢的にも肉体的にもそろそろ限界は近づきつつありながらも、残された野獣の闘争心と強さはいまだ本物で、プロレスラーだからこそ「次」がある。ジェイク・リーとの第二ラウンド。期待したいと思います。
◼️Victory Challenge Tag League 公式戦
清宮海斗&大岩陵平 vs 杉浦貴&佐々木憂流迦
セミファイナルの味の濃い死闘に反して、こちらのメインは一服の清涼剤のような、そんなメインに相応しいタッグマッチとなりました。
いやはや、憂流迦は凄いですね。まだ二ヶ月でしたっけ?それでいてこの風格と佇まいは本物ですよ。憂流迦の動きっていい意味でプロレスのセオリーになく、その「読めなさ」が逆にプヲタ受けするんですよね。スタナーとRKOの併用という自由さや、いきなりの腕ひしぎのバリエーションなど、この使える技術を好き勝手にやってるのがとてもいいです。変に縛られてないというか。
特筆すべきは総合格闘技ベースの所謂「無駄のなさ」に加えてスピーディーな動きであり、極めの怖さは残しつつも、プロレスへの愛がある。現代MMAとプロレスのMIXのスタイルに漂う新時代感といい、これを高いレベルでこなせるようになれば本物ですね。明らかに中邑真輔の影響は色濃く、またNOAHも多少はそれを狙っているとは思いますが、総合の強さを維持したまま、プロレスのスタイルにハイブリッドで落とし込むことを期待されていた世界線の中邑真輔のような感じですかね。敢えて名付けるなら中邑オルタ。アイアンマンの中身がロバート・ダウニー・Jr.ではなくトム・クルーズになったバージョンというか、このマルチバース感もまた今の時代っぽいですよね(笑)ひょっとしたら怪物の成長を目の当たりにしているのではないでしょうか。令和の世に甦ったシャイニング・トライアングルがフィニッシャーというのも、まさに上記の通りだと思います。
対する大岩は対応に苦慮しつつもやはりこちらもレスリングベースとあってかしっかり渡り合っていましたね。この二人、シングルで見たいなと思ってしまいました。
清宮vs杉浦も面白く、本音は清宮vs憂流迦が見たかったなとも思いましたが、こちらもこちらでバチバチでしたね。徹底して足を狙い、最後は武藤直伝の足4の字固めで杉浦からギブアップ勝ち。武藤継承の意味合いが強い技ではありますが、リック・フレアーの得意技でもあるせいか、そっちの色も強いですよね。清宮らしいいい技です。欲を言えば大岩vs憂流迦で決めて欲しかったなと思いつつも、この勝負論のある感じにNOAHらしさを感じたのも事実で、この足4の字固めも結構ハラハラしましたし、決まったときの「ああ……決まった!」という感覚は味わえそうで味わえない感覚なんですよ。この感覚、わかりますかね?
試合後はフレッシュな二人がマイクで〆てEND。大岩はそろそろ実績らしい実績が欲しいですね。とりあえずタッグリーグ優勝を期待したいです。
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久々に腰を据えて見ましたが、NOAHは面白いですね。なんというか、90年代〜2000年代のファンには間違いなく「刺さる」プロレスがここにはありますし、今のプロレスリング・ノアを見るたびにあの頃の感覚が蘇ってくるのを感じます。プロレスはいいものですね。ではでは、長くなりましたが今日はここまで。
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