2024.7.23 新日本プロレス G1 CLIMAX 34 広島・広島サンプラザホール DAY3 試合雑感

◼️第4試合 30分1本勝負
『G1 CLIMAX 34』Bブロック公式戦
ジェフ・コブ vs KONOSUKE TAKESHITA

フィジカルエリート同士のド迫力の肉弾戦。……と思いきや、単なるパワーやガタイのぶつかり合いだけでなく、躍動感も含めての戦いになっていたのは興味深いですね。竹下がノータッチのトペコンを出せば、コブはセカンドロープからの雪崩式リフトで応戦。スーパーヘビー級の重さに加えて高さまで張り合ったらもはや張り合える者はおらず、そして誰にも止められません。トップロープ最上段からのスーパープレックスは衝撃音とコブの身体がバウンドしたのがヤバかったですね。あとはやはり目を引くのは竹下の一度空中で静止してブリッジで投げて固める二段式ジャーマンスープレックスで、コブのアンコ型の体型でも崩れることなく投げ切ったのは凄いですね。

コブがアスレチックプレックスを出せば竹下はブルーサンダーを出すなど、場のレートを大技で吊り上げていく大味な試合ながら、スーパーヘビー級が互いのパワーで放り投げられるのを見ることのできる快感に酔いしれ、最後はコブの巨体をレイジングファイヤーで旋回させて竹下の勝利。いやあ……フィジカルでも日本人トップクラスなのを改めて証明しましたね。竹下は単純に技の精度やガタイの良さ、膂力含めてトップクラスなのは間違いないのですが、それ以上に観客の目やカメラを明らかに意識してるのが伝わる部分があり、そこはやはりモノが違うなと感じます。誰が竹下を止めるのか。ここは一番気になりますね。


◼️第5試合 30分1本勝負
『G1 CLIMAX 34』Aブロック公式戦
カラム・ニューマン vs ザック・セイバーJr.

ハイスピードなカラムからするとザックは異色対決になりますが、速さ以外に何があるのか?というのがよく分かる対決でした。カラムは現状だと往復高速ロープワークからのキックとオスカッターぐらいしか周知の技はなく、全体的に荒削りかつボルチンと比較していまだ未知数ではあるのですが、そこを確かめるようにザックが手練手管でジワジワと追い込みつつカラムを開拓し、それにカラムが対応して才能の片鱗を見せつけていく過程を見せたのが面白かったですね。途中に見せたヨシタニックやボムなどはわりと目新しくて目を引きましたし、もう少し引き出しを増やしてもいい時期に来てるのかもしれないです。そんなボムと三角絞めの応酬の中で足を取り、首と見せかけての変型ヒールホールドでザックが貫禄勝ち。カラムはまだまだ伸び代がありそうです。

◼️第6試合 30分1本勝負
『G1 CLIMAX 34』Aブロック公式戦
鷹木 信悟 vs グレート-O-カーン

このG1中は格闘スタイルのオーカーンとなっていますが、面白い反面まだ調整と修正を繰り返してる感じはありますね。脇固めや昨今だと珍しい腹固めなど、何が出てくるかわからないワクワク感がある反面、技術はあっても型に昇華されていない印象もあり、わりと色々できるだけにスタイルの構築に苦労してる印象を受けます。

それでも中盤のファイヤーマンキャリーに巴投げ、一本背負いと柔道技とレスリング技をミックスして出したり、以前から得意とする肩固めなど方向性に光明は見えており、あとはいかにしてこれを練り上げるかになりますね。

最後はラリアットの交錯でパンピングボンバーで打ち勝ってそのまま固めて鷹木信悟のフォール勝ち。オーカーンはトンネルを抜けられませんでしたが、良くも悪くもこの「らしくなさ」を貫き通して欲しいですね。

◼️第7試合 30分1本勝負
『G1 CLIMAX 34』Aブロック公式戦
海野 翔太 vs ゲイブ・キッド

スタイルも価値観も対極の二人でありながら、観客の支持は真っ二つではなくどちらかといえばゲイブ寄りで、海野にブーイングが飛んだのはやや驚きはありつつも、色々と言われていることがようやく表面化したなという感じでしたかね。

憎悪と銘打たれた一戦ではあったのですが、序盤は憎しみというより互いの負けん気の強さがクローズアップした感じがあり、もう少しゲイブに海野を潰して欲しいと思った人や、逆にベビーの仮面を海野に脱ぎ捨てて欲しいと思ってる人からするとこの展開はやや物足りなかったのでは?と思います。

しかしながらコーナーでの海野のストンピングと挑発で空気は一変。そこからは殺気の困った潰し合いの張り手合戦で、このときの海野の表情はなかなかに良かったですね。しかしながらクイック式のドリルアホールパイルドライバーでほぼグロッキーに。殴りつけての逆エビはヤングライオン技という屈辱に加えて腰の爆弾を刺激する技でもあり、タップアウトしないと見るや、意外性のあるドクターボムでゲイブの勝利。動けないのを見越してやられたというのはある意味ではギブアップ以上にキツく、これは本当に悔しいでしょうね。そして取り巻くゲイブゴール。思った以上に早く問題点が露呈した感もあり、海野にとっては苦い夏の思い出になるかもしれません。

前も書きましたが、海野にとって苦しいのはブーイングに負けじとベビーフェイスを貫く棚橋ルートも、ブーイングで一気に弾けてヒールターンする内藤ルートも目新しいものではなく、先人によってすでに開拓済みなことなんですよね。もちろん、たとえ似たような流れになったとしても海野の辿る道はその二人とは異なるものになるのは間違いないのですが、それでも苦しい。新世代にとって物語が残されていないのに、ナラティブに囚われているーー。

棚橋の場合は後藤戦での確変が観客の想像をはるかに上回ったからですし、内藤の場合は元々あった期待感の裏返しのブーイングだったからこそ、そのバックラッシュも手伝ってヒールターンで化けたため、今の海野とはケースがかなり異なるんですよね。現状でも真似だコピーだパクリだフェイクだと言われてる中で、方針を変えても「ああ、○○と同じような感じになったのね」と、そう言われる可能性すらあるというのは恐ろしい話ですよ。こうした針の筵の中で自分だけのアイデンティティを見つけるというのは我々が思う以上に大変で、その足掻きはまさに泥濘の中での先の見えない歩みとなるでしょう。この夏で何を見つけるのか。どうなりたいのか。今はただ見守るしかないですね。


◼️第8試合 30分1本勝負
『G1 CLIMAX 34』Aブロック公式戦
SANADA vs “キング・オブ・ダークネス”EVIL


Tシャツに切れ込み入ってたのはご愛嬌として、EVILがSANADAを誘うのって色々と面白いものがありますよね。ロスインゴの同門というのもあるのですが、オカダ不在の今だとこの二人はどうにも中間管理職のように思えてしまってプロレスを楽しむ以外の部分でちょっと肩入れしてしまう所がありますw

最初の寸劇含めて、同格で出せるベビーvsヒールの大一番であり、二人とも順当に格を上げてきただけに安心感と安定感がありますよね。凶器あり、介入ありでも、しっかり捌いていくSANADAのベビー感があるからこそで、今までの積み重ねの集大成を見た気もします。

そんな中での意外性は最後にあり、EVILの隠し技の一つであるみんなが忘れてた裏EVIL!いやあ……ここでこれを出してくるとは……これには驚かされましたね。相手がSANADAというのもあるのでしょうが、一度公開してるとはいえ、正式実装してさらに強くなるのって一番の反則じゃないですかね?これでワーストバウトとは恐ろしい話で、つまりはEVILの試合がクオリティの最低ラインとなるわけですから。これ以上の挑発と嫌がらせはないですよ(笑)いやはや、いい試合でした。



◼️第9試合 30分1本勝負
『G1 CLIMAX 34』Aブロック公式戦
内藤 哲也 vs ジェイク・リー

内藤戦の敗北から始まったG1参戦は縁ができたとはいえジェイクにとっては屈辱で、新日参戦を願っていたのとは別な部分でレスラーのプライドに関わることなんですよね。勝たないことには収まりがつかず、ここで組まれたというのは運命的でもあります。内藤の脱ぎ捨てたコスチュームを蹴るジェイクに対し、わざと遠くに放り投げて使用人扱いしたのは挑発的でよかったですね。

しかしながら試合内容としては思った以上に震わず……着地ができないほどに内藤の膝の状態は酷く、途中はやや残酷ショーになりかけていたような気もします。途中のデスティーノの失敗がかなり厳しく、最後のデスティーノも切り返しのパターンかつ横に足を投げ出すことでどうにか決めてジェイクからフォールを取りましたが、普段カウンターとして使ってるもので決まったということもあってか試合のクオリティはかなり低かったですね。一応、執拗に狙った頭部への延髄斬りで帳尻を合わせようともしていたのですが、内藤のコンディション悪化に注目が集まっていたせいか、ダメージ蓄積というより手詰まりかつやぶれかぶれに映ってしまったというのが本音としてあり、これは厳しい評価にならざるを得ません。個人的にはそこまでデスティーノに拘らなくとも、今回ならポルポ・デ・エストレージャでよかったように思いますし、G1用に開発したかつてのプルマ・ブランカもあるわけで、今までの引き出しがありますし、デスティーノのイメージが強くともスタイルチェンジも視野に入れたほうがいいように思ってしまうんですよね。スターダストを半封印状態にしたのだって、昔から見てる身としてはわりと思い切りのいる決断であったとは思うわけで、今再びその選択肢をしても誰も責めはしないだろうなと思います。

何より、一番厳しいのって勝ってしまったことにあり、こうなると長期参戦を見据えるならジェイクとしては勝たない限り収まりがつかないわけで、そこまでやれるのか?と、やれたとして今回の試合でもかなりハードだったのに、よりハードルが高くなったリマッチをこなせるのか?と思ってしまうわけですよ。先に宿題を残してしまったわけですから。

仕方のない話とはいえ、IWGP世界ヘビー級王者にG1前年度覇者という二つの称号は思った以上に重いものがあり、当然の如く見る側のハードルも上がります。加えてやはり見るのが少し怖い部分にもなっており、感情面としては勝利以上に完走できるか否かにシフトしつつありますね。応援することに罪悪を覚えてしまうような……そんな事態は避けたいものですよ。本当に。

残り少ない時間の中でひたすらに今を生きたい。その気持ちは痛いほど分かりますが、今の動きができなくなった今どうするのか?それも含めて見守るしか選択肢はなく、今後の試合も注目していきたいと思います。ただ、言っても詮無きことではあるものの、どうか無理はしないで欲しいですね。

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