2024.7.31 新日本プロレス G1 CLIMAX 34 山口・KDDI維新ホール DAY8 試合雑感

◼️第5試合 30分1本勝負
『G1 CLIMAX 34』Bブロック公式戦
ボルチン・オレッグ vs 辻 陽太

ボルチン、いきなりの奇襲!キャリアが近い人間に対抗心を抱くのは必然ですが、相手が新世代トップの辻となると気合が入るのも頷けます。辻の上から目線のボストンクラブを許さずに抵抗したあたり、負けん気の強さを感じましたね。ただ、二度目はかなり高角度で極められ、そこからのカーブストンプや膝蹴りで窮地に陥ります。辻の逆エビってヤングライオンの技であることが周知であるからこそ「敢えて」使ってる感があっていいですよね。当人の風貌もあって似合っているのと、腹部攻めの一貫性もあり、代名詞的な関節技がない今だと結構使いやすい技だと思います。

ボルチンも負けじとファイヤーマンキャリーからの派生のパターンの一つであるバーディクトを放ちますが、ここは着地しつつ辻がDDTで切り返します。ロブ・ヴァン・ダムやエディ・ゲレロと比較すると随分とゆっくりではありましたが、著名な技だからこそ切り返しもまた有名かつ周知であるというのもポイントです。それでもカミカゼを決めるもののフォールを奪うまでには至らず。逆に豪快なジーンブラスターで3カウントを聞きました。やはりスーパーヘビー級相手にスピアーは映えますし、大型選手同士らしいぶつかり合いの醍醐味があってよかったと思います。この二人、意外と手が合ってて面白かったです。また黄金カードの萌芽が生まれましたね。



◼️第6試合 30分1本勝負
『G1 CLIMAX 34』Bブロック公式戦
上村 優也 vs HENARE


最初は手探りからやや上村優位になるもののHENAREは猪突猛進のスタイルで上村を打倒。そこをアームドラッグ二連発でいなす上村。真正面ならHENAREで、意表をつくなら上村という分かりやすい構図がいいですね。上村も張り手や逆水平はそこそこでも、それでもストライカーとしてはHENAREが上であり、打撃戦かつパワー勝負となるとかなり上村にとってはかなり苦しい展開となります。上村も熱血キャラであり、それ故に煽られる形でHENAREの撃ち合いに「応じて」しまうのは利点であり欠点というか。見てて面白い反面、勝負論としては悪手であり、この辺はプロレスの難しさが詰まっていますね。

それにしてもHENAREのミドルキックはヤバいですね。今一番新日マットで説得力のあるミドルキックですよ。そしてボディブローにラリアットと、打撃戦ではやはりHENAREに分があります。上村もドラゴンフェイントのジャーマンやダイビングクロスボディなどで攻めますが、続くマッドスプラッシュは剣山。この技、まだ格が備わってないのもあるせいか、当人のスタイルに似合っていても個人的にいまいち響かないんですよね。フィニッシャーならアリ。繋ぎ技としてならナシ、という感じで。あとスープレックス主体の選手が飛び技を使うの、将来性を考えると少し怖い部分もあります。

ランニングしてのミドルキックなどでよりハードさと重さを増すHENAREに対し、上村もドラゴンスープレックスを繰り出すもカンヌキスープレックスにはいけず。この間合いはHENAREのヘッドバットの領域であり、そこからのStreets of Rageで上村敗北。最後はかなり抵抗したものの及ばず。いい試合ではありましたが、打撃戦の厚みの違いがそのまま勝敗の差に繋がった気がします。


◼️第7試合 30分1本勝負
『G1 CLIMAX 34』Bブロック公式戦
エル・ファンタズモ vs ジェフ・コブ

相変わらず傷心のズモを励ますコブ。その隙をついて押さえ込みにかかりますが、流石にこれでは負けませんねw今のズモはブレイクハートがどこに行くのかというストーリーテリングの妙もありますが、矢野的なコミカルさに貴重なハイフライヤー枠と、意外とこのG1における役割の数が多いことに驚かされてしまいます。コブの背中を踏み台にしてのムーンサルトアタックは素晴らしかったですし、このズモ相手だからこそ被人道的なコブのスープレックスも映えるわけです。

ズモもスワンダイブのセントーンアトミコからのライオンサルトと得意のハイフライムーブで対抗しますが、やはりそれらを断ち切るコブのパワー。ズモにおける対コブは如何に搔き回せるかに注目が集まるわけですが、それはすべてハイリスクなんですよね。最後は不用意にボディアタックにいったところを捉えられてのツアーオブジアイランドで敗北。ファンタズモのエレジーはまだ続きます。

◼️第8試合 30分1本勝負
『G1 CLIMAX 34』Bブロック公式戦
後藤 洋央紀 vs 成田 蓮

今の成田にその面影はほぼありませんが、柴田を介した関係性というのもまた面白いですよね。成田は場外での反則で後藤を嬲ると、邪羅蛇羅棒まで倒れて後藤を裏切る始末!リング上ではランニングネックブリーカーはチンロック、フロントネックロックなどのオーソドックスな技で痛めつけます。チョークを交えてのこの辺りのサブミッションは本当に成田は上手いですよね。打撃はまだ覚束なさが残ってるものの、この部分は随分とスマートになりましたよ。

そしてレフェリー誤爆からブッシュアップバーvs邪羅蛇羅棒の戦いに。ここは後藤が大立ち回りで制すと、連続ヘッドバットから豪快なラリアット一閃。後藤の勝ちかと思いきや、レフェリーの隙をついてのローブローからダブルクロスでまさかの成田の勝利。いや、これは面白かったです。今の成田の試合は本当にいいですよ。これは単なるヒール贔屓とかじゃなくて技術のベースが格段に向上しています。昨年とは比較にならないですね。


◼️第9試合 30分1本勝負
『G1 CLIMAX 34』Bブロック公式戦
KONOSUKE TAKESHITA vs デビッド・フィンレー

竹下、まさかのイヤァオ宣言の衝撃の余韻が残る中、今日はフィンレーとの一戦です。いや、それにしても今の新日マットってストロングスタイルの象徴としては猪木の影響よりも中邑の影響が色濃いというか、竹下のこれはキングオブストロングスタイルからの「勅命」ですよね。DDTかつ海外からの外敵という出自もあって「怒り」を「滾らせる」のにうってつけの相手というか、そうした残った人間の神経を逆撫でするかのような「圧」のかけかたはまさに価値観として最も対極にいるハッスルを引き入れたフィクサー時代の猪木そのもので、その影響下にいた中邑なりの毒のあるリップサービスだと思います。真猪木軍ならぬシン・猪木軍ですよ、これは!実際はちょっとしたイタズラ心で発破をかけたのを竹下が乗っただけのような気もしますし、そんなにザワつくようなことでもない気もしますが、その名前を出されたら穏やかでいられない人は多いのではないかと思います。

そんな竹下は早々にフィンレーを轟音エルボーで黙らせるとスリーパーも絡めてアグレッシブに攻め立てます。対するフィンレーもコブラクラッチで攻めると喉元へのクロスチョップと、持ち前の部位破壊攻撃で竹下を苦しめます。ジャンピングニーから勢い余って場外に転落した竹下をリング周回から鉄柵を破壊する鉄柵攻撃など、とにかくこの試合は荒れ模様の逸脱感が凄まじいですね。そして竹下も負けじと場外でイス盛りのフィンレーにリングからのセントーンアトミコ!いや、凄い!ストロングスタイルが吹き飛びかねないデスマッチになるとは。竹下がこれをやるとスケール感がハンパないですね。まるで世界の広さを教えるかのように

大・.タケシタコールと竹下の醸し出す強者イメージに抗うように、戦いは激化の一途を辿ります。ダイビングセントーンを膝で迎撃するとアイリッシュカースで背骨を砕きにかかり、そしてエプロンで竹下のエルボーを交わすとそのまま鉄柱激突から場外へと放り出します。カナディアンハンマー……膝蹴り……レイジングファイヤーを切り返してのオブリビオン……とにかく切り返しとスケール感がハンパないですよ。

空気が変わったのはレフェリーダウンからのフィンレーのシレイリ攻撃ですが、これをなんとか竹下はクリア。活路を見出すのは常に剛腕の右肘ですね。フィンレーが相当警戒していたのもあり、これを被弾するかどうかでシーソーのように勝負が傾くのが分かるのが凄いんですよ。外道の介入も防ぎましたが、最後はバックスライドの反動を利用してのオーバーキルでフィンレーがからくも勝利。いつものボム連発による押し切りはなく、竹下の強者ぶりが凄まじかったのもあってなんとか掠め取った感じがありますが、ドルフ・ジグラーに続いて竹下幸之介という大物喰いは素晴らしいですね。明らかに世界が見ていることを視野に入れたギアの入れ方とリミッターの外しっぷりで、そこで暴れ回った竹下も凄まじいのですが、バレクラリーダーとして負けなかったフィンレーも同じくらい素晴らしかったと思います。死闘でしたね。文句なしに今大会のベストバウトです。


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