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多次元のさら

東京駅の切手会館で展開されたアートユニットODENの展示に来ていたODENメンバーの一人・吉田結美さんの個展が開催中と知り、見に行ってきました。

場所は、西荻窪駅を降りて歩いて10分前後の場所にあるCURRY BAR シュベール。

時刻は午後9時頃。ニシオギの空気感に馴染んだ、そう広くないお店。

そそる食欲。

実は空腹に負けて、こちらのお店に入る前にさんざんご飯を食べてきてしまったのですが。

人は何度、欲望という名の悪魔との賭けに負けてきたのでしょうか。

この日も食欲に負けた私は、期間限定・出汁大根のカレーを頼まざるを得ませんでした。

スイカソースのミルクプリンは罪の味がしました。

吉田さんの展示「さら の うえ の さら」は、このお店の一隅を覆うピン留された大量のメモと、吉田さんの行くところにあまねく出現する小さな神様「スクナビコナ」とから、構成されています。

この、統一感のない空間は一体なんなのだろう…。

そう思いながら、カレーを頬張り、プリンを頬張り、マスターがオススメする10月の限定カレーのことを聞いてさらに食欲を刺激されるという贅沢な時間を過ごしました。バックには懐かしい時代のロック。

鑑賞中に作家さんのお知り合いと遭遇、作家さんの噂話を一方的にしてしまいました。対するアンサーに「作品を見ろ」という無言のポーズをサービス。

ちなみにこの男性、新宿の高島屋か伊勢丹の中のデニムなどを扱う服飾店にお勤めとのこと。先ほど探して回ってみたのですが、見つける前に、私の体力が限界に達してしまい、お会いできず。またご縁があったらよろしくおねがいします。

…でも、このヒゲの紳士との再会を果たせなかったかわりに、色々と

(最後の以外は伊勢丹メンズ館にて撮影。一番最後のは、リコー・ペンタックスのショウルームに飾っていただいた自分の作品。嬉しくてもののついでに掲載)

日野のイオンでしか買い物をしない普段の僕なら絶対に会うことのない作品達に出会うことが出来たのでした。袖すり合う程度の出会いも、磨けば貴重な宝石のように輝くのだということを教えてくれたヒゲの紳士さんとお連れの女性に、ありがとう。

※注 この展示の責任者近影ではありません


閑話休題。

さて、食事を終えて募る疑問もそのままに、お店を出ようとしたそのとき、私はお店のマスターからヒントを頂きました。

この、一見乱雑に見える展示の意図を集約した場所が、この店内にもう一つあるとのこと。

そこへ行くと、この展示の意図が少し、見えてくる、少なくとも自分はそう感じたと。

マンボウになりたい。

その言葉を無視できるはずもなく、マスターの示す、その場所へ向かって店内を回遊。

その個室に遺された作者の言葉に触れた瞬間、差し込む朝日のように、謎は一つの形となって私の中を駆け巡りました。

生命の循環の終着点であり、始まりの場所にあるそれ。

この、私という器には何が載っているのか。

さっき食べたカレーか、プリンの味か、隣に座った常連の男性が食べている干物の匂いか、作者のお知り合いの彼のまだ見ぬデニムの青か、芸大の祭りのカレーか、仕事で訪れた栃木の湯葉バーガーか。

日々を形作る私という存在とは。

日々が形作る私という存在とは。

ここにいる私とは、何者か。


等々…。

示唆に富んだ作品を感じることが出来ました。

おやすみなさいを皆さんに伝えて。

私は、お腹も気持ちもいっぱいで、お店を出て、帰路に着いたのでした。(了)


2019.9.9 追記。

その後、吉田さんからお知らせをいただき、この男性のお店はエブリデニムという無店舗型のデニム専門店で、今は新宿伊勢丹メンズ館8階のイベントスペースに、期間限定で来ているのだと教えていただきました。

ありがとうございます。



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