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白球と野菜に追われた僕の青春、、、part②

サクッ、サクッ。移植ゴテが土に入るたびにいい音がなる。まさにスイカの苗を植える真っ最中だ。あ、移植ゴテとは小さいシャベルのことを言う。
優しく丁寧に、赤ちゃんを扱うのと同じように、そして苗にストレスがかからないように素早く土につけてあげる。そっと、根に土をかける。もちろん優しく丁寧にそして素早く。その後は水をかけてあげて最後のおまじないをする。
「大きくなれよ〜」って喋りかけるのだ!馬鹿らしく聞こえるかも知れないがこれは本当に効果が出る。
前にどっかの学者が野菜が育つまで1個の苗にはプラスの言葉を、もう1個の苗にはマイナスの言葉をかけた。すると、プラスの言葉をかけた苗はすくすく成長し、美味しく育った。
しかし、マイナスの苗は糖度や栄養価が低い、美味しくない野菜が育ったと言う実験結果がある。
野菜は褒めて育てないとダメな生き物なのだ。と、、僕も。。。です。。。
この時ばかりはクラスのヤンキーも目がとろんとして大きくなれよ。とささやいている。かわいいとこあるなと思い笑っちゃう。半年後に退学となるが。
土なんか触ったことも無さそうな清楚系女子も「うわー。」など言いながらも、楽しそうに土いじりをする。うんこ座りで。

キンコーンカンコーン。1時間目終了のチャイムが鳴り農業用の教室へと戻る。
2時間目はスイカについての栽培方法や座学、それと農業においての基礎を学ぶ。
今思えば、若月の熱い農業授業は多分お金を取れるくらい価値のある物だと思う。
そんな授業なのに聞く耳を持たない僕は、せっせと周りの女子にちょっかいをかけるのである。それに若月が気づかない訳無い。立たされる。ただ立たされるのではない、農業用の水が入ったジョウロを2つ持たされて立たされる。これが本当に重い。
そしてその水を流しに流すのはもったいないから花壇に水を撒いて終了となる。
抜け目がない。
座学があるときは1時間圃場、1時間座学。ないときはずっと圃場となるのだ。
普通の高校では絶対にないタイムスケジュール。3年時にはより専門的になるので6時間ずっと圃場ということもあった。

そして、今日も1日をこなして部活へと行く。農業で体力を激しく消耗した体で。お分かりの通り、野球部は弱くても練習は厳しいで有名だ。入学したばかりで慣れない学校に慣れない農業、そしてまだ仲間のいない野球部。
1日があっという間になったのはこの時からかも知れない。

つづく。。

読んでいただきありがとうございました!

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