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“このまま”30歳になるのが怖かった

2023年。私にとって一番大きかった出来事は、30歳になったということだ。

書くまでもないけれど、1993年4月から1994年3月に生まれた人で、今生きている人は、全員が自動的に2023年度内に30歳を迎える。抗う術はない。
今年も健康診断で「異常なし」をもらった私は、6月の誕生日に30歳になった。1年が終わろうとしている大晦日の今日、今更改めて気づいたのだが、12月に立つと6月は真反対にある。つまり、6月生まれにとって、12月というのは今の年齢になって半年であり、次の年齢になるまでも半年だ。
キリが良くて、なかなかいいではないか。

話は戻って、今年私は30歳になった。
振り返ると、私は30歳になることに強がりながら、焦っていた。歳をとるのが嫌なわけではない。ただ、このまま30歳になってしまうことに恐れを感じていた。“このまま”という言う時の、“このまま”がどんなままなのかも明確ではなくて、ただぼんやりとした不安から目を背けるべく、会う人会う人に「30代が楽しみだ」と言って回っていた。目の前の人に投げて跳ね返ってくる自分の言葉で、自分を言い聞かせるために。

そうやって迎えた誕生日は、もう6年ほど同じ会社で働いている親友たちが祝ってくれて、プレゼントももらったりなんかして、幸せに迎えた。構えていたほどには何も変化は感じず、まだ自分の足の形に馴染んでいない新品の靴を日々履き慣らすように、私は“30歳の私”になった。そうして半年が経ってようやく慣れてきた頃に、やっと、30歳になることに焦っていた自分と向き合うことができている。

そうして、「このままの自分で30歳になるのが怖い」と感じていた“このまま”の正体も徐々に明らかになった。気づくきっかけになった出来事がある。

30歳まで数ヶ月を切った去年の冬か今年の春頃に、人生初めてマッチングアプリに登録をしてみた。人見知りの自分が「アプリで人と出会うなんて」という苦手意識を長く持っていたけれど、最近はぴったりな相手との結婚生活を送っている友人から「実はアプリで出会ったんだよ」などと聞くことも珍しくない。正直、ここ数年そういった出会いも無いし、やってもみてもないのに“苦手”と遠ざけるのも勿体無いかもしれない。実際どんなものなんだろうかという好奇心も重なって、何種類かあるアプリの中から、一番よく聞く名前のアプリに登録をしてみた。

実際に登録してから、結果的に誰とも会うことなく辞めるまでは短く、2週間ほどだっただろうか。数人の人と二言三言のやり取りがあって、正直なんだかうんざりすることばかりだった。
私のことを何も知らない人から、数分に一回のハイペースでアプローチがかけられて通知が増えていくのにも嫌気がさしたし、何通もくる見知らぬ人からのプロフィールを、画面をスクロールしながらタップ一つで「スキップ」と「いいね」で振り分けていく自分も嫌だった。

そうして自分をすり減らすのもバカらしくなって、始めて1週間くらいでもうやめようと思っていた頃に、1人の人とのメッセージのやり取りが続くようになった。年下で、趣味も違ったし、仕事も自分とは全く毛色の違う職業だった。ただ、エネルギーを削がれたその他の人たちとは違って、その人とのメッセージのやり取りは心地よかった。“違い”を尊重していることが短い言葉の中にも伝わってきたし、たわいもない話ができた。何より顔の見えないアプリ(その人はちゃんとプロフィール画像を出していて、イケメンでもないというところがまたリアルだったけど)の中で、その人はちゃんと人であることが実感できた。そして、同郷だった。

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