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諸星大二郎作品から影響を受けた楽曲(情報募集)

諸星大二郎といえば、クリエイターに与えた影響という面でもよく語られます。今回は楽曲に絞って取り上げます。あくまで「影響を受けた」というだけで、「諸星作品がモチーフ」ではないものも多いですが。といいつつ、そこまでネタが集まってないけど見切り発車で書き始めました。「これもあるやろ」っていうの、どしどしコメントなど頂ければありがたいです。順番に深い意味はありません。


Yellow Magic Orchestra「THE MADMEN」<サーヴィス>1983

"Hear the madmen call"

作詞:細野晴臣、ピーター・バラカン 作曲:細野晴臣
確からしさ:◎

細野 もともと、ネイティヴな民族にすごく惹かれていた。特にインディアンだったのですが、シャーマニズムとかね、そういうことにすごく興味があった。ちょうどテーマが同じだったのです。『マッドメン』はそれが日本とつながっていくという、その「強引性」がすごかった。
ーー文芸別冊総特集 諸星大二郎 [リスペクトインタビュー]細野晴臣 2011
細野 内容はあまり関係ないかもしれないんですけど、歌詞、発想は諸星さんの『マッドメン』からです。ただ、綴りが違ってしまって。
諸星 僕も初めは、ニューギニアの「マッドメン」はこっちのMADかと思ってたところがあるんですけどね。
細野 泥ですよね。
諸星 泥。本当はMUDなんですね。
細野 で、MADMEN、気の狂った男になっちゃって
ーー世界伝奇行 パプアニューギニア・マッドメン編 [二人の"マッドメン"対談] 2015

もっとも有名なのはこれですよね。『マッドメン』(1975~)の土着感と対照的なテクノサウンドながら妙な親和性があるのが不思議です。CDのライナーノーツでも諸星大二郎について語っているらしいです。細野さんのベースは国宝だ~~。


筋肉少女帯「エニグマ」<Future!>2017

"トコイ トコイ トコイ"

作詞:大槻ケンヂ 作曲:内田雄一郎
確からしさ:○

めっちゃかっこいいプログレメタル。トコイといえば『闇の中の仮面の顔』ですね! (1978,「妖怪ハンター 地の巻」などに収録。)ライブではオーディエンスがみんなでトコイトコイするのかと思うと最高です。「ご一緒に 呪え~!」 (ライブ版は #検索各々で 。)下に張ったニコ生でもトコイについて語っています。

大槻 前作の「エニグマ」の「トコイ トコイ」っていう歌詞は諸星大二郎先生の「闇の中の仮面の顔」に登場する言葉だったんですけど、今回の「I,頭屋」の歌詞も同じく諸星先生の「鎮守の森」という短編マンガがモチーフです。
ーー筋肉少女帯「ザ・シサ」インタビュー 2018


筋肉少女帯「I,頭屋」<ザ・シサ>2018

"「頭屋!」 生贄ってやつかな? 「頭屋!」 役割ってやつじゃない?"

作詞:大槻ケンヂ 作曲:本城聡章
確からしさ:◎

大槻 “振り返れば30年。その時間とは何だったんだろう? そして、今後はどうなるんだろう?”っていうことを歌っているのが「I,頭屋」ですね。“頭屋”というのは神事を司る人のことで、ある種の生贄的な性格も持っていたという説もあって。詳しくは諸星大二郎先生の『鎮守の森』という短編漫画を読んでいただければ全て分かります。
ーー【筋肉少女帯 インタビュー】世の中には視差がある 正しいものなんて何もない 2018

タイトルの通り「一年頭屋」がモチーフで、関連作品は『鎮守の森』(1983,「諸星大二郎自選短編集 汝、神になれ 鬼になれ」などに収録。)「アーティストというのも消費される生贄なんだよ」というテーマながらキャッチーな曲に仕上がっています。「で、どうですか?」と聞く側にも問うてくる曲。ちなみに「ザ・シサ」内の曲「オカルト」はモロ☆由来ではないけれど、UMA好きな人は楽しめるMVだと思いますモケーレ・ムベンべ。


筋肉少女帯「詩人オウムの世界」<サーカス団パノラマ島へ帰る>1990

"オーム(オーム、オーム、オーム)"

作詞:大槻ケンヂ 作曲:橘高文彦
確からしさ:○

橘高文彦作曲だけど橘高メタルじゃない曲。アバンギャルド。【追記あり】諸星ファンにとって「オーム」といえば『孔子暗黒伝(1977)ですが、最近オーケン氏ご本人による投稿で「オウム真理教ではなく諸星大二郎の印象をもととした」という旨の発言が確認されました。(有料記事のため書き起こしは控えます。)ログが残る形で自作解題をしてくれるの、うれしいですねえ。

ほかにも筋少でモロ☆由来の歌詞があった気がするが思い出せないので心当たりのある方はぜひ教えてください

[補足] コロナ・ブックス「諸星大二郎の世界」内の「諸星大二郎の本棚」によると、諸星邸の本棚には"キング・クリムゾン、筋肉少女帯、坂本龍一など"のCDが並んでいるという。どのアルバムなんでしょう。

[補足2] BSマンガ夜話の「ぼくとフリオと校庭で」回は大槻ケンヂも出演。若~い。ネットの海を探せばあるので #各自検索 でよしなに。


人間椅子「恐怖の大王」<怪談 そして死とエロス>2016

"眠れる荒神が 時の静寂破り 馬頭星雲から 目を覚ます"

作詞:和嶋慎治 作曲:和嶋慎治
確からしさ:○

人間椅子って、字面や見た目から「和風曲メインのバンドなの?」って思われてそうだけどそうではない。メインはバリバリのブリティッシュハードロックなのだ。和嶋慎治は諸星大二郎ファンを公言しているので暗黒神話(1976)などを念頭に置いた作詞だと思われる。「試練を伴ってオリオンの果てから現れる」わけだし。文字ソースはないのだがMCで言っていたような気がする…。

[補足] 人間椅子はH.P.ラヴクラフトモチーフの曲が名曲ぞろい(公式プレイリストもある)。あと日野日出志の同名漫画がモチーフである幻色の孤島」は超絶プログレかっこいい。


平沢進「夢みる機械」<サイエンスの幽霊>1990

"最終コマンドとして銅線コイルのトーテムに一礼する
苦難の助手よ わたしに続きたまえ"

作詞:平沢進 作曲:平沢進
確からしさ:△

再びテクノポップ(多分)。『夢みる機械』(1974,「諸星大二郎特選集第2集 子供の情景」などに収録)との関連がささやかれるが現時点でソースは不明。(ソースを求めてこのページにたどり着いてしまった人、申し訳ないです……。むしろ情報募集してます。)Live版、デラワーカメラで撮られて魂を抜かれる馬の骨たちの断末魔が何度聞いても面白い。それにしても会人を従えてテスラコイルに一礼する平沢まじかっこいい


オワリカラ「夢見る機械」<イギー・ポップと讃美歌>2011

"夕焼けの街の無人の工事現場 立ち入り禁止のあいつも目を閉じ夢の中"

作詞:タカハシヒョウリ 作曲:オワリカラ
確からしさ:○

いつだったかこの『漫読家』でも紹介した、日本の誇る至宝漫画家の諸星大二郎が、かなり注目されている気がするのだ、ここ最近
『壁男』『夢みる機械』などオワリカラの曲タイトルにも使わせてもらうくらいに僕は大ファンなのだが、どうやら来ているようなのだ。
ーーオワリカラ : タカハシヒョウリの「火星から来た漫読家」【第14回】 2013

最先端の4人組ロックバンド「オワリカラ」のタカハシ氏はかなりサブカルに造詣が深いらしいです。いろいろなインタビュー中で諸星大二郎を話題に出している。諸星以外の漫画や映画をモチーフにしたと思しき曲も多数。「壁男(あらわる)」<Q&A>に関する記事はむしろ「冨樫漫画描け論」がオモシロイ。しっかりと最近の作品オリオンラジオの夜」も追っているのがさすが(該当記事)。

[補足] 「夢見る機械」はしっとり目な曲だが、オワリカラのヒットチューンはサイケデリックかっこいい曲のほうだと思う。「今夜のまもの」とか。

[補足] 大槻ケンヂとの対談では「『キラキラと輝くもの』のジャケット(ill.高橋葉介)を見て、『先を越された!』と思った(笑)」と語る(該当記事)。

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http://hyouri-t.jugem.jp/?eid=663(タカハシ氏blog)


THE PINBALLS「アダムの肋骨」<時の肋骨>2018

"アダムの骨が動きだしてる 時間は逆行して溶けだしてる"

作詞:THE PINBALLS 作曲:THE PINBALLS
確からしさ:◎

古川 諸星大二郎さんのマンガに「アダムの肋骨」というタイトルがあって、そこから取りました。イブ……女性のことをあえて「アダムの肋骨」と表現したそのタイトルがカッコいいなと昔から思ってまして。イブはアダムの肋骨から生まれた、だから人間は何かしらが欠けてるものだ、とかそういう考えも好きなので、歌詞はそこからインスピレーションを受けて書きました。
ーーTHE PINBALLS「時の肋骨」インタビュー 2018

4人組ロックバンドTHE PINBALLSのメジャー1stフルアルバム1曲目を飾る曲。疾走感があってかっこいい。『アダムの肋骨』(「諸星大二郎特選集 第1集 男たちの風景」などに収録)は1976年の作品なので、40年以上の隔たりがあると思うと感慨深い。THE PINBALLSはTVアニメ「伊藤潤二『コレクション』」のOP曲「七転八倒のブルース」を提供したことが記憶に新しい。


トリプルファイヤー「ちゃんとした鬼」2018

"思ってた鬼はこんなんじゃないのに(おに おに おにおにおに)
思ってた鬼よりちゃんとした鬼(おに おに おにおにおに)"

おにおにおに

https://www2.nhk.or.jp/school/movie/clip.cgi?das_id=D0005410082_00000

【2020/6/14追記。殺人豚鼠様から情報提供いただきました。ありがとうございます!】

作詞:吉田靖直 作曲:鳥居真道
確からしさ:◎

本物の鬼が、絵本に書いてあるまんまの鬼の姿だったら逆に不自然なんじゃないか、想像の余地を残したい、という歌詞です。
曲作りは諸星大二郎的な世界を意識しながら取り組みました。
ーーほうかごソングス | NHK for School

4人組ロックバンド「トリプルファイヤー」による、なんとNHKの学校向けコンテンツサイト「NHK for School」への提供楽曲です。「ねらい:節分・鬼について興味・関心を持つ。」とのこと。「ねらい」が存在するニューウェーブならぬ『オニ・ウェーブ』な楽曲。作詞の吉田さんは神社の跡取り息子らしい。一度聞くと忘れられない曲です。おにおにおに~~。ど次元味を感じる。



まとめ(雑記)

・ ジャンルとしてはロック多めの結果となりました。初期シュールギャグあたりはEDMなんかも合うんじゃないかと思うので登場を待ちたいと思います。

・ 2010年代の楽曲も多く、幅広い世代に影響を与えていることがわかります。

・ 『夢みる機械』は「世にも奇妙な物語」で映像化されてたりしますし、クリエイターの心を動かすんでしょうね。……そういえば「壁男」も映像化していたんだった。

・ 「これも!」という曲があればコメント欄かtwitterで教えてください!

・ 関連情報
諸星大二郎のご子息は音楽系に進まれているということで今後が実に楽しみですね!「田中圭一のペンと箸」でも登場されてます。

・ 普段聞かないアーティストの楽曲も聞いてみてくださいね!






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