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【解説】教科書では教えてくれない、英国メイドの真実
はじめに
めくるめくめぐるの世界へようこそ、書店員vtuberの諸星めぐるです。
みなさんは、「メイド」と聞いてどんなイメージを浮かべるでしょうか?
秋葉原にいるかわいらしいメイドさん、クラシックメイド、様々ですよね。
今回は日本で独自の文化に発展した「メイド」のその歴史と真実について解説します。
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ぜひ文字で読みたい!という方は10分ちょっとの「おかえりなさいませ」です。
それではどうぞ!
メイド(使用人)とは?
メイドとは、清掃、洗濯、炊事などの家庭内労働を行う女性の使用人を指し、狭義には個人宅で主に住み込みで働く女性の使用人を指す。
中世以前の城の使用人は奴隷
中世から近世の使用人は男性がメインで、家政婦が夫人の代わりに家事を管理し、身の回りの世話は侍女が行っていた。
担い手は中流階級の稼ぎ場所を探す女性で、中流階級の家では妻と娘が家事をしており、メイドはまだ存在していなかった。
18世紀ごろになると家事使用人としてのメイドが登場する。18世紀後半には男性の使用人を雇用するのに「使用人税」が課税された。
さらに、このころから家事をしないことが一種のステイタスとなり、英国の栄華の最高潮ともいわれる19世紀ヴィクトリア朝に入ると、一気にメイドの数は増えた。
対照的に男性使用人たちは給金と税額の高さと、女主人たちが扱いにくいのもあり、徐々に数を減らしていったのである。
世はまさに、英国メイド絶頂期である。
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女性使用人のおもな職種
【上級メイド】
・家政婦(女中頭):女性使用人のドン。女主人の代理として屋敷の家政を管理。
・料理人(コック):その名のとおり、料理をする。家政婦のない家では兼任。
・侍女(小間使い):女主人の身の回りの世話をする。
・乳母(ナニー):女主人の代わりに子守をする。当時、奥様は子育てをしないのが一種のステイタスだった。どういうこっちゃ。
・女家庭教師(ガヴァネス):担い手は困窮した良家の出身が多く、使用人と客人の中間の扱いだったらしい。人間関係で悩む人が多かったそう。
・客間女中(パーラーメイド):従僕の代わりとして、接客や給仕をする。背が高く容姿の良さを重視された。一方で他のメイドからは距離を置かれがちだった。
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【下級メイド】
・家女中(ハウスメイド):屋敷の掃除をする。
・台所女中(キッチンメイド):料理人を補佐する。料理の下ごしらえや皿洗い。
・洗濯女中(ランドリーメイド):ひたすら洗濯。当時、洗濯は重労働だったが、経費のかからない洗濯屋へ出すようになると、洗濯女中は姿を消していく。
・雑役女中(メイド・オブ・オールワークス):すべての家事をこなすメイド。メイドをひとりしか雇えない中流階級の家にいたのはこの人。見栄のために週一で雇われることも。
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メイドの仕事と需要と供給
なぜ、過酷ともいえるメイドの職業に募集が殺到したのか。
それには世知辛い需要と供給の一致があった。
まず、ヴィクトリア朝の当時、女性の仕事は限られていた。
メイドのなり手はおもに、農村出身の少女たちで、19世紀後半には都会の少女は店員や女工として働くのが主流になっていく。
その後、教養ある中流階級の淑女だったら家庭教師、労働者階級の少女だったら家事労働奉公(メイド)といった感じ。
建前としては、メイドとして働けば家事や礼儀作法を身につけることができ、花嫁修業になると花形だったとされる。大奥かよ。
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平のメイドはまず、家女中か台所女中からのスタートとなる。
昇進を狙うなら「台所女中」将来、出世して料理人や家政婦になれる可能性があるからだ。しかし、皿洗いは重労働で離職率も高かった。
また転職の際は、元雇用主が良い紹介状を書いてくれなければ、雇用条件の悪い職場でしか働けなかった。
メイドの中で最も嫌がられた職は、雑役女中の仕事。ひとりですべての家事をこなす、ワンオペすぎるのだ。
仕事内容
ここでは、ヴィクトリア朝のメイドが具体的にどのような職種で、どのような職務を行っていたかを解説する。
まずは花形上級使用人から(平メイドたちは制服必須だが、上級使用人の家政婦や侍女になると私服での奉公を許される。)
家政婦
みなさんご存じ、ロッテンマイヤーさん!!である。
全ての女性使用人のトップ。女主人の代理として家政を管理。
敬意を払って独身でも「ミセス」と呼ばれた。
料理人
こちらは厨房のトップ。
家政婦の指揮下には入らず、独自に台所女中を指導できた。
料理の腕が良ければ、料理人は欠かせない職種のため、女主人がメニューに口を挟めず、言いなりになることもあったとか。
侍女
ひたすら女主人に仕える。(そのため、ほかの使用人たちから距離を置かれることも。)
貧しい中流階級のレディや、ファッションに詳しいフランス人を雇うことが多かった。ただし、若い女性が多く雇われ、歳を取ると失業というハイリスク。
乳母
女主人に代わって、子育てをするメイド。当時は子育てをする時間が無駄と考えられていたため。(意味わからん)
生まれたばかりの赤ん坊は、母乳が出る女性を雇った。
ある程度成長すると、しつけなどの教育を兼ねた育児婦を雇う。
家女中(ハウスメイド)
一般的に知られているメイドのこと。
それまではおさがりを渡していたためか、女主人と間違えられる場合があった。このため主人との差別化のために制服を着させられる。(実費負担!)
午前はピンクや灰色のプリント地のドレスで掃除をし、午後は黒とフリルのついた白いエプロン姿で接客や給仕をする。
客間女中
執事や従僕のいない屋敷で、彼らと同じ仕事をするメイド。
従僕同様、背の高さと外見の良さが重視された。
手荒れを防ぐため、水仕事はさせなかった。もしくは手袋を着用させた。フリルたっぷりの華美なメイド服が特徴。
台所女中
料理人の下で働くメイド。一日中、薄暗く暑い厨房にこもって仕事をした。大きな屋敷では水仕事専用の流し場女中がいた。かなり過酷な労働のため、長続きしない少女も多かったという。徐々にステップアップしていき、台所女中頭になるのが目標。その後、料理人や家政婦に転職できる。制服は白キャップ。
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雑役女中
今までのメイドの仕事を全部一人でするメイド。
裕福でない中流階級の家庭が雇う。
あらゆる家事をひとりでこなす必要があったため、最下層のメイドでもあった。
ちなみに、エマはここからスタートだ・・・
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当時の求人情報(イメージ)
当時の求人情報をまとめてみると、こうなる。
週休:ほぼなし
(主人によるが、週に一度の午後半日休みと、月に一度の一日休み。あとは日曜日に数時間があった)
このほか、日替わりの掃除あり
門限:あり
特記:恋愛禁止!!
制服:自前(このための貯金や、メイドになる学校もあった)
住居:屋根裏部屋
年俸:家女中頭→20-28ポンド
家女中見習→14-18ポンド
(中流階級のベースが300ポンドである)
めちゃくちゃ厳しい。。。
英国メイドの娯楽
厳しく大変な日常を過ごしていたメイドたちは、ほとんどの収入を実家の農家に送る。
そんな彼女たちの余ったお金の使い道は、午後の休暇を使ったショッピングと読書だった。
読書はもっぱらロマンス小説。シャーロックホームズなんかも読んでいたらしい。
そして、特別に楽しみだったのが、一年に一度行われるクリスマスの翌日の祝日ボクシングデーのパーティー。
その日は、屋敷の使用人たちのためにダンスパーティが開かれたり、大道芸人たちがやってきてメイドたちを大いに楽しませたという。
おすすめ作品
「おだまり、ローズ 子爵夫人付きメイドの回想」
1899年に子爵夫人付きのメイドとして働いていた著者と夫人とのやり取りの35年間の回想録。ロジーナ頭いいし、めちゃ強い。
ISBN:9784560083819
「エマ」全10巻
おなじくヴィクトリア期のメイドさんの漫画。
エマは初めは雑役女中から始まるぞ。。。
とっても良いので読んで。
純愛だよ。。。
ISBN:978-4757709720
おススメ動画
イングリッシュ・ヘリテッジの「ヴィクトリアン・ウェイ」
ヴィクトリア期の料理を男爵家料理人のミセス・クロウコムが紹介する動画。
まずそうだけどオモシロい
参考書籍
今回の解説の大本となった参考文献はコチラ。
図説 英国メイドの日常 増補版
ISBN:978-4309763224
いかがでしょうか。
今回はここまで!
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それではみなさん、さよなら×3