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【民俗学】学校の怪談、何が1番怖かった?【解説】

みなさんの学校には【怪談】はありましたか?
先輩から、先生から、知り合いの噂から…いろんなタイミングで子供では解決出来なさそうな、学校にまつわる不穏な話を聞いたことはありませんか?

実はその「学校の怪談」、集団活動の萌芽を意味しているそうなんですが……どういうこと?

今回はそんな【学校の怪談】について解説します!

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学校の怪談の定義

実は学校の怪談というワードは、比較的最近の登場です。

1990年に、『学校の怪談』の小説シリーズが常光徹先生によって刊行、一大ブームを引き起こします。
その後、『学校の怪談-口承文芸の展開と諸相』(1993年、ミネルヴァ書房刊)によって同常光徹先生により収集されました。
ただし、「学校を舞台としたローカルな不思議な話や怖い話」は、それ以前から都市伝説は存在しています。(1970年代とか)


そもそも妖怪の流通には、「いい子にしていないとお化けが来る」という、しつけの場での利用もあると考えられています。

つまり、妖怪譚のような恐怖をあおる物語はただ怖いというだけでなく、『だからいい子にしなきゃね』という、人々の規範体系としても機能しているのです。
これは、良い人間形成にも関係している可能性があります。


常光先生曰く、学校の怪談の発生は以下の条件が関係しています。

学校制度において強いられる緊張の「解消と冷却」を求めた結果
現代の子どもたちの間に 「民俗的感覚」が残っている

常光徹

さらに、学校の怪談ではトイレや特別教室での「妖怪」の出現が際立ちます。
ここから、常光先生は学校の怪談は「非日常を生み出す文化装置」であると定義しています。


出現場所:トイレ

主な怪異

トイレの花子さん
花子さん一家、やみこさん、ブキミちゃん、太郎くんなどの亜種など大量に発生しているレジェンド怪異

詳しくはこちらから▼

赤紙・青紙
トイレに現れ、「赤(青)い紙いりませんか?」と聞いてくる怪異
亜種:赤マント・青マント、赤いちゃんちゃんこ、青ハンカチなど

青い船、赤い船
トイレでやる不幸の手紙

四時四十四分の怪
四時四十四分のタイミングでトイレとか特別な場所に行っちゃダメ


トイレという場所考察

個室の場合、完全には仕切られていない孤立した空間で無防備になる。

生理的・心理的な不安」が付きまとう。

学校の規律や秩序と逸脱して不浄である。



出現場所:特別教室

主な怪異

保健室の化け物
睨むベートーヴェン
人喰いモナリザ
屋上の13階段
理科準備室のガイコツ

特別教室という場所の考察

利用時間が制限されている非日常感
普段の様子が想像できない不安感


特定の場所に「怪談」が出現する理由

これらのトイレや特別教室に共通するものとして、以下のものが挙げられます。

⇒場所が限定されているということは回避可能な場である
⇒逆に知ってさえいれば、積極的に出会いにも行ける場所

恐怖は安全が確保されることで娯楽に反転する

橋爪(1994)


ここから、「学校の怪談」は子どもたちにとって、身の危険の恐怖を適度に調整できる【遊び】になるのではないかという考察ができます。

これはつまり、ジェットコースターやバンジージャンプ、お化け屋敷やホラーゲームなどを楽しむ感覚と同じ感じでしょうか。

学校という限定された安全な場所の中に、大人の知識も及ばない無法地帯を作り出し、
調整しながら危険を楽しむ、安全剃刀な遊び。
それが「学校の怪談」

そう考えると学校の怪談が量産され、大量に消費されるのに少しだけ納得できる気がします。

流通の変遷

本来、口承の形態だった当初(友達・兄弟など家族が媒介)から、
時代はどんどん変わってきています。

これには『学校の怪談』という言葉とオカルトブームの発生によるメディアの参入が関わっています。

テレビやネットを介して、さまざまな怪異が可視化し爆発的な人気をみせていったわけです。


怪異の教訓

学校の怪談はただ怖いだけではありません。
怪異に触れ、本来の規範体系の機能(教訓的)を子供たちなりに得ようとする場合があります。
そうして、聞いた怪談・妖怪の社会的背景を考えるようになり、さらに回避方法を考案し付け足す場合があります。
例 口裂け女の対処法、トイレの花子さんの悲しい事件 など

つまり、子どもたちが作り出した、安全性を保ったはずの怪異が暴走して自分たちを脅かそうとしたとき、学校(社会集団)の秩序を守りたがる気持ちが回避方法を生み出しているのかもしれませんね。


学校の七不思議

実は、あの有名な「学校の七不思議」は、内容が全国各地の学校で大きく異なります。

「七不思議をすべてしってしまうと怪異が起こる」
「逆に8つ以上知ることで怪異を回避することができる」

などのバリエーションがあります。

主な七不思議

真夜中のピアノ
テケテケが学校の廊下を走る
トイレの花子さん
うろつく人体模型
プールに引きずり込む霊
異世界につながる夜の学校
桜の樹の怪異
美術室のモナ・リザ
踊り場の大鏡
トイレの青い手
13階段
二宮金次郎のマラソン
体育館のボールの音
シンプルに亡霊がでる

などなど・・・

みなさんぜひ、自分の触れてきた学校の怪談について振り返ってみてください!
もしかしたら、これらの解説から逸脱した完全オリジナルな学校の怪談なんかも、あるかもしれませんよ。

参考書籍

「学校の怪談 口承文芸の研究I」
ISBN:978-4043649013

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