見上げる人と、見下す人

2016年に起きた東大生による強制わいせつ事件。それは歪んだ性意識から起きた事件ではなかった、と『彼女は頭が悪いから』を読んで知った。

被害者は普通の女子大生だった。

男性から可愛いと言われれば素直に嬉しいと思い、好きな男子の前ではおめかししたりおしゃれをしようとする。生まれたのは特別お金持ちだったり、特別貧乏ではなく、至って平凡な家庭。だからといって豊かな家庭の子を妬んだりはせず、別世界の人だ、とだけ捉えていた。

普通の女子大生だった。

そんな普通の女子大生がある日偶然東大生と出会い、恋に落ちた。その後2人は交際を始めた。その東大生にもっと好かれよう、期待に応えよう、とおしゃれやメイクなど頑張った。それが将来尻軽女、勘違い女と揶揄されるとはつゆ知らず。

事件は女子大生が東大生を交際が上手くいかず諦めようと思っていたときに起きた。

もともとその東大生は不純な目的で創設されたサークルの初期メンバーだ。初期メンバーでの飲み会に女子大生は呼ばれ、女子大生はもう会わないと伝えるために飲み会へ向かった。事件が起こるとは予想もせず。

事件の詳細については、ぜひニュースや『彼女は頭が悪いから』から知ってほしい。酷さが鮮明に伝わってくるだろう。
強制わいせつ事件が起きた後、集まったコメントは女子大生を非難するものばかりであった。

東大生の将来をダメにした勘違い女
これ、女の陰謀じゃねーの？
午前０時に男の部屋に行ってチチさわられて訴えているアホ女
自分から男五人と二次会で人の家行ってるのに、大学生だから何かあるのはわかるはずなのに、なんで被害者面してるの？

被害者は普通の女子大生。好きな人に好かれようと頑張っているだけなのに、事件後にはそれが勘違いと言われる。頭が悪いとも言われる。
ハニートラップを仕掛ける気はない、本当に普通の女性。好きな人に尽くそうと思った素直な女性。

そんな女性に起きた悲劇だからこそ、この事件は恐ろしい。誰にでも被害者になりうるからだ。
東大生による階級意識、が事件を引き起こした原因だと筆者は述べている。

もちろんここで強調したいのは東大生、ではなく階級意識の方だ。

自分より下の階級の人を見下したい、自分が格上であることを実感したい、ただそれだけのためにこの事件は起こされた。たったこれだけのために、と思うかもしれないが、これが階級意識が生んだ悲劇なのかもしれない。

相手の目線で物事を見れなくなる目隠しみたいなものが、今回の事件の加害者である東大生にはかかっていた。こんなことをしたら相手が嫌がる、ではなく自分の欲求が充たせるとしか考えることができなかった。小学生で散々守れと言われるようなことが、学歴トップの東大生には守れなかった。それが階級意識の怖さ。

であれば被害者はどうすれば非難されずに済んだのか。どうすればこんな事件は起きなかったのか。この問いに答えを出すのは難しい。

彼女は頭が悪いから