ビートたけしは、なぜ東京五輪のドローンを酷評したのか?
ズンドコにズンドコを重ねてついに開幕した東京オリンピック。
開会式は、部分的に「よかった」と言っている人もいますが、特にクリエイティブに関わる人からは総じて「残念」という感想を聞いています。
例えば、ビートたけしはテレビ番組で
「金返せよ…外国に恥ずかしくて行けないよ」
とまで言っています。
さらに安住アナが印象的なシーンとして「ドローンの地球のところとか」とふると、たけしは「あれ、コンピューター入れているだけだもんね」と返していた。
「ドローンだけはよかった」と言っている人が多い中で、なぜこのような発言をしたのか? 考えてみました。
理由1. 技術的に世界最先端ではない
今回、東京オリンピック開会式では1824台のドローンが使われ、東京の空を彩りました。
しかし、2020年の中国党大会イベントでは、5200機のドローンが使われています。
残念ながら、どちらがすごいかというと、圧倒的に中国です。
しかも、今回のドローンは、アメリカインテル社のドローンですが、インテルのWebページに「サンプル」として地球を描く動画が載っています。
3年前からインテルにお金を払えば誰でもやってもらえるレベルの技術です。
これを、世界に向けてどや顔で披露するという状況に対して、
「金返せよ…外国に恥ずかしくて行けないよ」
というのは、その通りとしかいいようがありません。
理由2. 物語がない
とはいえ、ショーは、技術が最先端であることだけがいいわけではありません。
例えば、トイストーリー3のこのシーン。
焼却炉に落ちる寸前。死を覚悟したおもちゃたちの"演技"は、心に来るものがあります。
トイストーリー3は2010年の映画で、すでに10年以上も前。CG技術の進歩はすさまじく、これよりリアルで繊細なCGはいくらでもあります。
しかし、この場面は、名場面として語り継がれており、今見ても感動します。
それは、この絶望的な状況の前に、子供たちと楽しく遊ぶおもちゃの姿や、子供が大学生になり興味を持ってもらえなくなったおもちゃの失望、そして、捨てられてしまう事への恐怖などが積み重なっており、そのクライマックスでの絶望の表情に至っているからです。
我々は技術に感動しているのではなく、物語に感動しているのです。
しかし、今回、東京オリンピックのドローンは、唐突感があり、物語がなにもありません。
単純な技術力では中国に負け、物語も語られていないので付加価値もない。
クリエイターの人から見ると「これ、世界に誇れるところがひとつもないじゃん」となっているわけです。
山積みの問題点
皆さんもご存じの通り、このオリンピックは問題点が山積みです。
その山を処理するのに手一杯で、それ以外がおろそかになっているというのもあるとおもいます。
しかし、このオリンピック開会式のドローンは
・昔、最先端だった技術力が、中国やアメリカと比べ大きく遅れをとっている
・イベントを通じてメッセージを伝える力がない
という2021年の日本の現状を見事に表現しています。
ビートたけしをはじめとする、クリエイターの人たちの落胆はこういうところからきているはずです。どこまで国民に届いているかはわかりませんが。
出場選手のみなさんへ
ただ、オリンピック出場選手の中には、世界最高峰の技術を持っている選手がたくさんいます。そして、メダルに届かない選手も、それぞれが周りの人たちとともに、努力を積み重ねてきた物語を持っています。
選手の皆さんには、その技術を最大限に発揮し、その物語がたくさんの人に伝わるよう、がんばってほしいなと思います。
関連記事
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?