プラチナプリント〜作品シリーズ「み熊野の」その3
一千年先の未来へ
作品シリーズ「み熊野の」より、プラチナプリント制作に関する記事を書いてまります。
プラチナプリントは古い写真プリントの手法(古典技法)の一つで、感光材料に現在のような銀ではなく「プラチナ」を利用したもの。保存性が極めて高く、紙が朽ちなければ半永久的という特長を有します。
わかりやすい解説のページをリンクします。
プラチナプリントの実際
こちらはライカプロフェッショナルストア東京で開催されました講座の取材記事になります。この分野の第一人者である久保元幸先生と共に講師を務めさせていただきました。実際の様子がよくまとまっておりますので、ご興味ある方はご一読いただけましたら幸いです。
紫外線光による感光
プラチナプリントは市販の印画紙などは存在しないため、自分で選んだ紙に、プラチナの感光溶液を塗布します。まさに手作業、手作り。
紙によって画像の出方は大きく変わり、また感光させる光によっても大きく違いが出ます。
紫外線を多く含む光源(太陽光、高圧ナトリウム電球、紫外線蛍光灯、メタハラなど)にて感光させ流わけですが、私の作品のように古い自然信仰をテーマにした場合、古くは神と同一視された「太陽」の光を用いるのはとてもいいように感じます。2018年熊野本宮大社へ奉納した作品群は高圧ナトリウム光で製作いたしましたが、次回こそ太陽光でと企んでいるところ。これも現地でプリントしたらと夢想したりも。
現地の植物から特別に漉いていただいた「和紙」
私の作品奉納の最も大事な部分は「保存性」です。遠き未来へ残す。その目標で大事となるのが「紙」と言えましょう。
現代の中性紙のかなりよく、何よりプリント自体がしやすいのでこちらをセレクトする手もあったのですが、やはり企画意図から考えるに現地の植物から漉いた「和紙」以外ないように思います。実際に千年前の和紙が実在する訳ですから、保存性という意味からもピッタリです。
熊野地域に「龍神村」という地があり、そこで古い時代の手法で伝統の「山地紙」を復活させた名人・奥野誠さんの元に出向き、特別に厚手の紙をお願いしました。和紙制作は寒い中行われるものでかなりの重労働、厚手となると作業量もまた増えますから大変恐縮したのですが、仕上がりを見て思わず声が出ました。重厚さと植物の繊維が絡み合って織りなす紙、これなら美しくまた荒々しい自然という「熊野」のありようとマッチして素晴らしい写真となること間違いなし。確信いたしました。
次回に続きます。