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【そして思い出し笑い〜こんな子、育てましたけど】 #31 ちがうちがう、そうじゃない…就活

保育士も幼稚園教諭の免許も取らずに
卒業しようとしていた長女。

就職が難しいのはわかっていました。

フリーターは許す。
けど、ニートは許さん!
と強く言い渡して

彼女の就活が始まりました。

しかしながら…

よくも、これだけスカタンを…と
こっちが泣きたくなるような
就職活動が始まってしまいました。

いや、事実、泣きました。

なかなか動き出さないので
私が勝手にサイトでいろいろ調べ

「ホラホラ、
保育の仕事しながら保育士めざす、
いうのもあるよ」
「意外と、工場勤務とかええんちゃう?
コツコツやるのは得意やん?」

などなど
水を向けてみるものの

「工場とか、ぜったいイヤやし」
「保育の仕事が向いてないから
ちがう仕事探してるんやん」と
文句だけはいっちょまえ(- -;;

ようやく、重い腰を上げて
面接に行き始めたな…と思ったら
なにやら様子がおかしい。

「お母さん、明日、
本町まで面接に行ってくるわ」

「本町?
あんた、方向音痴やのに
そんな都会のど真ん中、大丈夫?
場所、よーく調べとかなあかんで」

「あ、それは大丈夫やねん。
面接申し込んだら、
駅まで女性社員がお迎えに行きます、って
言うてはるねん」。

ん???

女性社員…???

なんでわざわざ「女性社員」???

「なあなあ、
どういうサイトで探してるんか
見せてみ?」と
ケータイの画面を覗いてみると

案の定、そこには
「girls job ナントカ」という文字が…

そうです。
彼女、ゼミのF先生の言葉を
褒め言葉と受け取ったまではいいけど

本気で、メイド喫茶とか
そういうところに就職できないかと
目論んでいたらしいのです。

いやいやいやいや…

悪いけど、それは無理よ。
人付き合いが苦手すぎて
いろいろやらかしてきたアナタに

水商売は無理よ。

「バーで働くのは、あかんの?
女性ばっかりの職場らしいねんけど」。

えっと…それは…
いわゆるガールズバーってやつですよね?

女の子ばっかりで
楽しそうな職場やん…

じゃねーよ!

こういうの、
ホント困ります。

バーで働くのはあかんことなん?
と言われれば
別に、あかんことではない。

だけど、
そもそも、向いてないと思うし、

女性であることを売るような仕事なら
なおさら、やらせたくない。

ある日、心斎橋まで面接に行くというので
聞いてみると、

「○○ラウンジいうとこ。
時給、2,000円やねんて!」

…………

あのさあ。ラウンジって、
何するとこなん?

お母さん、そういうの疎くて
さっぱりわかれへんねんけど

でもな、
2,000円の時給って
おかしいと思えへん?

そんなん、普通じゃないやん?

そう言ってはみたけれど
世間知らずの長女には通用せず。

結局、行かせることにしました。

なんでもかんでも否定すると
よけいこじれる。

もちろん、
受かるはずないやん、という気持ちもあって

もう、腹をくくって
好きなようにさせてみたんです。

その日はたまたま
私も、心斎橋に用があり

夕方、用事を済ませて
帰ろうとしていたら
面接に向かう長女とバッタリ。

そのまま、ついていって
お店の前で待つことにしました。

ふたりで歩いてたどり着いたのは
裏なんば、と呼ばれる
心斎橋のはずれの
場末感が漂う建物でした。

黒の蝶ネクタイに黒のベストを着た
やせこけた男性スタッフが出てきて
長女と一緒に
ビルの中に入っていったのを見た時

私、道端で、ひっそり泣きました。

あとで調べてみてわかったのですが
美人さんがマッサージしてくれる、
というのがウリのお店でした。

20年間も、この子に振り回されながら
それでも必死で育ててきたのは
なんのためやったん?

風俗まがいのお店で働かせるため?

道端で涙を拭いながら
どのくらい待ったでしょうか。

面接を終えて出てきた長女に、
「どうやった?」と聞くと
「合否はまた連絡します、やて」。

それ以上聞く気持ちにもなれずに
ふたり並んで歩き出し、

帰り道、心斎橋の蓬莱で
豚まんやらシュウマイやらを
買い込んで帰ったのを覚えています。

もう、私に
その日の晩ご飯を作る気力は
残っていませんでした。

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