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クニエ漫画グランプリ振り返り


授賞式前

実を言うと、この文章は各賞発表前の2月末に書いている。
3月2日にオンライン授賞式があるのだけど、そこでノミネート作家一人一人にコメントが求められるので、そこで何を喋ろうか、考えをまとめておこうと思ってのことだ。
(そして公開は授賞式のあとにするつもりで下書き保存していた)

コメントの内容は、「①なぜそのテーマを選んだのか?」 「②作品に込めた想いは?」 だそうだ。
賞は「グランプリ」「クニエ特別賞」「SNS読者賞」の3つなので、6人のノミネート作家のうち少なくとも3人には、受賞ならずのあとに自作について語るという、なかなかハードな時間が待っていることになる。
どんなに熱い想いを語ったところで、いや、むしろそれが熱ければ熱いほど、「だが受賞ならずだw」と思われながら(正確には思われていると思いながら、なのかも知れないけど)喋るとか、控えめに言ってだいぶキッツイ。

そして、3つの賞のうち「SNS読者賞」はTwitterでのRT投票で決まるのだけど、現時点で2作品が抜け出してる感じで、残念ながら僕の作品は下から数えた方が早いRT数となっている。
つまるところ、僕の「受賞ならずスピーチ」の可能性はとても高い。
もちろん他2つの賞の選考にTwitterでの動向は関係ないのでそちらが獲得できる可能性もゼロではないけれど、正直、楽観視できる材料は特にない。

そんなわけで、何を話すか考えていると、反省点ばかりが思いつく。

そもそも、「仲間」をテーマにした作品で仲間の葬式がファーストシーンってのがもう、気を衒ってて何て言うか今どきじゃない気がする。
少なくともSNS等で評価を得やすいのは、もっとキラキラしたものだろう。
まあ、わかってて敢えてやってるみたいなところもあるのでアレだけど。

登場人物にももっとこう、分かりやすいキャラ付けとかがあった方がよかったよな、と思う。
これに関しては、他の作品でも毎度思ってて毎度上手くできてないので、ようするにキャラを立てるのが下手なんだとは思うけど。
加えて、いつも心理描写をあっさり描きがちなので、今回は主人公の感情を描く際にかなり意識して解像度を上げてみたりはしたのだけど、その効果がはたしてどれほどあったものか…
やはり、「共感性」の部分が他ノミネート作に比べて低かっただろうことは否めない。

とは言え、自信のある点もないではない。
まず、17ページの読み切りとして完結していた一次選考応募作(こちらから読めます)を、話の流れはそのままに全6話の連載としてきっちり仕上げた構成力は自分でも褒めていいと思う。
縦スクロールで見ても見開きで見ても違和感の少ないようにコマを配置したり、登場人物の名前と対応するJリーグのサッカーチームのチームカラーをコマ外に配すなど、色々と工夫を凝らした点も、評価していいと思う。

…ただ、いかんせんどれも中身じゃなくてパッケージの話なんだよなぁ。

それらに気づいてもらう為には、まず読んでもらわないとならないわけで、その意味では宣伝の努力もちょっと足りてなかったかも知れない。(それもまた中身の話ではないけども)
先に上げたSNS読者賞のRT数で抜け出した2作は、どちらも作者さんが公式サイトだけでなくTwitter上でも読めるように画像をがっつり上げていた作品で、RT数が多かったのはそれが理由というよりはやはり内容がわかりやすく面白かった点からではあろうけど、さりとて自分もやって損はなかっただろうとも思う。
と言うか、やろうと思ってたけどバタバタしてて忘れてて、機を逃しただけなのだけど。(そして、やってて同じように下から数えた方が早い結果だったらもっとへこんでたかも、と、ちょっと忘れてよかった気もしちゃってたりもするのだけれど…)

なんにせよ、ガワよりも中身をもっともっと磨かないと、てな話。
「作品に込めた想い」との質問に、あらためてテーマに対する思い入れや熱量が他の5作品に比べて低い(低いように見える)ことに気づかされたというか。

まあでも、なんにせよ、反省点含めて色々とためになる機会だったのは間違いない。
半年間の連載中、原稿料がいただけたのもすごく大きかったし。

…って、ここまで書いて何だけど、こんなん授賞式で話せる内容じゃないなぁ。
もうちょっと当たり障りのない内容であらためて考えないとだわ。
(2022.2.28)


授賞式後

え――…っと、なんてな事言ってたら、獲ってしまいました。

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まさかのグランプリ!!!

前半読んでいただけた方にはお分かりだと思いますけど、本当に獲れると思ってなかったんだよなぁ…。
いやだって、本当に受賞者本人にも授賞式まで内緒とか、思わないじゃない。おかげさまで、発表直後のスピーチとか、頭真っ白でなんも喋れんじゃったよ。

そして、ちょっと時間置いての一人一人のコメントも、立て直せずにグダグダに。

いやね、ちゃんと準備はしてたのよ?
してはいたんだけど、まさかグランプリとは思わなかったんで「グランプリ受賞した人間がこれ言ったら嫌味では?」とか「反省点とか喋ったら推してくれた審査員の方に失礼にあたるな…」とか喋りながらグルグルしちゃって…。
テーマを選んだ理由で、引っ越しとコロナ禍が重なってしばらく連絡取ってなかった漫画家友達の安否を編集者経由で尋ねられててんやわんやした話とかをしようと思ってたの、まるっとすっぽ抜けてしまったし、
作品に込めた想いについて、すごく熱い主張とかはなくても読者を感動をさせることは出来るんじゃないかと思ってて、そういう方向での努力はしたし、読んで思ったり感じたことが僕の意図とずれてたとしても間違いではない、みたいなことをしゃべろうとして、ぐだって司会の方に「作品に込めた想いは秘密ということで?」と止められそうになってしまったりもしたし。
あれ、アーカイブとか公開するのかな? …まいったなぁ。

まあ、ここでさらに反省してちゃあ、それこそ読んでくれた方、応援してくれた方に失礼ってもんか。
「まさか」だの「予想外」だのばっか言ってるけど、めちゃめちゃ嬉しいのよ、マジで。

出来ないこと、至らないことはまあ多いと自覚しつつも、出来ることの中で最善を尽くす努力はした。
伝わるかどうかは怪しいなと思いつつもこだわった部分もたくさんある。
それらが、グランプリ受賞という形で認められたのなら、本当、報われた思いだよね。

そして、この結果を次に活かすべく頑張らないと、と思います。
差しあたっては連載目指して日々粛々とマンガを描いていかないとね。

…って、今までとやるべきことは変わらんってことか(笑)
(2022.3.4)

追記

そんなわけで、今のところは今まで通り、クラウドソーシングの広告マンガ等で日銭を稼ぎつつ、日常まんがや『記憶の底のIF』などを引き続き公開していく感じです。
まあ今後の状況次第ではあるけれども、そんなに大きく状況が変わるってことはないんじゃないかと個人的には思ってます。

まあ、予想に反してこれを機にめちゃめちゃ仕事が舞い込んでくれたりしても全然いいんですけどね。
そもそも、グランプリ受賞を予想できなかったやつの予想なんで。

そんなこんなで、『仲間のシカク』を読んでいただいた皆様、応援していただいた皆様、本当にありがとうございました!!
今後も頑張って面白い漫画を描き続けていきたいと思っていますので、引き続き応援よろしくお願いします!!!


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