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囲碁でビジネス感覚を養う 【第8回】コウ - 対極的な攻防と交換の価値

こんにちは、tocoです。

本連載は、囲碁の個別の戦術や概念について、ビジネス戦略との共通点を探ることで、ビジネスセンスを磨きつつ、囲碁への関心を高めることを目的にしています。

前回の「サバキ」に続き、
今回は「コウ」について解説します。

「コウ」とは

囲碁における「コウ」は、
互いの石を取り合う状況が永遠に続く可能性のある
特殊な局面のことを指します。

コウ規則により、直前の状態に戻す手は
即座には打てないため、別の場所で攻防を行い、
コウを取り返すための権利(コウの勝ち)を得る必要があります。

上図の通り、黒白が交互に石を取り合うコウの状況です。
詳しくは、こちらを参照ください。

身近な例でイメージを掴む

スーパーマーケットの特売品をめぐる
顧客と店舗のやりとりを考えてみましょう。

  1. スーパーが目玉商品を大幅値引きで提供する(店舗の攻め)

  2. 顧客が開店と同時に殺到し、すぐに品切れになる(顧客の攻め)

  3. 翌日、店舗は在庫を増やすが、また瞬時に売り切れる

  4. この状況が続くと、店舗は利益が出ず、顧客も必要な量を確保できない

これがコウの本質に近いです。

同じパターンの繰り返しでは根本的な解決にならず、全体の状況を見て新たなアプローチを導入する必要があります。

時には直接的な利益を一部諦め、り大きな文脈で解決策を見出すことが重要になります。

コウとビジネス戦略の類似性

この概念とビジネス戦略の類似性について、
要素を分解しながらまとめます。

toco作成

ビジネス事例:アップルとサムスンの特許戦争

アップルとサムスンの長年にわたる特許訴訟は、
ビジネスにおけるコウの好例です。

  1. 大局観:

    • スマートフォン市場全体のシェアと技術リーダーシップを見据えた戦略

    • 個別の特許争いを超えた、ブランド価値と市場支配力の競争

  2. 交換価値:

    • 訴訟コストと市場でのポジショニングのバランス

    • 一部の特許侵害を認めつつ、他の分野での優位性を確保

  3. タイミング:

    • 新製品発表のタイミングに合わせた訴訟の提起や和解

    • 市場動向や技術進化に応じた戦略の調整

  4. 代替案:

    • クロスライセンス契約や技術提携など、訴訟以外の解決策の模索

    • 新たな技術開発による差別化戦略

  5. 心理戦:

    • 訴訟を通じた競合牽制と自社技術の優位性アピール

    • 消費者の認識に影響を与えるブランド戦略

結果として、両社は長期にわたる法的争いを経て、
最終的には和解に至りました。

この過程で、両社とも自社の技術力をアピールし、
市場でのポジションを強化。同時に、
スマートフォン市場全体の技術革新も促進されました。

実践のためのヒント

  1. 局所的な利益だけでなく、事業全体や市場全体を見据えた判断を心がける

  2. 異なる選択肢の価値を慎重に比較検討し、最適な資源配分を行う

  3. 市場動向を見極めつつ、戦略実行の最適なタイミングを計る

  4. 常に複数の選択肢を用意し、状況の変化に柔軟に対応できるようにする

  5. 競合他社の動向を予測し、先手を打つ姿勢を持つ

結論

コウの概念は、ビジネスにおける大局的な判断と
戦略的な交換の重要性を示唆しています。

局所的な勝負にこだわるのではなく、全体の利益を最大化するための選択が求められます。時には短期的な損失を受け入れつつ、長期的な優位性を確立する戦略的思考が、ビジネスの成功には不可欠なのです。

次回は「シチョウ」について取り上げます。
長期的な追撃戦略について考察します。


最後まで読んでいただき、ありがとうございました。ご意見や感想などありましたら、コメントいただけると励みになります。

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