囲碁でビジネス感覚を養う 【第8回】コウ - 対極的な攻防と交換の価値
こんにちは、tocoです。
本連載は、囲碁の個別の戦術や概念について、ビジネス戦略との共通点を探ることで、ビジネスセンスを磨きつつ、囲碁への関心を高めることを目的にしています。
前回の「サバキ」に続き、
今回は「コウ」について解説します。
「コウ」とは
囲碁における「コウ」は、
互いの石を取り合う状況が永遠に続く可能性のある
特殊な局面のことを指します。
コウ規則により、直前の状態に戻す手は
即座には打てないため、別の場所で攻防を行い、
コウを取り返すための権利(コウの勝ち)を得る必要があります。
身近な例でイメージを掴む
スーパーマーケットの特売品をめぐる
顧客と店舗のやりとりを考えてみましょう。
スーパーが目玉商品を大幅値引きで提供する(店舗の攻め)
顧客が開店と同時に殺到し、すぐに品切れになる(顧客の攻め)
翌日、店舗は在庫を増やすが、また瞬時に売り切れる
この状況が続くと、店舗は利益が出ず、顧客も必要な量を確保できない
これがコウの本質に近いです。
同じパターンの繰り返しでは根本的な解決にならず、全体の状況を見て新たなアプローチを導入する必要があります。
時には直接的な利益を一部諦め、り大きな文脈で解決策を見出すことが重要になります。
コウとビジネス戦略の類似性
この概念とビジネス戦略の類似性について、
要素を分解しながらまとめます。
ビジネス事例:アップルとサムスンの特許戦争
アップルとサムスンの長年にわたる特許訴訟は、
ビジネスにおけるコウの好例です。
大局観:
スマートフォン市場全体のシェアと技術リーダーシップを見据えた戦略
個別の特許争いを超えた、ブランド価値と市場支配力の競争
交換価値:
訴訟コストと市場でのポジショニングのバランス
一部の特許侵害を認めつつ、他の分野での優位性を確保
タイミング:
新製品発表のタイミングに合わせた訴訟の提起や和解
市場動向や技術進化に応じた戦略の調整
代替案:
クロスライセンス契約や技術提携など、訴訟以外の解決策の模索
新たな技術開発による差別化戦略
心理戦:
訴訟を通じた競合牽制と自社技術の優位性アピール
消費者の認識に影響を与えるブランド戦略
結果として、両社は長期にわたる法的争いを経て、
最終的には和解に至りました。
この過程で、両社とも自社の技術力をアピールし、
市場でのポジションを強化。同時に、
スマートフォン市場全体の技術革新も促進されました。
実践のためのヒント
局所的な利益だけでなく、事業全体や市場全体を見据えた判断を心がける
異なる選択肢の価値を慎重に比較検討し、最適な資源配分を行う
市場動向を見極めつつ、戦略実行の最適なタイミングを計る
常に複数の選択肢を用意し、状況の変化に柔軟に対応できるようにする
競合他社の動向を予測し、先手を打つ姿勢を持つ
結論
コウの概念は、ビジネスにおける大局的な判断と
戦略的な交換の重要性を示唆しています。
局所的な勝負にこだわるのではなく、全体の利益を最大化するための選択が求められます。時には短期的な損失を受け入れつつ、長期的な優位性を確立する戦略的思考が、ビジネスの成功には不可欠なのです。
次回は「シチョウ」について取り上げます。
長期的な追撃戦略について考察します。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。ご意見や感想などありましたら、コメントいただけると励みになります。
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