【1分小説】白紙くんとハサミちゃん

お題:「栄光のドロドロ」
お題提供元:即興小説トレーニング(http://sokkyo-shosetsu.com/) 
      ※サービス終了しています
-----------------------------------------------


「白い体しやがって。潔癖症かよ」

 ゴミ捨て場で、新入りの白紙君は、華やかなチラシ君たちにいじめられていました。
 いつもは紙に負けている石ころも、今日ばかりは傍観者を決め込んでいるようです。

 ゴミ捨て場のそばには見渡す限りのレンコン畑が広がっています。
 朝の時間、学校へ投稿する子供たちの黄色いランドセルが、畑の間を縫うように歩いていきます。

 ゴミ捨て場のそばを、ひとりの子供が通り過ぎた時のことでした。
 ランドセルから、子供用の赤いハサミがひとつ落ちて、レンコン畑に落ちてしまいました。

「ひいいっ」

 ハサミが悲鳴をあげました。
 その子は気付かず歩いていってしまいます。

「助けて!」

 ゴミ捨て場の紙たちは見て見ぬふりです。

「助けてって言われても、ねえ」
「あんな水たまりみたいな畑に飛び込んだら、僕たちの方が死んでしまう」
「それにハサミでしょ?」

 白紙君は違いました。
 風の力で畑に飛び込んだのです。