見出し画像

ロリー•ギャラガー Top Priority

1984年頃の学生時代、私、レンタルレコード店でバイトの店員をしていました。そのレンタルレコード店で、私が「コンちゃん」と呼んでいた中学生のシャイな男子がいまして、5年後には一緒によくコンサートに行くことにもなる友人です。
1991年のロリーギャラガーの来日公演も、コンちゃんと一緒でした。

ある日レンタルレコード店で、チャーみたいな風貌のロッカー店長先輩が、いつものように店内でハードロックを流していて、その日はロリーギャラガーの「トップ•プライオリティー」でした。
店長先輩「こういうシンプルなのがイイんだよね〜アンプに繋いだだけ!みたいなやつ」

なるほど、シンプルでカッコよかった。

コンちゃんは、一人でよく店に来て、まだ中学生で小遣いも少ないのでしょう、いつも一枚だけ借ります。次第に慣れてきて私が話しかけると、まだ子供のようで、照れながらも嬉しそうでした。

借りていくレコードも始めはワムやa-haでしたが、次第にボンジョヴィやナイトレンジャーになり、次にヴァンヘイレンやU2になり、成長していく様子がよく分かりました。私は彼の兄貴分よろしく次々にオススメをして、彼もそれを借りては翌日「すごい良かったですー!」と、レンタル学習の日々を過ごしていました。

その後、店は閉めることになり、常連客達とお別れ会をした時、コンちゃんは最年少だしシャイなので私の隣に座らせました。しかし中学生ながらお酒を一杯飲むと一変。明るく大きな声で喋り始めました!
「もう〜最後に、タダで10枚借りてイイよって言われたとき、嬉しくって嬉しくって〜」と。
実は店の閉店が近づいてきた時、私は、けなげに学ぶ彼の姿についつい「最後だから10枚借りて行きなよ、お金は要らないから」と言ってしまったのです。笑

酔っ払ったコンちゃんがそれをバラしてしまい、他の常連客達から「ずるーいコンちゃんだけ〜私もタダにして欲しかったぁ〜」と大ブーイングが起こり、さすがに私も恐縮してしまいましたが、次第に皆は笑いだし、店長先輩も、先輩の隣で泣いてた銀座の姐さんも、笑っていました。

Top Priority   1979年

ロリーギャラガーの本作は、ハードでスピーディーで明らかにハードロック寄りです。特に最初の三曲がカッコよく疾走して爽快!バッドペニーは彼らしいブルースの佳曲です。(この四曲をここに貼っています)

ロリーギャラガーは大ヒット曲が無くアルバムも横一線で代表作が思い浮かばないです。初めて聴くならライヴアルバムが良いかなと思いますが、本作はポップス性も高く評価も高い方ですね。

コンちゃんとの仲は閉店後も続き、情報交換をしながら、彼が大学生の時は私の好みにとても似通った青年になっていました。笑

いつだったか、コンちゃんがKISSのライヴに行き「もうラビンユーベイビーの時凄かったですよ!会場が巨大なディスコ!」と報告し、私はエアロスミスに行き「アンコールのトレインケプトローリンでスティーヴンタイラーがいつの間にかアリーナの後方に回っていて目の前にいたんだよ!」と報告したり、ジューダスプリーストは一緒に二回行きましたし、ロリーギャラガーの時も一緒で、楽しくてそのまま街へ飲みに出ました。

その後、90年代に入り、コンちゃんは地元のレンタルCD店でバイトをしたり、最後は渋谷の某有名中古CD店で店員をして、一気に洋楽に強くなっていました。その頃になると彼のお気に入りは、マニックストリートプリーチャーやティーンエイジファンクラブ、ソニックユースと、別次元に昇っていくのですが、反対に私はすっかり社会人のおじさんになっていき、70〜80年代を後追いするだけで、次第に好みは離れていきました。

ほどなくした頃、コンちゃんは彼女を連れて私の家に遊びに来ました。彼はもうシャイではなく明るくて彼女に優しくて、有名中古CD店で買取査定までしている、立派な目利き屋さんに見えました。
「今60年代のアメリカのアイドル系ポップを担当しているんですよ」と言って、もはや私には未知の世界。私から学んだはずのSSWでも、いつの間にか私の知らないミュージシャンを沢山知っていました。
これらもそのひとつ↓

私も結婚して、次第に疎遠になり始めていたある日、コンちゃんから急に電話がかかってきて、かなり酔っていて、彼女と別れるかもしれない、「俺どうしたらいいんですか…」と泣いてるようでした。
それが彼との最後だったと思うのです。


青は藍より出でて藍より青し 
と言ったら高尚過ぎるけど、自分の好きなことを教え込んだ弟子が自分を超えていくのは嬉しい。

あの頃、コンちゃんは、タダで10枚貸した可愛いお客だったから、いわば、トッププライオリティ(最優先事項)の弟分だった。

コンちゃん、今どこに居るのだろう。
あの娘と家庭に居るといいんだけど。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?