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アリス•スチュアート 後編

ポールさんが「Good Music!」と言ったアリス•スチュアートのデビュー作「フルタイムウーマン」に続く2ndアルバムは「ビリービング」です。 
(前編の話は三つ前の記事です)

先日、レコードプレイヤーを購入したのを機に30数年ぶりにこのレコードを取り出すと、予期せず、中にレビューと歌詞カードが入っていました!?輸入盤だとばかり思っていました。

2nd   1972年
サブスクに音源ありません

さらに驚いたのは、そのレビューを読むと、1stアルバム「フルタイムウーマン」は、二十数誌の音楽誌の紙面を飾っていてローリングストーン誌、メロディメーカー誌をはじめミニコミ誌も、この2年間で聴いた最も優れた歌手だと褒めちぎっている、と記されています。私は中古や雑誌では見た覚えがなかったので、無名なミュージシャンだと勝手に思っていましたが、デビュー時は結構取り上げられていたようです。

発見されたレビュー、情報はこれだけ

1stの「フルタイムウーマン」のジャケット写真↓は印象的でした。ただ、レビューを読んでいくと、母アリス•スチュアートと写真の男の子、息子ジェシー君とのおかれている状況は必ずしもハッピーではないことが分かりました。それを知ってしまい写真のジェシー君がママになついてくる姿がちょっと悲しい気持ちにさせられます。

1st  1970年

1966年、彼女がフランクザッパと共演している頃、アリスは二度目の結婚をして男の子ジェシーが生まれました。家庭をもって田舎にでも住もうかと思った矢先、あるアーティストのセッションで彼女はギタリストとしてレコード会社に呼ばれ、そこで歌ってみないかと声を掛けられたことがきっかけになり、話が進みデビューアルバム「フルタイムウーマン」制作に繋がったようです。

そしてアルバム発売後何週間も経たないうちに五人でバンドを結成、それから半年もしないうちにアリスはそのバンドのドラマー、ボブ•ジョーンズと同棲するようになったらしいです。そしてバンドは三人に減りツアーに出るようになりました。息子くんはどうするのかと思ったら、息子のジェシーはジェシーのおとうさんが預かってくれることになったらしいのです。

2nd裏 クレジット無し
暗くて未来もない感じ

アリスは男っぽい性格であるといったコメントも読んだこともありますが、彼女の自由奔放な生き方ゆえ、この2nd「ビリービング」は、複雑な人間関係の中で制作されたようです。同棲相手のドラマーボブとベーシストとの三人のバンドによるツアーのロードムービーのようなアルバムともいえます。音楽的には1stの方が上質ですが、本作の一曲目「ビリーヴインサムワン」は彼女の曲の中で私は一番好きです。不安の中で何かを信じたいアリスの当時の心情がよく伝わってきます。

歌詞を読んでいくと、新しい恋人ボブと未来へ向かう希望と、まだ幼い息子ジェシーと離れ、いわば駆け落ちのような状況に不安を感じる曲も多く有ります。

たとえば一曲目では、「今までの人生は私の一人芝居のようだった。でも今はなにもかも違うわ。あなたが一度閉じた扉を開いてくれたの。だから私は信じることにしたの」と歌い、二曲目では「あなた、夢から覚めて!私はどうなるの?明日は光が来るの?それとも闇なの?私たちの恋は試練を忍び辿るの?」と不安な心情を歌っています。

彼女が残したアルバムは70年代初頭のこの2枚が主で、おそらく成功はしなかったのでしょう。彼らのその後のバンドライフについては不明です。

向かって右がボブ

ところで、レンタルレコード店でのポールさんの事でひとつ思い出した事があります。レンタル店は東京ディズニーランドの昔の最寄駅前にあるのですが、

ある日曜日の昼間、ポールさんは娘さんと思わしき若いママさんとお孫さんと思える可愛い女の子を連れて来店しまして、ディズニーランドのテーマソングを集めた企画アルバムのレコードを借りていきました。
雰囲気的にママさんと女の子は一時的に来日してポールさんを訪れていた様子でした。ポールさんはいつもと違う私服姿でリラックスしていてとても嬉しそうでした。

小さな可愛い女の子を連れた外国人ファミリーの来店で、その時、店にいた店長先輩や、店長にラブで店に長居している銀座の姉さんも「ディズニーランドに行ったのかしら」と話したりして、女の子にバイバイしながら、彼らを笑顔で見送りました。

小さな可愛い子がいるだけで、周りの大人は幸せですね。ふとジェシー君にも思いを馳せてみます。その後、母のアリスにちゃんと愛されていたのでしょうか。

人生は悲喜こもごもです。
ロックミュージシャンらしい道を選んでいった、母アリスの美しい声と不安な歌詞
ジェシーのこと、少し気になります。

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