春が来る
大量に降り積もった雪も、このところの暖かさでどんどん溶けている。春が来る。
今年は大雪で、庭木の枝が折れるほど降り積もった。雪をかいて道を作ったそばからまた降り積もる。そんな日々が続いた。だから、このところ続いた暖かい日により雪が溶け始めた時は、憎き雪よ溶けろ溶けろみんな無くなってしまえと喜んでいた。狭かった道もどんどん広くなり、雪で埋もれていた庭も広がっていった。どんどん広がっていくのがうれしかった。
これで冬が終わる、待ちに待った春が来ると心躍る一方で、実はどこかしら寂しさも感じている。雪国育ちの僕にとって、雪景色は美しいのである。一面何もかもが真っ白に染まった景色。降り積もった雪に掘った穴の中で揺れるロウソクの明かり。しんと静まりかえった夜。秋も終わりを告げ雪が初めて舞った日は、あっ雪だとなぜか心が躍った。雪は、憎いものでもあるが好きなものでもある。
そんなことを思いながらも、やっぱり春が来るのはうれしい。溶けた雪の間から顔を出す雪割草の黄色い花。水仙やチューリップの芽も、待ちきれないとばかりにもう地面から顔を出している。これからいろんな草木の芽がどんどん膨らみ、花が咲き乱れ新緑に染まっていく。ああ、春が来る。
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