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月山に登ってきました

女房子供にそそのかされ、月山に登ってきました。若かりし頃の体力はもはやないので、本当はあまり行きたくなかったのですが、こっちのコースはなだらかで急な登りは無いよとか、木道になってるんだよとか言ってやたら誘ってくる。要は、僕に車の運転をさせて連れて行かせようという魂胆なのです。そんな見え見えの魂胆丸っとお見通しなのですが、僕が誘いに乗ったのは、一度月山に登ってみたかったからです。


正確に言えば、中学の時の学校行事で一度月山に登っています。ただ、雪の残る斜面を時にふざけて滑り降りながら登ったというかすかな記憶があるだけで、山頂まで行ったのかどうかも定かではありません。それと、出羽三山のうち、羽黒山と湯殿山には登って参拝したことがあるのですが、月山はまだ山頂の月山神社まで行ったことがありませんでした。そんな訳で、月山に登ることにしました。


当日は天気も良く、快適なドライブでした。ただ、月山ビジターセンターから先は車がようやくすれ違えるような細い道となり、しかも急な登りのヘアピンカーブが延々と続き、神経がへとへとになりました。そんな脇で女房殿は、「ほら、ここ紅葉が綺麗」とか「見入っちゃう」とか感動しています。確かに綺麗に紅葉していますが、こっちは必死こいて運転してて、見たくても見る余裕なんかありません。腹が立ちます。が、気持ちを抑えて安全運転に努めます。そんなのろのろ運転で30分くらいでしょうか、ようやく登山口にたどり着きました。


やや雲が多めながら青空も見え、まずまずの天気でした。ただ、風があって冷たいです。案内では、片道2時間半くらいのコースでした。登山口からすぐの弥陀ヶ原は尾瀬のような湿地帯で、一面茶色に覆われていました。僕をまんまと運転手にさせたネタの一つの木道は、確かにありましたが、あっという間に終わってしまいました。だまされました。後は、石と岩がゴロゴロとした道を延々と歩くことになりました。


歩きづらいのでずっと下を向いて歩くことになり、せっかくの景色をさっぱり見ることができませんでしたが、それでも時折立ち止まってみる景色は、紅葉が丁度見頃になっていて綺麗でした。高山域になっているので高い木が無く、笹と低木の広々とした景色が広がっています。所々に小さな沼が点在していて、それもまた美しい景色を作っていました。


それにしても、女房子供の歩くペースが速い。スポーツ登山かと思うほどです。女房殿なんか、いつもはちんたら歩いていてもどかしく、歩くスピードが急に速くなるのは遠方にソフトクリーム屋を見つけた時くらいなのに、何でこんなにというくらいにすたすた登っていくのです。女性と登山は、相性が良いのでしょうか。山で見かけた人達は、女性が多かった気がします。半分以上は、女性だったでしょうか。


そんなこんなで、風は冷たいというのに汗だくになりながら、ようやく山頂にたどり着きました。そこには、絶景が広がっていました。手前には笹の緑の原が、そしてその先には見事な紅葉が広がっていました。視線を変えると、一方には雲海が、また一方には水田や街の景色が広がりその中を大きな川が流れていきます。雲が、自分より低いところを漂っています。雲より高いところに立っているんだと感動しました。急な斜面をのぞき込むと、下から風と共に薄い雲がわき上がり、手が届きそうな高さをすごい速さで吹き抜けていきます。登山はつらいけれど、山に魅せられるのは、そんな日常ではけして見られない景色を体感と共に見られるからなんでしょうね。


月山神社は、こじんまりした質素な社でした。そこで念願のお参りをして、山頂の岩場で絶景を見渡しながら、女房殿の作ってくれたおにぎりを食べました。風が強いせいでしょうか、座っている岩が揺れているような感じがしました。


月山に登ってその景色の美しさに感動しましたが、僕はもはや体力が劣ってしまっていることが分かり、美しい景色は家のテレビでのんびり見ている方が良いなと思いました。


それから、もう一つ分かったことがあります。僕は、高いところが怖い。

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