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今週の怪談プレイリスト(11月17日号)

最近見聞きしたなかでおもしろかったものをご紹介します。なるべくアップロードが新しいものを選んでいます。便宜上数字を割り振っていますが、ランキングではありません。

1.  BBゴロー「心霊ライト」

怪談レジェンド・稲川淳二のものまねで有名なBBゴロー。「あらびき団」での活躍を覚えている方も多いことだろう。ものまねでもなくお笑いでもなく、ストレートな怪談である今作。「内縁の妻」や「登録商標」など、地に足のついた単語で生々しさを構築したあと、ふいに訪れる怪異への急カーブがハイライトである。尚この作品のリアリティは、玩具メーカーで勤務していた筆者が保証する。

2.  ぁみ「事故で亡くなった後もトンネルでは…」

「怪談が得意になりたいなら、道案内の練習をするといい」とぁみは語る。相手が目的地にきちんとたどり着けるように、ステップごとに適切な質と量の情報を与えるのが大事なのだ、と筆者は解釈する。まさに道路を舞台にした今作では、そんな彼の丁寧な案内によって、聴く者は最悪の(つまりは最高の)タイミングである事実を知らされる。結末という目的地にたどりついたとき、我々は思い知らされる。怪談家として誠実な彼は、行き方は教えてくれても、帰り方は決して教えないのだ。

3.  朱雀門出「裸家」

聴く者を恐怖のどん底に突き落とすというよりも、底なのか天なのかわからない奇怪な場所に放り出すような物語。朱雀門出が得意とするのはそういった「奇妙な話」である。今作では妖怪譚のような雰囲気のある「あるもの」の出現シーンからはじまるものの、事実が明かされる途端、我々がいるところが「恐怖のどん底」なのだと気づく。そこではまた、奇妙も悲哀も似た色になり、不可分に混じり合っているのだ。

4. 田中俊行「そんなのあげちまえよ」

オカルトコレクター・田中俊行は、「おもしろい」のなかに「こわい」を含もうとする語り手だ。だから彼の物語は「怖がらせる」という機能性からすこし距離があり、純粋に物語としての強度が高い。筆者はそこに落語の怪談との共通点を見出している。今作でもまさに落語的なモチーフであるあの存在が、決してそれとは明示されずに描写されていく。最後までその存在の一般名詞を口にしないところに、彼の品を感じてやまない。

次回の更新は11月24日(火曜日)です。

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