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小さな手の中の花束

今だから笑える、私の失敗談。
もう30年ほど前の、小学校低学年の頃の話です。


当時、私の通う小学校では、
教室に飾る花を、生徒が自宅から持ち寄る習慣がありました。

“家の庭に、きれいな花が咲いたから”
“お祝い事があって、花をたくさん頂いたから”

そんなささやかな理由で、
教室にはいつも誰かが持って来た花が、
そっと飾られていました。

花を持って行った日は、

「今日のお花は◯◯さんが持ってきてくれました。ありがとうございます。」

担任の先生が、“朝の会”で報告をしてくれることが、
当時の私には、とてもうれしく、
花を持って行ける日を、密かに心待ちにしていました。


そんなある日、
母が新聞紙に包んでくれた庭の花を、
学校に持って行くことになりました。

私は朝からわくわくして、

「花の部分を下にして持って歩くのよ。」

そんな忠告をしっかりと守りながら、
どこか誇らしげに、
新聞紙に包まれた花束を持って歩きました。


いよいよ学校に到着。
私は真っ先に職員室の先生のところへ行き、

「先生、おはようございます。
 花、持って来ました!」

元気な挨拶とともに、
下に向けて持っていた花束を、
勢いよく先生に差し出した瞬間。

先生の目が点に……

「さとちゃん……
 あの。。お花がないようなんだけど??」

「えっ!?」

先生に差し出した、花束の先を見ると、
なんと、そこに花はなく、
私は、抜け殻のようになった新聞紙だけを握っていたのです。


家を出る時には、
確かに、新聞紙に包まれていた花がなくなるなんて……
謎は深まるばかり。

半べそをかきながら、
授業が始まるまでに、一度来た道を戻り、
花を探しましたが、結局どこにも見当たりませんでした。


先生も母も、笑い話にしてくれましたが、
大事な花を落としてしまったことがショックだった私は、
大人になった今でも、花束を持ち歩く時には、少し緊張してしまいます。

このエピソードは、2021年7月18日放送のNHK-FM『眠れない貴女へ』で紹介されました。https://www4.nhk.or.jp/anata/


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