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AIイラストの時代に、イラストレーターが生き残る術

(この記事は、『イラ通・スクール』2023年3月の講義を転載したものです。この講義を書いたあと、さまざまな動きがあり、一部の情報は古くなっています。近く、最新の動向を踏まえて「AIイラストの時代に生き残る術02」を『イラ通・スクール』にて執筆予定です。)
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AIイラストが大きな話題となっています。
比較的簡単に完成度の高いイラストレーションが描けてししまう技術には、眼を見張るものがあります。
こうした新しい技術の台頭に、「仕事を奪われるのではないか?」と危機感を募らせるイラストレーターも多い様子です。
果たして、イラストレーターという職業は消えるのでしょうか?
今回は、「AIイラストの時代に生き残る術」について考えてみたいと思います。


■ 小学生も、完成度の高いイラストが簡単に描けてしまう。

私の子供は、小学校6年生です。(2023年3月当時)
絵が好きで、よく描いている様子です。
描いたものを時々見せてくれますが、少し前から、驚くほど完成度の高い絵を見せるようになりました。
もうプロレベルです。

話を聞くとーー
AIイラストのアプリが、娘が描いた小学生らしさの残る絵を、プロレベルのものに加工してくれるのだそうです。

デッサンや遠近法のトレーニングはなくとも、プロレベルのイラストが簡単に描けてしまうのです。

この技術には驚くばかりです。

AIピカソ:https://app-liv.jp/5344531/

■ 私も感動を覚える「Midjourney」の作品

もう一つ、何かと話題になった画像生成アプリが、Midjourney です。
これには私も舌を巻きました。

Midjourney の作品:
https://www.google.com/search?q=Midjourney&rlz=1C5CHFA_enJP972JP972&source=lnms&tbm=isch&sa=X&ved=2ahUKEwiB_ZvIiMT9AhUKxWEKHU1vAEgQ_AUoAXoECAEQAw&biw=1413&bih=799&dpr=2

SNSでも、 Midjourney の作品がどんどんアップされています。

https://twitter.com/search?q=%23midjourney&src=typeahead_click

Midjourney の使い方

https://kigyolog.com/article.php?id=1690

Midjourney で作られた作品を見回すと、アートとしてのレベルの高さに感心します。
これまでの同種のサービスとは格の違いを感じます。
作ったのは感情のないAIのはずなのに、私はその作品から感動すら覚えることがあります。

そしてとうとう、Midjourney で生成された絵が海外のアートコンテストで賞をってしまいました。https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2209/01/news148.html

これはかなりの物議を醸しました。
画像生成AIへの反対を表明したイラストレーターが少なくなかったようです。

私の個人的意見ですがーー
非営利の研究のためにであれば、著作権のあるイラストレーションや音楽からAIが学習するのは「アリ」だと思います。
「新しい技術の開発で、世の中が幸せになるのであれば、そのことに使われるのはいいことだ」というのが私の考えです。

ただし、営利目的の企業が提供するサービスにおいてAIが学習対象から許諾を得ることなく学習することには、違和感を感じます。
しかし残念ながら、それはもう動かしようのない定数です。
定数が動かないことを前提に、いかに活動していけば良いのかを考えたイラストレーターに生き残る道が見えてくるはずです。

例えばーー
棒高跳びの選手が2人いたとします。
1人は地球の重力に文句を言うばかりです。
もう1人は、動かしようのない重力に文句を言うことなく、その重力の中でいかにして高く飛べば良いかを考えトレーニングに励みます。
さて、どちらの選手がより伸びるでしょう?
言うまでもないですよね?

イラストレーターも同じです。
定数に文句を言うのではなく、その条件の中でいかにして生き残っていくかを考え、実行し、努力し続けることが成功の秘訣です。

参考ページ:『定数ではなく変数を動かす』


■ AIイラストの法的解釈は?

日本の法律ではーー
著作権のある作品であっても、AIが学習する素材として使うことは認められています。(著作権法第三十条の四)

ただし、
「当該著作物の種類及び用途並びに当該利用の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない」とも書かれています。
つまり、「AI学習の素材として使うところまでは『セーフ』だけど、イラストレーターに損害を与える行為まで行うと『アウト』」ということになります。

この法律ができた当時は「AIの開発がしやすくなること」を優先していました。
実際にAIがここまでの絵を描けるようになったときのことをきちんと想定していなかったと思います。
なので、「どういった使い方がイラストレーターに損害を与えると判断されるのか」といった点は曖昧になっています。
AIイラストの法的位置はまだ定まっていない「グレーゾーン」なのです。
今後法整備が整っていくと思います。

・AIイラストの法的位置に関する参考ページ:

https://note.com/shin_fukuoka/n/na3163a404cbc

https://insights.amana.jp/article/33488/

(2024年追記:文化庁から『AIと著作権に関するチェックリスト&ガイダンス』が公表されています。現在の法律のグレーゾーンにおける判断の目安となる内容です)

昨年(2022年)、mimicというというAIイラストメーカーが炎上しました。
クリエイター自身のイラストレーションデータから学習し、その画風を再現するAIアプリでした。
しかし「他人の作品から学習して他人の画風で仕事をするイラストレーターが現れるのではないか」と危惧するイラストレーターから批判を浴びたのです。
そのため、β版公開からわずか1日でサービスを停止しました。

米国では、アーティストが、Midjourney などの画像生成AIに対して集団訴訟を起こしています。https://news.yahoo.co.jp/articles/4679300f3053c405e415ea6b4c7b3f67aad3e138

(2024年追記:この訴訟は、クリエーターの訴えが概ね棄却されました。その理由は手続き上の不備が原因です。米国では、著作権侵害が発生した場合に訴訟を起こしたり、賠償金を請求したりするためには、予めその作品を米国の著作権局に登録しておく必要があります。それを怠っていたため、棄却されたようです)
(2024年8月17日追記:その後、クリエーター側が訴状を修正して再度訴訟を起こしました。裁判所は、裁判を進めることを認める裁定を下しています。引き続き、この裁判の行方には注目していきたいです)

☆ 参考ページ:人間のアーティストがStability AIやMidjourneyなどの生成AI企業を相手にした著作権侵害訴訟を進めることを裁判所が認める - GIGAZINE

米写真配信サービス大手のゲッティイメージズも訴訟を起こしています。

https://www.gizmodo.jp/2023/02/ai-image-gen-getty-lawsuit.html

ストックサービスを提供している各企業も、この後に続く可能性を感じます。
ストックサービスも、AIに取って代わられる可能性があるからです。

「画風」「タッチ」には、著作権がありません。
誰かにそっくりの作風でイラストレーションを描いたとしても、著作権の侵害とはなりません。
これは「誰しも、先人の真似から新しいものを創造する」という創作活動の本質的部分を守るためです。
先人の影響なしに新しいものを生み出せる人は、まずいません。
皆、これまでに発表された膨大な作品から様々なエキスを吸収して、新しい作品を生み出します。
画像生成AIを使っている人たちの間では、
「この『これまでに発表された膨大な作品から様々なエキスを吸収して、新しい作品を生み出す』のが人間からAIに代わっただけで、やっていることは同じだ」という意見も多い様子です。

参考ページ:https://www.gizmodo.jp/2023/02/ai-image-gen-getty-lawsuit.html

私自身も、多くの先人の作品から学び、真似るところからスタートしました。
伊藤彦造さん、宇野亜喜良さん、生頼範義さん、そのほか数多くの方々の影響を受けています。
そのスピードや規模が桁違いだとはいえ、AIがやっていることは確かに同じだと感じます。

しかし、AIを積極的に使いたい人々とAIに勝手に作品を使われたくない人々が対立したまま、画像生成AIを商用イラストレーションとしてどんどん使っていくのは、社会的な混乱と対立を生むことになります。

何らかの妥協点を見つける必要があるでしょう。

その妥協点の一つとして考えられるのが、著作権が切れた作品や許諾を得た作家の作品から学習し、その作家に対価を支払うAIです。

Shutterstock はすでにそうしたサービスを始めています。https://www.shutterstock.com/blog/shutterstock-building-ethical-ai

Adobe Firefly も、そうした方向を目指しています。https://photoshopvip.net/145001


■ AIに学習されるのを防ぐ方法

AIに学習されることを防ぐ技術も開発されています。
「Glaze」です。
これは、ノイズを画像に埋め込むことで、AIが画像の内容を正確に把握することができなくなる技術です。
「Glaze」でノイズを埋め込んだ画像は、AIが正しく認識できなくなり、学習されることを防ぎます。

その気になれば、「Glaze」でノイズを埋め込んだ画像も学習することが可能な技術の開発は可能でしょう。
しかし、「Glaze」でノイズを埋め込んでいるということは、AI学習を拒否するという意思の表れでもあります。
もしも、ノイズを埋め込んだ画像もAIが学習出来る技術を開発し、実際に学習したとしたら、それは著作権者の意思を踏みにじる行為です。
裁判に持ち込めば、イラストレーター側に有利な判決になる可能性が高くなる可能性はあるかもしれません。

・「Glaze」のダウンロードはこちら
https://glaze.cs.uchicago.edu

「Glaze」は英語になっているので、分かりにくいかもしれません。
使い方は、よー清水さんのnoteに詳しく書かれています。https://note.com/freena_illust/n/n3aa65e414d08

(2024年追記:文化庁の『AIと著作権に関するチェックリスト&ガイダンス』には、「ウェブサイト内のファイル“robots.txt”に、AI学習データの収集を行うクローラをブロックする記載をする」「AI学習用データとして販売するようにしておく」といった手法も紹介されています)

■ AIがもたらす未来

法的にどうなるとしてもーー
今後10年から20年程度の間に、ありがちなタッチのイラストレーションは、AIが描くようになっていくと予想しています。
2030年代、40年代には、AIイラストがごく普通に広まっていくでしょう。

これは、AIによる第四次産業革命です。
AIイラストが法律的にどんな位置付けになるか、まだ未知数の部分はありますがーー
この革命が起こることは、避けられません。

「第一次産業革命」は、世界史の授業で習いましたよね?
18世紀半ばから19世紀ごろ、欧米で起こった技術革新です。
この技術革新に関しては、いくつかのポイントがあると思いますがーー
そのポイントの一つとして、「手作業で行われてきた織物の生産が、機械化され、大量生産が可能になった」ことも挙げられます。
それまで手作業で布を織っていた職人たちの多くは、職を失いました。

それと同じようなことが、イラストレーション業界でも起こるでしょう。
AIイラストが大量生産され、大量消費される時代が来ると思います。

人間ならではのクリエイティブな活動とされていた「小説の創作」「作詞・作曲」「イラストレーション」「動画」といった分野にAIが進出してくるのは、間違いないです。

少し先になるとは思いますが、自動生成AIによって、映画だって作れるようになるでしょう。
脚本も音楽もAIが生成し、動画もAIが作ります。
ロケも、撮影も、さらには俳優さえ必要なくなります。
ジェームズ・ディーンとマリリン・モンローが共演する新作だって可能にな未来が来ると思います。
主題歌は、この二人のデュエットになるかもしれません。

■ AIイラストは、イラストレーターの仕事を奪うのか?

少なくとも、ありがちなタッチのイラストレーションの大半は、AIが描くようになると思います。
ありがちなタッチで、強みもなく、ブランディングができていない、そんなイラストレーターは、価格の安さで選ばれがちです。
だから、AIに仕事を奪われるでしょう。
今、イラストレーターとして活動している人の多くが食べていけなくなる可能性があります。

かつて欧米で起こった第一次産業革命で、手作業で布を織っていた職人が仕事を失ったのと同じことが、イラストレータ業界でも起こるのではないかと予想しています。

ただしーー
一般的な書籍や雑誌、あるいは宣伝・広告においてAIイラストを使用するとなると、いくつかの問題があります。
AIが、商業イラストレーターの代替となる上での問題点を列挙してみましょう。

①求めるタッチを指定して生成することができない

商業イラストレーションは、その媒体に適した作風のイラストレーターに依頼されます。

例えば、子供向けの仕事であれば、小さな子供にとって親しみやすい作風のイラストレーターに依頼が来ます。

女性向けの仕事であれば、女性らしい作風のイラストレーターに依頼が来ます。

今のAIは、リアル系やアニメ系などのイラストレーションは得意です。
しかし、出版や宣伝・広告のプロの現場で求められる幅広い作風を忠実に再現することはまだできません。

つまり、現在のところ、それぞれの仕事に合わせてイラストレーターに依頼した方が早くて確実なのです。

しかしーー
近い将来、少なくともよくあるタッチに関しては、商用で求められることが多い様々な作風を指定してイラストレーションを生成できるAIも登場すると予想しています。

② 細かいポーズやシーンの指定が難しい。

イラストレーションの仕事では、クライアントの意向を汲み取り、ビジュアルで表現する必要があります。

Midjourney は、確かに優秀ですが、細かいところまで意図通りの絵に仕上げることは出来ません。

プロンプトと呼ばれる呪文のような言葉を入力して画像を作成するのですがーー
「どんな作品になるかは、見てのお楽しみ」という仕様になっています。

イラストレーションの内容について、細かい指示をすることができません。クライアントの希望通りのイラストレーションを作成することはできないです。
今のままではプロ・イラストレーターの代わりにはなりません。

今年に入ってから発表された ControlNet は、棒人間にポーズを取らせてイラスト化することができます。
https://economylife.net/controlnet-pose-image-posex/

Midjourney は、人物のポーズを指定することが難しかったのですが、こちらはかなり意図通りのポーズが指定できるようになっています。
でも、手のひらや指までは指定できません。

イラストレーターは、とても細かい注文を受け、修正を繰り返すこともあります。
クライアントの意図通りの内容のイラストレーションを作成することは、AIにはまだ無理です。

しかし、これはいずれ克服されると思います。
細かい指示が可能になり、思い通りに画像を生成するアプリは、いずれ登場するでしょう。
それがもう直ぐなのか、5年先なのか、10年ぐらいかかるのかはわかりません。
でも、いずれそうなることは間違いないでしょう。

③ バッティングの問題

広告・宣伝の仕事においては、イラストレーターは同業他社の仕事を禁じられます。
広告・宣伝の見た目のイメージが似ていると、ブランドを混同しかねないからです。

今の画像生成AIでは、画風がある程度決まっています。
同じAIから作られたイラストレーションは、よく似た画風になるでしょう。
競合他社と画風が被ることを避けたい企業は、引き続き作家性の高いイラストレーターに依頼することになると思います。

つまり、オリジナリティのしっかりある、作家性の高いイラストレーターは、AI全盛の時代になっても、さほど心配はいらないのではないかと推測されます。

④ AIイラストには、著作権がない問題

AIによって生成された作品には、一般的には著作権がありません。

参考ページ:https://gigazine.net/news/20230224-us-copyright-ai-generated-comic-artwork/

参考ページ:chrome-extension://efaidnbmnnnibpcajpcglclefindmkaj/https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/tyousakai/kensho_hyoka_kikaku/2016/jisedai_tizai/dai4/siryou2.pdf

ということはーー
AIが生成したイラストレーションを書籍のカバーにそのまま使って出版したとしたら、勝手に他の出版社が流用してもいいことになります。
著作権がないのですから、誰が使おうが自由です。
一般的な出版社なら「それはまずい」と考えるでしょう。

そのため、「雑誌カット」「書籍カバー」などといった商業的なイラストレーションの多くは、今後も人間のイラストレーターが描くことになるでしょう。

ただし、AIを活用した人間のイラストレーターも増えていくと思います。

作品の制作過程において人間が大きく関わっていた場合は、その人間に著作権が発生すると考えられます。

例えばーー
「ラフを人間が描いて、それを元にAIが仕上げる」
「AIが描いたものを、最終的に人間が微調整し、仕上げる」
というケースです。

参考ページ:https://gigazine.net/news/20221121-generative-ai-copyright/



⑤ 知らないうちに著作権侵害をしてしまう可能性がある問題

AIは、その仕組み上、既存の著作物とそっくりな作品を生成することがあります。

(2024年追記:「AIの生成物が実在の人物に似ているというケース」は、時々X (Twitter)で見かけます。『画像生成AIに「普通のおじさん」を作らせました→そっくりすぎる「本人」が登場し「自分でも自分に見える」と驚愕する珍事が発生』

そのため、一般的な書籍・雑誌や一般的な企業の宣伝・広告に使用するにはリスクがあります。
ほとんど同じ画像がネット上に見つかれば、著作権侵害と判断されるでしょう。
そうしたリスクを考えると、当面の間は、人間のイラストレーターに依頼が来ると考えられます。

ただし、Adobe Firefly は、著作権侵害の可能性が極めて低いです。
そうした AI が充実してくれば、そちらで安全なイラストレーションを生成するようになるかもしれません。

■ では、どうすればいいのか?


私は中島みゆきさんや吉田拓郎さんが好きです。
どんなにAIが生成する音楽が出てきたとしても、私が聞くのは大好きな中島みゆきさんや吉田拓郎さんご本人の歌でしょう。

それと同じく、作家性の高いイラストレーターに依頼する編集者やデザイナーの多くはそのイラストレーターの作家性に惹かれて依頼します。
だから、AIがどんなに広まっても、作家性のあるイラストレーターが仕事を失うことはほとんどないと思います。

これからの時代をイラストレーターとして生きていくであろう受講生の皆さんには、作家性のあるイラストレーターを目指すことをお勧めします。

作家性だけではなくーー
AIをうまく創作に取り入れたイラストレーターも、生き残る可能性が高まると考えています。
「AIに仕事を取られたく無い」と、拒絶反応を起こしているイラストレーターは、消えてく可能性が高いでしょう。

第一次産業革命で、機械化を拒絶した布織職人は消えました。
でも、布織工場を経営した人間は、それまでにないほどの大きな財産を築きました。
受講生の皆さんは、消えた布織職人ではなく、布織工場を経営した人間を手本にすべきだと考えます。

第三次産業革命では、パソコンやインターネットが世界を変えました。
その時、デジタル化を拒否した企業の多くが消えました。

例えば、写研です。
写研は、日本を代表する電算写植メーカーでした。
DTPの波が押し寄せた時、写研はデジタル化を拒否しました。
その一方で、もう一つの電算写植メーカーであったモリサワが、いち早くデジタルフォントを出しました。
結果、今はモリサワがフォントメーカーとして日本最大規模の企業になり、写研は消えかかっています。
写研もかなり遅れてデジタルフォントを出そうとしたのですが、ノウハウがないため、実現できなかったそうです。

写研には、大好きな書体がたくさんあります。
DTPで使うことがほとんどできないことが残念でならなかったのですがーー写研の書体が、モリサワから順次提供されることになったそうです。(とても嬉しいニュースでした)
https://www.morisawa.co.jp/about/news/8693

イラストレーターの世界でも、デジタルに拒絶反応を見せた私と同世代のイラストレーターは皆消えていきました。
作品はアナログ制作だとしても、納品はデジタルデータをインターネット経由で納品するのが主流となっています。
今、一部の巨匠を省き、パソコンやインターネットを使わずに現役で活躍しているイラストレーターは、ほぼいないでしょう。

かつて、ダーウィンはいいました。
「最も強い者が生き残るのではなく、最も賢い者が生き延びるのでもない。唯一生き残ることが出来るのは、変化に対応できるものである」

私たちイラストレーターも、写研ではなく、モリサワから学びたいです。

■ 森流一郎が現役だったなら

私が今も現役だったならーー
私の過去の作品全てをAIに学習させ、私の画風を自動生成させるシステムを整えるでしょう。

(2024追記:この講義を執筆した当時はそうしたアプリはなかったようですが、最近になってそうしたアプリができたようです。漫画家の絵柄、AIでそっくり再現「ピュアモデルAI」ができたワケ》)

こうしたアプリが普及すれば、私の作品を大量生産することが出来るはずです。
私のタッチは、パソコンを使っていたとはいえ、手描き作業の時間がかなりかかっていました。
仕事が殺到していたので、365日フル回転で、寝る暇もないような生活が何年も続きました。
それが原因で体のあちこちに不調がきてしまい、引退しました。

もしAIでイラストレーションを大量生産できるなら、そんな不健康な生活はせずに済みます。
もっとたくさんの仕事を受けることすら可能です。
だから私に取ってAIは、画期的発明なのです。

私の作風は、それなりにオリジナリティがあります。
どこかで誰かがそっくりの画風のAIイラストで仕事をしたら、「森流一郎のパクリだ」として炎上するでしょう。
今は、「パクリ」に対してかつてないほど厳しい時代です。
オリジナリティのある画風を真似するAIイラストは、厳しい批判に晒される可能性が高いです。

東京五輪のロゴマークが、「パクリ疑惑」で炎上したのは、記憶に新しいと思います。

数年前、ラフォーレ原宿の広告も、「パクリ疑惑」で炎上しました。https://togetter.com/li/1459540

これらの例を見るまでもなく、AIを使わなくとも普通に人間が作風を真似ることは可能です。
「AIだから作風を盗まれる」ということはありません。

これからの時代、企業は炎上を避けるため、さらに慎重になっていくはずです。
オリジナリティのあるイラストレーターがAIに作風を真似される心配は、ほとんどないと考えています。


■ AIの活用方法は他にもある


他にもAIを上手く使ってイラストレーターとして生き残る方法は、いくつかあると思います。

例えばーー
Adobe Firefly を資料集として使う手もあります。
イラストレーターは、クライアント様から指定されたあらゆるモチーフを描く必要があります。
私の若い頃は、百科事典や図鑑などの資料をたくさん揃えていました。
資料を求めて図書館を探し回ることも少なくなかったです。
今はインターネットで検索できるのですが、そのまま描いてしまうと著作権侵害になり得ます。
許諾を取った画像から生成するAdobe Firefly で資料を画像生成した方が安全でしょう。

あるいは、自分の作風を学習させることが可能なアプリが出てきたらーー
AIを使って作品を大量生産し、ストックイラストとしてどんどん提供するのもいいでしょう。
今のストックイラストサイトでは、アナログならではの作風はあまり見かけません。
手の込んだアナログ系の作風で大量生産して、ストックにあげれば、人気が出るかもしれません。

あるいは、「AI学習用の素材として画像生成アプリを作っている企業に作品を提供し、その代わりにイラストレーターが報酬をいただく」という選択肢もあるでしょう。
いらすとやは、既にそれをやっていますね。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000002.000113219.html

ほかにもAIを活用する道は色々とありそうな気がします。

受講生のあなたも、AIを取り入れて、生き残る道を模索しましょう。

イラストレーションが、AIによって大量生産される時代は、もう目の前のはずです。

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イラストレーターズ通信
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