見出し画像

23/24シーズン レアル・マドリ― 総括

15回目のCLを制覇して今シーズンを終了したレアル・マドリ―である。マドリ―の総括を個人的に行いたいと思う。今シーズンの戦い方→各選手の評価(新加入選手を主に)→来シーズンに向けての順で書いていく。

※情報は2024/6/28現在


今シーズン総括

昨シーズンとの比較

今シーズンは、主力選手の怪我に悩まされたが、ラ・リーガとCLの2冠で終えることができた。

まずは、昨シーズンと今シーズンのデータを簡単に比較する。
(昨シーズンは、クラブW杯やコパ・デル・レイで優勝したため、今シーズンに比べて試合数が多い)

昨シーズンと今シーズンの比較

昨シーズンに比べ、リーガでは、勝ち点を多く獲得できた。昨シーズンは8敗をしていたが、今シーズンは1敗である。昨シーズンの主力である、クルトワ、ミリトン、アラバが長期離脱したのにも関わらず、1敗で終えることができたのは流石という言葉以外に見つからない。また、失点も昨シーズンより少なく、一試合平均0.68失点(リーグ戦)と失点の少なさにも驚かされた。今シーズンは、離脱者が所々出たが、それでも安定した成績を出したカルロ・アンチェロッティ監督は流石のマネジメントである。


戦い方(変化)

個人的に、シーズンを通して、3回戦い方が変わったと感じている。

まずは、開幕戦の戦いから振り返る。図1は開幕戦のメンバーである。

図1 開幕戦のメンバー

4-3-1-2-のダイヤモンド型は、両SBと中盤の運動量が必要になるフォーメーションである。両SBは攻撃力のある選手であるため、敵陣での枚数を増やすことができた。また、ヴィニシウスとロドリゴがサイドに流れるため、サイド攻撃からチャンスを作ることができる。加えて、ベリンガムが自由に動く。相手のCBはマークをする選手がいない中で突然ゴール前にベリンガムが侵入するため、マークを外して得点をすることが多かった。

しかし、4-3-1-2のダイヤモンド型のサイドを攻略されることが多くなり、中盤戦から戦い方を少し変えた。


図2 ベリンガムがサイドに入る

中盤戦から図2のような形が多くなった。チュアメニやカマヴィンガの負傷離脱により、クロースがスタメンに復帰。ビルドアップでは、クロースを中心にボールを回すことができ、安定した攻撃ができた。しかし、クロースは守備時に上下動ができないため、マドリ―の左サイドから攻め込まれることが多くなった。そのため、(おそらく)AWAYのジローナ戦から守備時に、ベリンガムを左サイドに置いた4-4-2のフラットで守ることが多くなった。

攻撃は、ヴィニシウスとロドリゴが内側を取ることが多くなった。これまではサイドに張り、相手のSBと1対1で仕掛けることが多かったが、中盤戦以降は、相手のSBとCBの間でボールをもらい、仕掛けることが多くなり、ヴィニシウスの得点が増えていった。


図3 CL決勝メンバー

終盤戦にかけて、戦い方が定まった。図3はCL決勝のメンバーである。守備時は、ベリンガムが左に移動した4-4-2のフラットで守ることが多かった。状況に応じて、4-3-3で守ることもあったが、基本的には4-4-2のフラットである。

中盤戦から変わったのは攻撃である。中盤戦では、中央にいることが多かったヴィニシウスであったが、終盤戦からは左サイドに張ることが多くなった。また、ヴィニシウスをサポートするためにロドリゴが左サイドに流れることが多くなった。そのため、左サイドで2人の仕掛けからチャンスを多く作った。

中央は、ベリンガムがいることが多かった。しかし、守備時と攻撃時でポジションが異なるため、終盤戦からゴール前で決定機を作ることが少なくなった。
ロドリゴが空けた右サイドのスペースはカルバハルが使い、左サイドで組み立て、クロースのサイドチェンジからカルバハルが中央に折り返し、チャンスを作ることは十八番であった。


(左右での)戦い方


今シーズンの左右での攻撃の原則についても振り返る。
まずは右サイドでの攻撃。

図4 右サイドでの攻撃

右サイドには必ずサイドに張る選手が1人いることが原則である。図4の通り、張る選手は主にカルバハルであるが、状況に応じてロドリゴが張ることもある。ロドリゴがサイドで張った時は、図4のロドリゴの位置にカルバハルが入る。そのため、ロドリゴとカルバハルは、内と外の関係を必ず作るため、お互いをサポートすることができる。

また、バルベルデはカウンター対策も含め、右サイドの低い位置でサポートをする。高い位置を取ることもあったが、基本的には低い位置を取り続けた。右サイドでは、ロドリゴ、カルバハル、バルベルデの3人の関係から相手を崩し、右サイドからチャンスを作っていた。しかし、終盤にかけてロドリゴが中央でプレーする機会が多くなり、このような戦い方があまりなかった。


次に左サイドでの攻撃について。

図5 左サイドでの攻撃

左サイドでの攻撃は、シーズン序盤と終盤で戦い方が異なる。序盤は、左SBにフラン・ガルシアを起用していたため、積極的にオーバーラップをしていた。そのため、サイドに張るヴィニシウスとポジションが被ることが多かったが、ヴィニシウスが内側でボールをもらうなどの工夫をして、攻撃をしていた。

しかし、メンディがスタメンに返り咲いた後は攻撃が変わった。フラン・ガルシアとヴィニシウス2枚で攻撃ができていた左サイドであったが、メンディに代わったことで、ヴィニシウス1枚となった。そのため、相手の1対2などの状況を作られ、左サイドを攻略することが困難となった。

そこから、左サイドを優位にするためにロドリゴが左サイドに流れることが多くなった。そのため、図5のような形をとることが多く見られた。メンディはサポート役として少し低い位置でプレーをする。ロドリゴがヴィニシウスに近づき、2人の関係性から左サイドを突破する。状況に応じてベリンガムやカマヴィンガが入り、PAに侵入するといった攻撃に変化した。


このように、左右で同じような攻撃はしていない。各選手の特徴を理解し、活かした攻撃であるため、左右で立ち位置が異なる。


各選手の評価(新加入選手を中心に)


GK 25 ケパ・アリサバラガ (チェルシーからローン移籍)

20試合出場(先発19試合) 18失点 45セーブ クリンシート8

シーズン前にクルトワが長期離脱をすることになり、急遽加入した。ハイボールの処理は不安定だが、1対1の強さなどは流石のプレーであった。最終的には、第3GKとなってしまったが、クルトワのリハビリサポートや、シティ戦とのPK戦でのデータ提供など、ピッチ内外で貢献をしていた。来シーズンはどのチームでプレーをするのかわからないが、プロフェッショナルであるため、どのチームでも活躍ができると思うし、個人的にも応援したい。


DF 20 フラン・ガルシア (ラージョから加入、復帰組)

31試合出場 1ゴール 4アシスト

昨シーズン、ラージョでの活躍からマドリ―へ復帰した。開幕当初は、スタメンとして活躍をしたが、アトレティコ戦で守備の脆さが出てしまい、それ以降はベンチメンバーとなった。彼の特徴である攻撃参加と上下動は、4-3-1-2のダイヤモンド型では有効であった。終盤にかけて、少しずつ守備がよくなってきたと思う。来シーズンも、ベンチにいることが多くなると思うが、ケパ同様、真面目にトレーニングをしているため、出場した時は、活躍を期待したい。


MF 5 ジュード・ベリンガム (ドルトムントから加入)

42試合出場 23ゴール 10アシスト

今シーズンは、ベリンガムのシーズンでもあった。移籍金も含め、加入前からかなり期待をされていたが、期待通り以上の活躍をした。シーズン終盤は、肩の脱臼の影響もあり、思うように数字が伸びなかった。Noventa y Bellinghamという言葉ができた通り、今シーズンは、試合終了間際に得点をして勝利した試合は数多かった。組み合わせによって、役割を変化させ、適応していた。ホセルと組んだ時はセカンドトップ、ブラヒムと組んだ時はトップ、ヴィニシウスとロドリゴと組んだ時はトップ下の役割をしていた。そのため、とても器用な選手だと感じた。来シーズンは、今シーズンとの役割が変わる可能性が高いが、中盤での役割でもフィットしそうであるため、来シーズンも期待したい。


MF 24 アルダ・ギュレル (フェネルバフチェから加入)

12試合出場 6ゴール 0アシスト

トルコの神童として期待されていたが、加入から怪我が続き、出遅れた。コパ・デル・レイ3回戦のアランディーナ戦でマドリ―デビューを果たした。怪我で出遅れたため、アピールをすることに必死となり、ポジションを捨ててボールをもらうことが多く、レギュラーで出るのは難しいと思っていた。しかし、その後は試合に出続けたことにより、ポジショニングがよくなり、効果的なポジションを取ることができた。得点力は素晴らしく、出場したほとんどの試合で得点をし、決定力は流石だと感じた。


FW 14 ホセル (エスパニョールからローン移籍)

49試合出場 18ゴール 1アシスト

11年ぶりのマドリ―復帰となった。昨シーズンまでプリメーラで得点を量産をしていたが、マドリ―でどれぐらい活躍するのかは疑問視されていた。しかし、蓋を開けてみたら予想以上に得点をした。純粋なCFとしてポストプレーを始め囮の動きなどからベリンガムの得点もアシストしていた。近年は、サブのFWが結果を出すことができない状況が続いていたが、サブとしては十分な結果を残すことができた。スタメンではないが、頼りにしていたため、来シーズンいないことは残念である。


FW 21 ブラヒム・ディアス (ミランからレンタルバック)

44試合出場 12ゴール 6アシスト

ミランで3シーズン修行をし、4シーズンぶりにマドリ―に戻ってきた。ミランでの活躍がそのまま活かされていたと思う。細かいボールタッチなため、狭いエリアでもボールを失わないことが特徴。また、力強いドリブルからのシュートや、コントロールシュートで得点を積み重ねた。両足を使うことができるため、相手は対応が難しくなり、タイミングをずらしてシュートを打つことができるのは彼の強み。来シーズンは、今シーズンよりも出番が少なくなる可能性があるが、武器である両利きを活かして今シーズン以上の活躍を期待している。


DF 6 ナチョ・フェルナンデス

45試合出場 0ゴール 1アシスト

カピタンとして迎えた今シーズン。CBの怪我人が多かったため、45試合と自身最多の試合出場となった。リーガでレッドカードを2枚もらうなど、ナチョらしくないプレーも見えたが、安定したプレーでチームの勝利に貢献をした。ハーランド、ケインを抑えたCLでのプレーを見ると、まだトップレベルでできることを証明したと思う。23年間マドリ―に所属し、マドリ―の選手としてやらなければいけないことを自ら手本として若手選手に教えていたと思う。長年、サブメンバーとしてマドリ―にいたが、出場した試合では安定したパフォーマンスを見せていたため、1チームに1人欲しい選手である。今後の活躍を期待したい。


MF 8 トニー・クロース

48試合出場 1ゴール 9アシスト

今シーズンをもって現役を終了することとなった。今シーズンの活躍を見ると、引退する選手ではないと感じる。今シーズンは、若手4人が中盤を務める予想であり、例年よりも出場時間が短いとされていた。それでも、与えられた時間でクロースの重要性を証明し、中盤戦からスタメンに返り咲いた。クロースがいることでビルドアップが安定し、試合が安定した。また、彼のサイドチェンジから数多くのチャンスを作ることができた。マドリ―の心臓として長年活躍していたため、彼の後継者を見つけることは難しいが、新たな選手が活躍することを願っている。


来シーズンに向けて

来シーズンの予想フォーメーションは、個人的には4-3-3だと思う。クロースがいれば、今シーズン同様に4-4-2の可能性もあった。

図6 来シーズンの予想

個人的には、来シーズンの予想は図6のメンバーである。攻撃は、エンバぺとヴィニシウスを中心に、攻撃をする。ヴィニシウスが左に流れることが多いが、そのヴィニシウスとエンバぺ、ロドリゴがうまく連携を取り、3枚で攻める。また、ベリンガムやバルベルデが空いたスペースを使い、攻撃ができる。

守備は、ヴィニシウスとエンバぺを前線に残し、守備を形成する。そのため、守備時は4-4-2となり、左SHにベリンガム、右SHにロドリゴを置き、ミドルブロックを作り、引いて守ってカウンターという戦い方になると予想する。



今シーズンは、ベンゼマの電撃退団、アセンシオの移籍と攻撃陣がいなくなったため、得点力に関して不安があった。また、主力メンバーも離脱し、タイトルがとれないとされていた。しかし、蓋を開けたら昨シーズンより、得点が増え、失点が減った。加えて、リーガとCLの2冠となった。
ナチョの退団やクロースの引退により、寂しさが残るが、若手の躍動を期待したい。

来シーズンは、エンバぺとエンドリッキの加入が決定。さらに、レニー・ヨロとカラフィオーリの獲得の噂がある。期待のできる若手が加入することはとても魅力があること。世代交代がうまくできているため、今後もうまくできると思うが、これまで支えてきた選手を見ることができなくなると寂しくなる。それでもマドリ―はマドリ―であるため、来シーズンもタイトル獲得に期待している。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?