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モーリーの闘病日記(2)手術編

当時、手術の前に足裏に名前を書かれました。患者の取り違え防止なんですかね。
後に何回も手術をしていますが、足裏に名前を書かれたのはこの時だけです。


2003年11月13日 プロローグ

その時、なんの予告もなく電話が鳴った。まぁ電話が鳴る前に予告はないが。
「もしもし、ミヤザワさんでしょうか?」
電話をとる前にナンバーディスプレイで発信番号を確認していた。
「045-XXX-XXXX」
045って横浜だよな!?
ついにその時はやって来た・・・。
てな感じで病院からついに呼び出しがきた。昨日、もう待ちくたびれて忘れようとした矢先である。今週に入ってから体調も落ち着いているし、検査からも日数が経っている。イザとなるとなんかイヤになってきた。が、どうしようもない。
外来時の病院からの説明では、入院の2〜3日前に電話があるとのこと。しかし入院経験のある3人によると、みんな「明日来てください」といきなり電話があったという。今回もやっぱり。予想はしていたがなんにも準備が出来ていない。とりあえず勤務先で電話を受けたので、慌てて仕事を済ませる。といってもおよそ1ヶ月(?)留守にしなければならない。書き置きや指示することなどあれこれと猛烈に働く。3日分を一気に働いた気がする。
入院前にトンカツでも食べちゃおうかなー、と真剣に悩む。でもなるべく状態をよくしておいて手術に望んだほうがいいのではと考えてしまう。小心者。
ま、せっかく自家製のパンも残っていることだし。それに今日はイワシの缶詰で勝負だぁーと考えていたのである。パンに挟んでケチャップやソースも適当にトッピング。これがあなた、なかなかいけるんだって。ちなみにイワシもちゃんと温めたほうがグー。サバの味噌煮やサンマの蒲焼きもいけるかもしれん。ちょいと後味が魚臭いんだけどね。
病院食は何が出るのか、変なところが楽しみである。

2003年11月14日 入院初日

今にも雨が降り出しそうな曇り空のなか、やっとというか、ついに入院することになる。入院の目的は手術。事前に受けていたレントゲンの検査では、回腸部分(小腸の末端)と結腸(大腸の大部分)を切除することになりそう。おそらく大腸内視鏡の検査を手術前にやって最終判断となるだろう。

午後1時半、入院受付。ところが案内された九階の部屋のベッドが空いていない。えっ?と一瞬ビビるがどうやら部屋を間違えられたらしい。しばらく待たされた後、結局違う部屋に案内される。入院する部屋は普通の大部屋だが定員は4名。広々としてキレイだ。しかし残念ながらベッドは廊下側。立派な液晶テレビや個人用の冷蔵庫までついているのだがすべて有料。テレビくらい金払って見てやるか。冷蔵庫なんか使わないもんねー。
同室の人たちはみんなカーテンを閉めている。しかも向かいの患者さんは、たった今手術を終えて戻ってきたようで看護師が慌ただしく動き回る。本人もウーウー唸って苦しそう。挨拶は後日となりそうだ。担当の看護師により入院に際しての説明や問診など一通り済ませる。今日は検温と血圧、体重や身長を測っただけ。入院前の外来時には絶食でエレンタールのみだったので、食事は用意してされていないとのこと。さみしい。今は通常食を食べていると伝え、なんとか用意してもらうことに。出てきたのは普通のごはんとおでん、カボチャの煮物、かぶの風味漬け、リンゴ。ほぼ全部食べる。
夜、担当の医師の一人が姿を見せる。やはり事前に内視鏡の検査が必要なようで、手術までには日数がかかりそうだ。
初日ながら「いつごろ退院かなぁ」と気になってしまう。

2003年11月15日 二日目

病院の朝は早い。朝6時には部屋の明かりがつけられる。昨晩、なかなか寝つけなかった私は無視して寝続ける。が、6時半に「尿をとってください」と起こされる。おちおち寝ていられない。つづいて採血。
すっかり目が覚めてしまったので、インターネットの接続をこころみる。公衆電話、いわゆるグレ電に持参した電話線でノートパソコンをつなぐ。テレカをセットして、あらかじめパソコンに設定した横浜のアクセスポイントに電話する。一発で接続成功。日記をアップしてメールチェックすると早速入院見舞いのメールなどが入っていた。
しかしおよそ5分間接続していたと思うのだが、テレカの残数が50から44に。市内通話って3分間で10円じゃないの? なんだかよくわからない。

続いてレントゲンの検査に呼ばれる。腹部と胸部の単純撮影。受付したらすぐに撮影。長時間待たされるのもイヤだけど、あっという間すぎるのも入院中の暇つぶしにならない。午後は心電図の検査。これもあっという間に終わってしまい、なんだか物足りないくらい。

さて注目の入院食だが、昨日ちゃんと伝えてもらえたようで、レシピには低脂肪食と書いてある。
朝 5分粥、白玉麩煮、大根柔か煮、味噌汁(実なし)、アップルジュース
昼 5分粥、皮むきキンメ煮魚、コーンゼリー、ハイハイン、ヨーグルト
夕 5分粥、豆腐煮、とくさ煮、りんご缶、アップルジュース
「ハイハイン」とは亀田製菓の幼児向けのせんべいのようお菓子であった。
また、紙には「りんご缶」と書いてあるのだが出てきたのはパイナップル。文句を言わずにいただく。

どうやら同室の人たちはみんなクローン病のようなのだが、私を除いてだれ一人として食事を摂っていない。手術直後やちょー調子が悪そうな人たちである。いつもと立場が逆転してご飯を食べるのも申し訳ない。でもどうしても食べたりなくて売店で買ったカロリーメイトを看護師に内緒で食べてしまう。不良だぜぃ。ホントはね、病院で出されたもの以外、食べちゃいけないんだよ!

夜、血液検査の結果、血液型を教えに来てくれる。
「O型」「Rh+」
Rhはプラスだったんだと初めて知る。普通はプラスだったっけ?

2003年11月16日 三日目

朝7時前、主治医が様子を見に来る。スケジュールを聞こうと思ったが、お腹をちょっと触って「大丈夫ね」といいながら、ぱぁーと駆け足で行ってしまう。なんかめちゃめちゃ忙しそうで聞きそびれてしまう。
本来の担当という看護師さんも登場。スケジュールについて聞くと、来週は検査も手術もいっぱいとのこと。どうやら全て再来週のようだ。
「結腸全摘することになったらJパウチ作るんですか?」と聞くとそんなことはないという。直腸が残っていれば大丈夫だという。そんなもんなの?

さて隣の病室には知り合いのSさんが入院中。私よりもずっと先輩であり、いろいろと教えてくれる。ちなみに今回は腸穿孔で腹膜炎を起こして緊急入院、そして緊急手術。「腹膜炎って痛いの?」と聞くと、手術の痛みなんてものじゃない、死ぬかと思ったそうだ。CRPも30まで上がったという。めちゃめちゃ調子が悪くてCRPが13というのが私の最高記録だが、30というのは初めて聞いた。とにかくハンパじゃない状況だったそうだ。
で、とにかく手術前には体力をつけろ、走れという。そんな走れっていったってねー。腹痛いんだし。とにかく筋肉をつけておいたほうが良いという。しょうがない頑張るかと、寝る前にスクワット50回やると、足がふらふらになる。いやホントに。

朝 5分粥、うどん煮、ほうれん草柔か煮、味噌汁(実なし)、オレンジジュース
昼 5分粥、皮むきオヒョウ煮魚、バナナ寄せ物、タマゴボーロ、ヨーグルト
夕 5分粥、豆腐、南瓜ウスクズ煮、白桃缶、ヨーグルトドリンク

2003年11月17日 四日目

飽きてくる。そろそろというか、もうというか・・・。
入院前は「たっぷり寝る時間がほしい」、「一日中寝ていたいなぁ」な〜んて思っていたが、3日もゴロゴロするとそうそう眠れたもんじゃない。うっかり昼寝なんかしてしまうと夜眠れなくなって大変だ。
さてそうはいってもせっかくの入院生活。時間はたっぷりある。前向きにこの時間を利用しよう!ということで英語の勉強をしようと、テキストや本を持ち込んであるのだ。しかし、しかしである。本を目の前にした途端、眠くなってくるんだなぁ、これが。まずベッドに寝ころびながらというのはダメ。必ず起きあがってイスに座るなどしなければならない。で、今日はmake、do、take、knowのお勉強。退院する頃にはバリバリのバイリンガルになってやるぜぃ。
食事が5分粥ばっかりなので、パン食またはうどんにして欲しいと希望をいう。今の食事は「低脂五分粥」というものだが、パンを出すには「全粥」というものにグレードアップ(もっと普通の人が摂る食事に近い)しなければならないそうだ。様子を見ながら試してみればいいでしょうということで許可。朝と昼はパン、夜は全粥となった。ワーイ。

朝 5分粥、スパゲッティ柔らか煮、キャベツ柔か煮、味噌汁(実なし)、アップルジュース
昼 5分粥、皮むき鯛煮魚、トマトマッシュ、ハイハイン、ヨーグルト
夕 全粥、ウエスタンオムレツ、サラダ(キャベツ、トマト、パセリ)、とくさ煮、焼き茄子

新しく全粥になったレシピには「低脂B1全粥」って書いてあるんだけど、「B1」ってなんだろう? 地下1階??

体動かさなきゃと思うのだが、昨日のスクワット50回が相当効いた。モモがビンビンに筋肉痛で歩くのもおっくう。ちょっとずつにすればよかった。

2003年11月18日 五日目

朝から主治医が二人そろって登場。来週の火曜日に内視鏡の検査。水曜日か木曜日に手術になる可能性が濃厚のようだ。来週というとなんかすぐのような気がしてあせってしまう。が、本来なら今週なんだよね。
なんか腹痛がひどくなってきている気がする。食欲がなくなってきて、せっかくパン食になったというのに残してしまう。っていうかお粥がパンになっただけじゃん。ジャムとかもついてないし。ご飯に合うおかずばっかりだし・・・。もうちっと工夫できないのかね?

朝 ロールパン、豆腐カニくず煮、酢しょう油和え、大根エビ炒煮、フルーツ缶ミックス、みそ汁、オレンジジュース
昼 ロールパン、千草焼、磯巻、フルーツ、ヨーグルト、梅干
夕 全粥、キンメ煮、からし和え、じゃがいも梅肉和え

ところで同室の人たち3人にはこまめにナースが様子を見に来る。中には実習生らしい若い子もいる。いいなぁーである。オレのとこなんか誰も来やしない。一日3回くらい「お熱測りましたか〜?」と言われるくらい。つまんないのー。
まぁみなさん点滴してたりガーゼの交換があったり、術後は歩いてくださいと言われるような、かなりの重病人たち。私なんか今日こそおとなしくしていたが、しょっちゅうラウンジにぶらぶら出かけていたり、点滴もなく一人だけ飯を食っているのである。
でも、「もうちょっとかまって〜?」というのが本音である。
手術後はかまってくれるんだろうけどね。いいんだかわるいんだか。

明日は呼吸器の検査をするらしい。
まだモモは筋肉痛。

2003年11月19日 六日目

今日は呼吸器の検査。要は肺活量の検査だ。なぜこんな検査が必要かっていうと、手術後に肺炎を起こしてしまう可能性があるそうなのだ。なぜ肺炎を起こしてしまうかっていうと、術後は腹が痛くて十分な深呼吸を行わない(行えない)ため、肺の中の空気が十分に入れ替わらないため、だそうだ。
手術の時には全身麻酔のため人工呼吸器を使うそうで、気管支に管を挿入したりする。そのような異物があると当然、痰が出てくる。腹が痛いのを気づかって咳払いも十分にしないため、バイ菌がたまって肺炎を起こしちゃうんだって。なるほどねー。
で、肺活量の検査。
昔は水の入った装置にブクブクと吹いたものだが、今のは水を使わない機械式。それで「いっぱい息を吸った後に吐く」、「いっぱい吐いた後にいっぱい吸って吐く」、「短時間に勢いよく吐く」といった3種類の測定を行う。
検査担当の先生は「ハイ、吸って吸って吸って吸って〜、吐いて吐いて吐いてまだまだ吐ける〜」と一生懸命掛け声をかけてくる。
うー、がんばらなくてはと、こちらも一生懸命やる。
1回目、3800cc。私の年齢、身長、体重での標準値は4000ccだそうで、まぁ標準値内だそうだ。
2回目、4200cc。ちょっと上がる。
3回目、4500cc。上がりすぎ。それに3回目の「短時間に勢いよく吐く」というのは普通、1回目や2回目の結果より低くなるはずだそうなのだ。
「困った困った」と先生は頭を抱える。「いやねー、こういう誤差が大きいということはね、試験官として私が不適正ということになっちゃうんだよ」。そんなこと言われたってねー。もう誠に正直な先生である。
こちらとしてもなんか申し訳ない気持ちになる。でも一生懸命、スーハー
やっているだけなんだけどね。
結論としては手術のためには十分な肺活量があるから全く問題がない、とのこと。一生懸命スーハーして疲れました。

朝 ロールパン、煮たまご、白菜スープ煮、しば漬け、みそ汁、アップルジュース
昼 ロールパン、ブタヒレチャップ、酢物、野菜スープ煮、ヨーグルト
夕 全粥、煮物鉢、バナナ、茶碗蒸

腹が痛くてほとんど食べられず。ブタヒレチャップとは豚肉である。食べれるかっていうの。見舞いに来てくれたサリーちゃんにロールパンをあげる。

2003年11月20日 七日目

一時期はヒマでしょうがなかったが、慣れてきたというかいろいろあってそうヒマでもなくなってきた。別に検査や処置がたくさんというわけではなく、自分の中で決めた事柄がいろいろであってである。英語の勉強、それに入院中でもできる仕事。基本的に勉強や仕事はイヤなので、「イヤだ〜、イヤだ〜」と考えているうちに時間はあっという間に過ぎてしまう。本当である。その他、毎日同じ番組のラジオやテレビを決めて見聞きしたり、この日記を書いたり、メールの返事を書いたり、風呂に入ったり、音楽を聴いたり、売店に買い物に行ったり、見舞い客が来たり、お向かいさんが元気になって話しかけてきたり、先生の回診があったり、持ち込んだ本を読んだり・・・。ある程度イベントが多くなると「じゃ〜これをやってからこれをやろう」と区切りをつけたくなる。そうなればしめたもの。ついつい面倒くさがりやの私はそれを先延ばししてあっという間に時間は過ぎていく・・・。入院中にこれとこれを終わらそう!なんて思っていたが全然進んでいない。手術後は痛くて何も手をつけられないだろうからなぁ。そんなことをボケボケ考えていると時間が経つのはあっという間である。
で、毎日積極的に活動できるかというとそうでもない。なんてったって手術が必要といわれている身体なのである。腹は痛いし熱も出る。だるいから横になろう、なんてこともしばしばである。
それで本当に腹が痛くなってきて、泣く泣くパン食をあきらめる。全粥から5分粥に戻すことにする。

朝 ロールパン、たまご豆腐、キャベツ浸し、あちゃら漬、味噌汁、オレンジジュース
昼 5分粥、皮むき平目煮魚、人参たんざく煮、ハイハイン、ヨーグルト
夕 5分粥、豆腐煮、里芋含め煮、洋梨缶、オレンジジュース

それでも腹痛が怖くて食事はほとんど食べられず。でも腹は減るのでお願いして今日からラコールも出してもらう。売店でストローを買ってきて直接アルミパウチにさしてチュウチュウ吸う。が、下痢が怖いのでちょっとずつ。

2003年11月21日 八日目

朝早くから夜遅くまで、「ガラガラガラガラ」と音がする。みんな手術後は歩け歩けといわれ、痛かろうが苦しかろうが歩かされるのである。術後って絶対安静でピクリとも動かないほうがいいと思うのだが、腸管の癒着防止のためには歩いたほうがいいんだって。そんなもんなのかねぇ。
で、朝から「ガラガラガラガラ」と点滴台を押しながら歩いているのである。まじめな患者さんなのかいつまでもいつまでも歩いている。ナースステーションを中心に円周状に通路があり病室が並んでいるわけだが、その通路をぐるぐるぐるぐるしている。「ガラガラガラガラ」近づいてきては遠のいていく。はっきりいってうっとしいのである。しょうがないけどね。
幸い点滴も鼻注もしていない私は自由に動ける。ナースステーションの周りをぐるぐるしてもいいのだが、点滴台を押していないとなんだか格好がつかない。で、階段を上り下りすることにしている。私の病室は9階なのだが売店が6階にある。ちょうどいいやと思ったが、ここの病院、1階分の落差が大きい。2階分はあるんじゃないのだろうか。つまり倍の階数を昇っているということである。結構いい運動になるのだ。
ベッドで横になっているのは楽なのだが、起きていないとますます病人になってしまう。

朝 5分粥、マロニー煮、ブロッコリースープ煮、味噌汁(実なし)、アップルジュース
昼 5分粥、皮むきキンメ煮魚、玉葱柔らか煮、プルーンゼリー、ヨーグルト
夕 5分粥、豆腐煮、甘藷しょう油煮、りんご缶

だいぶ調子がよくなってほぼ完食できるようになる。プチ緩解か。ラコールも3パック分を飲む。
となりのおじいさん、うんこもらしたらしくニオイが部屋に充満。うぅ、たまらん。

2003年11月22日 九日目

なぜか朝起きられず、食事が運ばれてきてもボーッとしてしまう。午前中は調子が悪くほとんど横になる。
手術日が来週の水曜日に決定。いよいよである。前日には手術についての説明もあるみたいで家族も呼ばなくてはならない。なんかちょっとかっこいいと思ってしまうのは私だけであろうか。
「手術」と聞くとみんな大層な反応を示す。「えっ〜!!」と大抵は驚かられる。私もウブな患者時代だったらそうかもしれない。
「しゅ、しゅ、手術〜!」な〜んてね。
しかし今となっては「やっと私も手術か」といった気分である。14年、よく持ったほうである。もちろん手術なんかしないほうがいい。ずっとしない人もいるし、手術したからといってクローン病とこれでおさらばというわけにもいかない。
しかし、今までの腹痛から逃れられると思うとワクワクしてしまうのである。周りにはオペ済みの人がたくさんいるし、体験談もたくさん聞いた。手術直後の痛みは怖いのであるが・・・。

朝 5分粥、白玉麩煮、大根柔か煮、味噌汁(実なし)、オレンジジュース
昼 煮込みうどん、ハンペンバター焼き、ヨーグルト
夕 5分粥、とくさ煮、杏仁豆腐、白桃缶、オレンジジュース

栄養部の取り計らいで、うどんが好きという私のために昼食だけ「腸炎2全粥」というものにしていただく。でもうどんおいしくない・・・。しかもハンペンのバター焼きってなんやねんっ! 食えるわけねぇっつーの、といいつつ食べちゃったりして。ラコールは2パック飲む。

2003年11月23日 十日目

テレビの話であるが、「バク天」という番組で視聴者より寄せられたテストの珍回答を紹介していた。
「うってかわって」という文節を使って文章を作りなさい。
という国語の問題。模範解答は「昨日とはうってかわって良い天気」となるのだが、この回答はすごい。
「兄は薬をうってかわってしまった」
思わず笑ってしまった。自宅ならば声をあげて笑っているところだが、ここは病院。4人の大部屋である。「くくっ、うぅっ、うっ」。音を立てないように笑いをこらえる。おそらく相当お腹が痛いんだろうなと思われたであろう。
つづいて大食いの謎にせまるという番組をみる。大食いの人が3人出てきたのだが、みな痩せているのによく食べられるもんだと感心してしまう。それで胃レントゲンなどの検査で科学的に検証していたのだが、まず胃がものすごく膨張するためたくさん食べられるそうだ。それから胃からすぐに小腸の方に食べ物が流れていってしまう。その為、消化も悪く吸収も悪いため太らないそうだ。案の状、1時間後にはトイレで全部出してしまったり、たしか1日に60回もトイレに行くため、トイレットペーパーのロールが1日2個必要だといっていた。
なんかIBDみたいじゃない?
番組によると、通常、食べたものの胃の滞留時間は4〜5時間だという。前から疑問に思っていたのだが、調子の悪い時って、この大食いの人たちのように食べたものがすぐに出てきてしまう。ということは、同じように胃からすぐに小腸の方に食べ物が流れていってしまっているんじゃないの!? どうよ! なんか病気の解明にすこ〜し役立たない?

朝 5分粥、うどん煮、ほうれん草柔か煮、味噌汁(実なし)、アップルジュース
昼 5分粥、皮むき鯛煮魚、バナナ寄せ物、タマゴボーロ、ヨーグルト
夕 5分粥、豆腐、南瓜ウスクズ煮、洋梨缶、ヨーグルトドリンク

前にも食べたじゃん、という献立パターンになってきた。楽しみ半減である。まぁまともに食事を摂れるのも月曜日までだけどね。
ラコールのフレーバーでレモンスカッシュ味を試す。ミルク味にどうかと思われたが、そう不味くもない。しかしそう美味しくもない。

2003年11月24日 十一日目

なんか昼夜を問わず眠い。もちろん夜は寝ているわけだが、朝ご飯を食べてからも眠くて寝てしまう。入院生活でそろそろおかしくなってきたか。
さて、同室の一人には看護学生らしき女の子がよく来る。ナースのお手伝いというよりはほとんどおしゃべり相手といった感じである。なんでオレのところにはいないのか。不思議に思って隣の部屋のSさんに聞いてみる。
「実習の時期があるのよ。私にもついているけど、血圧測る時なんか震えちゃってねー。かわいいのよー」
どうやら、もうちょっと早く入院していれば私にも学生さんがついた可能性があったらしい。う〜ん、残念だ。
看護学生で思い出したのだが、14年前の発病時。当時千葉に住んでいた私は慈恵医大附属柏病院に入院していた。大部屋で向かいのおじさんが糖尿病みたいだったのだが、このおじさんについていた看護学生が、なんと高校の同級生だったのである。いや、この時はびっくりしたね〜。ドラマみたいだけどホントの話。それが結構かわいい子でね。これはもしやと思ったが、なんにもありませんでした・・・。そこはドラマと違って現実である。
でも実際、その時ってうんこするたびに看護婦さん呼んでうんこを診てもらったり(確か便潜血の検査だったと思う)、浣腸されたりしてさー。同級生だったらどうしましょ!ってな感じだよね。

朝 5分粥、マカロニ煮、キャベツ柔か煮、味噌汁(実なし)、オレンジジュース
昼 5分粥、皮むきキンメ煮魚、人参たんざく煮、ハイハイン、ヨーグルト
夕 5分粥、豆腐煮、ポテト柔らか煮、りんご缶、オレンジジュース

なんとなくラコールは飲まない。腹も相変わらずちくちく痛む。

2003年11月24日 十二日目

急に慌ただしくなる。朝食を食べたまではよかったが、午前中に主治医の一人が来て、もう絶食で下剤を飲んでもらうからというではないか。ヒェーである。てっきり今日一日、最後の食事を味わおうと思っていたのに。これは予想外である。「狭窄もあるし早めに絶食したほうがいいでしょ」。おっしゃる通りだが前もって言ってほしかった。
で、昼から点滴がつながれる。うぅー、ついにオレも点滴につながることになったか。トイレに行くにもどこに行くにも点滴台と一緒である。
午後3時からは下剤を服用しなければならない。先生はマグコロールを用意するつもりだったらしいが、ニフレックに変更してくれとお願いする。「えっ、ニフレックの方がいいの?」とびっくりされる。そりゃそうだろうな。マグコロールに比べてまずいし量はあるし。でもマグコロールは独特の腹痛がおきてイヤなんです。それで泣く泣くニフレックなのだが、やっぱり飲めん。気持ち悪くなってきてしまう。しかし飲まなきゃイカン。看護婦になんとかお願いして鼻注用のカテーテルとシリンジ(注射器)を借りる。それでエッサエッサと胃に流し込むのだ。しかしこのシリンジが25ml。2リットルを流し込むにはえ〜っと・・・、とにかく大変である。100mlのシリンジはないというので50mlを持ってきてもらう。それでも大変。軽く1時間はやっていたろうか。シリンジで吸ってはカテーテルに「ちゅ〜」と流す。もういいかげん疲れました。
そうこうしていると、麻酔医が来る。手術時の麻酔についての説明だ。あれこれと麻酔のやり方や薬のアレルギーなどについて問診される。また明日は別の担当の麻酔医が来るという。ご苦労様です。

朝 5分粥、スパゲッティケチャップ和え、カリフラワー柔か煮、味噌汁(実なし)、アップルジュース

食事のない入院生活はつまらん! でも点滴が始まったせいか看護婦さんがこまめに見に来てくれる。ちとうれしい。

2003年11月25日 十三日目

点滴のせいか、トイレが近くて夜中に何度も目が覚める。寝不足気味だが、朝から採血で起こされる。
それから手術室で担当という看護師が挨拶に。手術室で麻酔がかけられるまでのちょっとの間だが、好きな音楽が聞けるという。有線があるそうで、チャンネル表を見せていただく。その中に「般若心教」というのがあったのでシャレでリクエストしようかと思ったがさすがにやめる。無難にJPOPをお願いする。
続いてヘソの掃除。油をヘソにつけられて待つこと5分。ナースが綿棒でコキコキ掃除してくれる。ちょいと恥ずかし。
そのまま入浴。安全カミソリを渡されて乳首から恥骨のあたりまでの毛を剃れという。普段、私は顔のヒゲを剃るのも電気カミソリ。「安全」とはいえ、刃のついたカミソリはなんか怖い。ビクビクしながら肌に当てると思ったよりスースーと毛が剃れる。しかし胸やヘソのあたりに比べるとあそこの毛は量が多くて大変。とても玉の方までは手が回らず、棒の上の方を剃っただけで終了する。なんか落ち武者みたいになってしまいかわいそうになる。
午後は大腸内視鏡の検査。痛がりの私はこれが非常に不安でしかたなかったが、今回はスムーズにS字結腸をこえて狭窄手前の下行結腸まで到達する。以前に比べて良くなったのか?
夕方よりこの結果を参考に明日の手術についての説明。まずは小腸末端の方の癒着・狭窄している部分を切除。後は開腹して診た状態で判断とのこと。以下のいずれかになるだろうとのことであった。
1 大腸の下行結腸途中までの切除
2 大腸のS字結腸あたりまで切除
3 大腸の直腸途中までの切除
要は直腸〜S字結腸〜下行結腸のどこまでを残しておけるのかである。ちなみにその先の横行結腸〜上行結腸〜盲腸は狭窄や潰瘍のため切除決定である。
できるならば、なるべく残しておきたいところ。3になるとほとんど大腸全摘。どうなるかはお楽しみである。
手術や輸血(もし必要になった場合)の同意書を書いていると、これももし必要となった場合ということでストマ(人工肛門)の位置決めをするという。腹にいろいろと線を書かれて左右に1ヶ所ずつマル(ストマ造設の位置)をマジックで書かれる。

睡眠剤を出してくれるそうだが、トイレが近くなりそうなのでもらわない。緊張しているつもりはないので眠れるだろう。
さぁ、泣いても笑っても明日である。

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