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【詩】模造宝石とスーツの女

勤め人が行き交う
駅前の交差点に
古いおもちゃ屋がある
 
エメラルド
真珠
ダイアモンド
うっすら埃を被った
ジュエリーセットが
日差しを浴びて
光を散らしている
 
勤め人たちは
おもちゃ屋に目もくれず
白昼を行き交う
 
スーツの女が
虚ろな目で
携帯電話を耳に当て
何度も頭を下げていた
 
真昼の太陽の粒が
ダイアモンドで跳ねて
女のすり減った靴のつま先に
虹を懸けた
 
女の口元が綻び
 
青信号の交差点に目もくれず
子供のような眼で
きらきら輝く宝石に
じっと見入っていた

最後まで読んでくださって、ありがとうございます。