見出し画像

【詩】年老いた柴犬の散歩

深々と謝るように頭を下げて
年老いた柴犬が
よたよたと歩いていく

鼻先が
アスファルトに擦れるギリギリを
平行に移動していく

年老いた飼い主は
老犬を顧みず
紐を前に引いて歩いていく

交差点で
それを見て
哀れむか、微笑むか

脚のみじかい猟犬どもが
地べたを嗅ぎまわる
便利さがよく分かると言いたげな

鼻先が
自分の気になる点から点へ
最短距離で移動していく

小雨が降り止んだ夜の隙間に
懐中電灯を二つ紐でぶらさげて
大きな蝙蝠傘を手に持って

年老いた飼い主は
雨が降り出す前にと
紐を前に引いて歩いていく

道の向こうに
それを見て
哀れむか、微笑むか

まんざらでもなく頭を下げて
年老いた柴犬が
よたよたと歩いていく

最後まで読んでくださって、ありがとうございます。