200127_地方創生

地方創生って誰のため?何のため?

先日興味深いネット記事に出会ったので、今日はそこで取り上げられている「地方創生」について書きたいと思います。

地方創生で潤ったのは東京のコンサルという皮肉-幻想の地方創生 東京一極集中は止まらない(Wedge REPORT 2020/01/24)

地方創生で潤ったのは地方ではなかった

冒頭で紹介した記事を要約すると、「2014年に国は地方創生の実現に向けて、地方自治体に人口ビジョン総合戦略の策定を要請したが、これによって一番潤ったのは両計画の策定業務委託を受注した東京のコンサルタント企業だった」という話です。

地方を活性化させるはずの政策なのに実は東京の企業に一番お金が落ちていたというわけです。かく言う私も入社間もないころに地方版総合戦略の策定業務委託を担当していました。しかも4本も。なので、この記事で指摘されていることは直感的にも納得できます。

では、なぜこうなったのでしょうか。記事にもあるように「計画の策定期間が短く、外部の手を借りざるを得なかった」というのが真相のようです。地方創生に関する法律(まち・ひと・しごと創生法)の制定が2014年11月で、策定完了時期(努力義務)が2016年3月というタイトなスケジュールであり、私も相当苦労したことを覚えています。私が担当していた業務の発注者も「5年も10年も先のことを1年で考えるのは厳しい」とおっしゃっていました。加えて、「補助金の交付を受けるには2015年10月までに計画を策定すること」とされていたため、補助金獲得のために実質半年しか検討時間が無いという自治体も多くあったと思われます。

地方創生は進んだのか

私感ですが、この5年間で地方創生は大して進んでいないというのが率直な印象です。個々の事例を見ればいくつかの興味深い取組み(オガール紫波はその代表例ですね)を見ることができますが、それらも数少ない特殊な事例だと思います。

このように私は地方創生に対して少しネガティブな評価をしていますが、地方創生の羅針盤である地方版総合戦略の多くが東京のコンサルの手によって作られているということは、その評価の一部が私自身にも返ってくるということです。私自身、コンサルタントとして地方創生の本質を理解し、そこに向かって発注者を的確にリードできたかと問われれば、微妙なところです。ベストエフォートは尽くしましたが。今となっては当時から役回りが変わって地方創生に関する業務には関わっていませんが、当時の経験を活かしつつ今求められている役目を全うしたいところです。

総合戦略は5年ごとに計画の見直しを行うことになっています。多くの自治体の総合戦略が2015年にスタートしていますので、それらが今年見直しの時期を迎えています。計画の見直し業務をコンサルに発注する自治体もきっと少なくないでしょう。地方創生に一度は足を踏み入れた人間として、今後の動向を注視していきたいと思います。

参考:地方創生に関する政策

地方創生とは、地方の活性化によって人口減少に歯止めをかけるための政策や取組みを言います。政府は2014年に「まち・ひと・しごと創生法」を制定し、2070年代には約8700万人になると推計される人口減少に歯止めをかけ、人口1億人程度を確保するという人口ビジョンを掲げました。そして、それを実現するための総合戦略を策定すると同時に、全ての自治体にも、国の戦略に沿った形で人口ビジョンと地方版総合戦略を策定するよう要請しました。法律名からもわかるように、地方創生は「まち」「ひと」「しごと」の三本柱から成り立っています。

・まちの創生:地域経済の活性化
・ひとの創生:人口の増加
・しごとの創生:雇用の増加

これらの目標の達成に向けて、各自治体がそれぞれの特色を生かした独自の取組みを束ねたものが地方版総合戦略です。詳しい情報は国のホームページにも掲載されていますので、最新の動向をチェックされたい方はこちらをご参照ください。

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