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konekoのみるふぃーゆどりーむ

<これは見えないモノを見せてくれる
不思議な箱>

そう言って渡されたのは
手のひらサイズの白い箱

ヒノキの香りがする
その箱に

だがしかし、私は
何故か恐怖していた

「大丈夫。
いらないわ、そんなもの。」

そう言って返そうと
したけれど、

その白い箱は独りでに
開いて

私を知らない世界へと
誘う

目が覚めた

手のひらサイズだった 
白い箱

その白い箱の大きさに
私は小さくなっていて

目に見えない力で
その箱の中に

足を運ばされる

目の前には盆栽が
広がっていた

[近くの人たちに頼めば
良いのに]

見知らぬ年寄りに
そう声をかけられた女性は

“いやいや、折角ですから
自分で作りますよ”

なんて笑っている

橙色の生地に黒い花柄が
小さく散りばめられた

地味さの中にも品の
感じられる和服姿だ

黒い髪の毛を後ろに丸く結い
黄色い簪を一本
まっすぐ横に差している

その様を
とある男性が猫を
撫でながら見つめていた

薄い緑色の生地に
蒼い縦模様の入った軽そうな和服姿で
割膝をしていた

目が覚めた

その盆栽の前に
先程撫でられていた
猫がいた

少し黄色がかった長めの
毛が夜風にゆらゆらと
揺れていて

あの男性も
笑っていた女性も
床の間で静かに
眠っていた

猫は月に照らされて
みるみる
人の形へと変わって行く

四足歩行だった小さな
体は二足歩行の人型へと変わり

夜風に揺れていた黄色い毛は
美しい金髪へと変化した

細長くスラリとした手足と
細いくびれを腰辺りに持つ
その美しい肉体を伸ばしていた

目が覚めた

猫が増えていた

畳の部屋のあちこちに
仔猫が散らばり
鳴いていた

かつて盆栽を育てて
笑っていた女性は
何故か泣いていた

“どうしてこんなことに”

そう言って泣いていた

猫を撫でていた
男性も何処か申し訳なさそうな
顔をしていた

目が覚めた

(すみません。。
ずっとお慕い申していたのです。)

(つい、歯止めが効かずに。。)

黄色い毛並みが更に伸びていた
猫は私にだけ聞こえる声で

詫びの言葉を何度も
和室の端で繰り返していた

何となく状況を察して
彼らの様子を見守っていた私

そこには
憂いと憎しみの入り混じった
女性の表情があり

もう一つは
恋慕と後悔でいっぱいの
猫の表情があった

それらの表情が
私の胸の前で紺色と黄色の
浮遊体になり

えっ?!

と戸惑っている内に
私の体内に入ってきた

目が覚めた

はっ?!

と困惑している私

着物姿で白髪になり
少し背中も丸まっている

そんな私の眼前を

茶色い猫が
素知らぬ顔して過ぎていく

特に理由もなく
苛立っている自分に驚いて

私は畳の居間から庭先に
勢いよく飛び出す

下駄をひょひょいと履いて
両手を膝にのせながら

何故だか急に
あーーーーっ!!と
大声で叫んだ

肺いっぱいに溜め込んだ
空気を

吸っては吐き
 吸っては吐き
  吸っては吐き

その度に強まる向かい風で
結っていた白髪も解かれ

叫び声を出し切る頃には
背中がしゃんと伸びていた

向かい風はいつの間にか
優しく柔らかな風になり

スッキリした表情の私が
立っていた

目が覚めた

「呼んた?」

足元から小さな声が
聞こえた

へっ?!

と驚きながら下を見つめると
赤い長靴と帽子を被り
白いペチコートワンピースを
ふわふわと靡かす小人サイズの
小さい女の子が立っていた

両手をあげて自分を抱き抱えるように
せっつくので、私はしゃがんで
大きく広げた両手で包み込むようにして
彼女を持ち上げた

とても柔らかくて、力を少しでも
入れたら潰れてしまいそうだったので
慎重に持ち上げた

恐らく神経を使いすぎていたのだろう
眉間に皺を寄せている感覚があった

その私の様子をニコニコと
満足そうに彼女は笑いながらみつめ
その小さな指で私の額をツンと
当てた

❨貴方は相談所を作りなさいな
そうね、値段は500文位かしら❩

何て暖かな指なのだろうかと
関心しながらも

相談所ですか?と頭の中では
疑問符が浮かんでいて、、

目が覚めた

私は小さな机の前に座っていた

少し柔らかめの座布団の上に
正座をして

あまり物も置かれていない
質素な部屋の中で

黒髪を右側に丸く整えて
紺色と黄色の小さな花の付いた
簪をこめかみから首筋に向かって
真っ直ぐに差していた

部屋の出入り口に
そっと掛けられた暖簾には

相談承ります
一回500文

と筆圧の効いた太文字で
簡潔に書かれていた

‘結局言われた通りに
相談所を開いたのね。’

‘それにしても
こんな相談所に一体
誰が来るのかしら’

そんな事を心の中で
呟いていた時

一匹の猫が
どこからともなく現れ

ヒョイと
机に乗ってきた

白くてふわふわの毛並みを持ち
足先は少し黄色がかった茶色だ

‘綺麗な猫だわ’

なんて見惚れていたら

前足を机の上にのせたまま
顔を俯かせ

その猫はみるみる内に
人の姿へと
女性の姿へと変わっていった

驚いている私に向かって彼女は

【すみませんでした。。】

と何度も謝ってきた

意味も分からず

“ひとまず、お顔をあげて下さいな!”

と腕を広げて彼女の肩に両手を
添えた私は、彼女の瞳と初めて
目を合わせる

黄色い左目と青い紺色の右目を
持つその女性に

私の差していた簪が反応する

そう。彼女は
あの盆栽の前にいた猫であった

幾世かの生を繰り返し
私は再び彼女と巡り合ったのだ

全てを悟った私は
泣きながら

“もう良いのよ。”
“もう良いのよ。”

と泣いていた

彼女も泣いていた

開いたばかりの相談所は
二人の鳴き声でいっぱいになっていた

目が覚めた

彼女は可愛らしいメイド服を来て
私に紅茶を入れてくれていた

そんな穏やかな時間の流れる
相談所にヘンテコなおじさんが
ドカドカと入ってきた

『あぁ!儂は絵が描けんのじゃ!』

その第一声に目を丸くしながら
私は彼が片腕に抱えている
スケッチブックに目をやっていた

“ほんなら、お兄さん!
それは何ですの?”

そう問いかける私に

『これは駄作じゃ!!』

と相変わらず叫びながら
机にデッサンを散りばめた

何処かでみたような絵柄だ

そう、アカギだ。

あの麻雀で連戦連勝を
繰り広げる漫画の画風に
とても良く似ている

角ばった顔に
やたらと大きな目と口

その特徴にあえて
何かを足すなら、、

思考を巡らして私は
彼にこう言った

“お兄さん。何でしたら
その主人公、もう少し
顎を尖らしはったら、どない?”

“そんで、髪の毛をいっそ白う染めて。
そうね、会話口調は
もう少し穏やかに。”

『わ、分かったわ!!』

目をキラキラと輝かせて
ヘンテコなおじさんは
会計を済ませて相談所を
後にした

後日、窓からヒラヒラと舞い込む
紅葉を人差し指と親指で
くるくる回しながら

私はメイド服の彼女から
あのヘンテコなおじさんが
有名な画家になったことを
伝え聞いていた

“ふふふ。
良かったわね。”

そう言いつつ、紅茶を飲み
くるくる回している紅葉を
見つめていた

くるくる
クルクル
くる くる

1番最初の声が聞こえた

<これが貴方の魂の記憶>
<記憶の旅はどうだったかしら?>

私は気になっていた点を
1つだけ尋ねてみた

「あの男性はどうなったの?」
「割膝をしていたあの男性は?」

<貴方の隣に8割の状態でいるわ>
<もう2割は別の所へ>
<でも、もう貴方は合っている>

<乙女座の。。。よ>

後半は聞こえなかった

目が覚めた、リアルだ

風邪で寝込んで
マスクをしていた彼は
息苦しかったのかマスクを外して

私の寝顔を覗き込んでいた

うなされていたらしい私を
心配していたみたいだ

私の右手を握って

大丈夫?
大好きだよ!

そう言ってくれる

ありがとう。
私も大好き。

そう答えて左手を
彼の両手に重ねた

その手はとっても
暖かくて私は少し
目を潤ませていた

日常と非日常を放浪し、その節々で見つけた一場面や思いをお伝えします♪♪ そんな旅するkonekoを支えて貰えたなら幸せです🌈🐈 闇深ければ、光もまた強し!がモットーです〇